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暮らしの章

代書屋

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その<屋台>に、俺は見覚えがあった。以前暮らしてた村でも見かけたものだ。

「やっぱり…!」

思った通りに代書屋だった。代書屋は、屋台を引っ張って表れて、その屋台で代書作業(まあほとんどは代筆だが)を請け負うんだ。しかもその代書屋は、

「エリク!」

俺の見知った代書屋だった。髭面のオッサンで、確か俺よりは五つ年上だったはず。屋台そのものが見覚えあるものだったからまさかと思ったが。

「トニー! お前か!? まさか生きてたのか!?」

俺がエリクと呼んだその代書屋は、俺以上に驚いていた。

「ああ、この通りピンピンしてるぜ!」

と返す俺に、

「悪いな、今は見ての通り仕事中なんだ。お前も仕事なんだろ? 俺は今日はここに泊っていくからな。後で顔を出してくれよ」

とのことだったから、

「ああ、そうさせてもらう」

俺も注文の品を届けに向かうことにして、そちらを先に済ませた。

そうして仕事を終えてエリクの屋台が置かれていた広場に戻ると、屋台の前でキセルを燻らせてる姿が。

「よう! 仕事は終わったか?」

俺の姿に気付いたエリクはキセルを逆さまにしてポンと手に叩きつけて灰を捨て、片付け始めた。前世じゃタバコの灰を落とすのも眉を顰められる行為だったが、この世界じゃまだそういうのは関係ないからな。

「ああ、おかげさまでな。しかしまた会えるとは思ってなかったよ」

懐かしい顔を見られて自分でも分かるくらいテンションが上がってる俺に、エリクも、

「俺の方こそ、最初は幽霊かと思ったぜ! お前の村の連中、どこにもいねえからよ」

と返してくる。それに対して俺は、

「そりゃそうだろうな。たぶん、ほとんど全員死んでる」

と応えた。するとエリクも、

「やっぱりか……隣村で、この村がどうやら大変なことになってるらしいと聞いてしばらく来るのを避けてたんだがそれと関係ある感じか?」

察したように聞いてくる。だから俺は、俺が知る限りのことを話した。

「戦闘を避けようとして俺達の村は全員で避難してな。村の奴の親族がいるってんでここに逃げ込んだんだが、そこでまた内紛があったみたいで、殺し合いになって、ほとんど全員死んだようだ。俺もその騒動の後で様子を見に来たんだが、そん時に、俺の親父が死んでたのも見たよ」

「そっか……そりゃ残念だったな……」

「まあな……でも俺は元の村から逃げる途中ではぐれて、それで山ん中に空き家を見付けてそっちに住み着いたおかげで難を逃れたわけだ」

「悪運の強い奴だ」

「確かに。で、元の村が滅んで、そこに今の村の連中が入ってきて居ついたってことだな」

「なるほどな」

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