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日常の章

子供心に現実とお話の区別は

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とは言え、一回で完全に覚えきれるようなものじゃないだろうし、俺自身、こうやってリーネやトーイと一緒に絵本を読んでいることが何とも心地好かった。だから仕事を始める前と、寝る前の二回、読み聞かせてやった。その上で、二人も、家のことをする合間に、<写本>を始めた。

ペンは羽ペン。インクは煤を油で溶いただけの物。紙はざらざらのゴワゴワで、前世じゃゴミみたいなものだがこっちではそういうのしか手に入らないというあれだったものの、二人は文句も言わずに書いてた。

また、<頭巾ちゃんとキ〇ガイ伯爵>の内容については、二人は特に何も言わなかった。気にしてないのか、『買ってもらった』ことに遠慮して言わないのかかは分からないが、明らかに態度に出るほどじゃないから、そんなに強く気にしてるわけではないと思う。

『そんなに強く気にしないでいられる』

というのがもう感覚の違いなんだろうな。まあでも、実は前世でもそんなに子供は気にしないのかもしれないが。大人が気にし過ぎてるだけの可能性はあるな。なにしろただの、

<お話>

だ。そこにあるのは現実じゃない。子供心に現実とお話の区別はついているのかもしない。それをわきまえた上で大人が改めてフォローしていけばいいものをそれをせずにただ、

『子供の目に触れさせない』

ことばかりに執着してるだけのような気もするな。

だから余計に、<大人が隠してるもの>に対して興味が湧いてしまうのかも。

いわゆる<陰謀論>にハマる奴も、これなんだろうか。

『隠されているものを自分は探し当てた!』

ってことについて妙に価値を見出してしまって執着してしまうとか? 捨てられてたただのゴミでしかないはずの<エロ本>を<お宝>とか呼んでしまうのも、隠されたものに思いがけない形で巡り会ったという高揚感のなせる業か?

そう考えると、<陰謀論にハマる奴>って、<川原とかに捨てられてたエロ本を見付けて興奮してる小学生男子>と同じか?

まあそれがどうであれ、俺は変に隠し事はしないようにしようと思う。俺が子供の頃、両親が俺の寝てる横で盛ってたのを知ってるからか、思春期頃になっても別に気にしてなかったしな。俺の場合は前世の記憶があるのも影響してるとしても、周りの奴らも、むしろ前世での同じ年頃の連中よりも冷めてた気がする。

『いずれは自分も同じようなことをすることになるんだろうな』

程度にしか捉えてなかったような気がするんだよ。

当たり前にそこにあるとありがたみが失せるのかもしれない。

結婚して見慣れてしまうと女房の体に興味が失せるのと同じで。

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