210 / 398
暮らしの章
ははは! 楽しいな!
しおりを挟む
焼けて崩れた鍛冶工房らしき家の跡から出てきたという<金床>は、少なく見積もっても五十キロはありそうなそれだったことで家に運び込み備え付けるのも一苦労だったが、これで作業もさらに捗るってもんだ。
「すごいですね、これ」
「……」
リーネとトーイも、興味深そうに金床を見ていた。
「おう。元々は鍛冶屋で使うもんなんだが、うちにあったのは見ての通り岩を削り出して作ったもんだ。正直、あんまり使い勝手はよくなかった。でも今度のは正真正銘、鍛冶屋で使うものだからな。仕事もしやすくなるってもんだぜ」
機嫌よく話す俺に、二人もなんだか嬉しそうだ。
こうして早速、俺は、金床の使い勝手を確かめてみた。しばらくずっと岩の金床で作業してたから最初はちょっと違和感もあったものの、うん、やっぱこっちのがいいな。やりやすい……!
岩のヤツは、モロに槌が当たったら欠けるから、気ぃ遣うんだよ。思いっ切り叩けねえ。でも、鉄の金床は、容赦なくブッ叩ける。びくともしねえ。鍛冶屋以外の奴にはただの重しにしかならねえだろうが、鍛冶屋にとっちゃ命の一部みたいなもんだ。
だから俺も嬉しくなっちまって、そのままナイフを一本、打ち上げちまった。
「ははは! 楽しいな!」
ついそう声が漏れる。
「はい!」
「うん…!」
楽しそうな俺を見て、リーネとトーイも笑顔になってて。
こうしてマジな金床を手に入れた俺は、遂にこれまで内に秘めていた計画を実行に移す決心をした。
『湯沸かし器を作るぞ!』
と言っても、湯沸かし器の詳しい原理を知らない俺にはちゃんとしたものは作れないから、今使ってる<でかい鍋>から浴槽に安全に湯を注げるようにする改造を施すと言った方がいいな。
構造は至極単純だ。鍋に足とハンドルを付けて、ハンドルを持ち上げれば鍋が浴槽の方に傾いて湯が流れ込むってだけのもんだけどな。
イメージ的には、<ネコ車>にセメントとかを入れて運んで流し込む時にハンドルを持ち上げるだろう? あれだ。それなら鍋そのものを掴んで持ち上げる必要もないし、ハンドルの分だけ離れてるから湯を被る心配も減る。そうするとトーイにもやってもらえるようになるはずだ。
そんなわけで早速作り始めるが、さすがにすぐには上手くいかない。しかも、注文の品を作りながらだからな。そっちを優先しなきゃならんし。
でも、ちゃんとした金床が手に入ったおかげで作業が捗る。ここまで二日掛かってた品物が一日でできるようになったのは、大きかったよ。
「すごいですね、これ」
「……」
リーネとトーイも、興味深そうに金床を見ていた。
「おう。元々は鍛冶屋で使うもんなんだが、うちにあったのは見ての通り岩を削り出して作ったもんだ。正直、あんまり使い勝手はよくなかった。でも今度のは正真正銘、鍛冶屋で使うものだからな。仕事もしやすくなるってもんだぜ」
機嫌よく話す俺に、二人もなんだか嬉しそうだ。
こうして早速、俺は、金床の使い勝手を確かめてみた。しばらくずっと岩の金床で作業してたから最初はちょっと違和感もあったものの、うん、やっぱこっちのがいいな。やりやすい……!
岩のヤツは、モロに槌が当たったら欠けるから、気ぃ遣うんだよ。思いっ切り叩けねえ。でも、鉄の金床は、容赦なくブッ叩ける。びくともしねえ。鍛冶屋以外の奴にはただの重しにしかならねえだろうが、鍛冶屋にとっちゃ命の一部みたいなもんだ。
だから俺も嬉しくなっちまって、そのままナイフを一本、打ち上げちまった。
「ははは! 楽しいな!」
ついそう声が漏れる。
「はい!」
「うん…!」
楽しそうな俺を見て、リーネとトーイも笑顔になってて。
こうしてマジな金床を手に入れた俺は、遂にこれまで内に秘めていた計画を実行に移す決心をした。
『湯沸かし器を作るぞ!』
と言っても、湯沸かし器の詳しい原理を知らない俺にはちゃんとしたものは作れないから、今使ってる<でかい鍋>から浴槽に安全に湯を注げるようにする改造を施すと言った方がいいな。
構造は至極単純だ。鍋に足とハンドルを付けて、ハンドルを持ち上げれば鍋が浴槽の方に傾いて湯が流れ込むってだけのもんだけどな。
イメージ的には、<ネコ車>にセメントとかを入れて運んで流し込む時にハンドルを持ち上げるだろう? あれだ。それなら鍋そのものを掴んで持ち上げる必要もないし、ハンドルの分だけ離れてるから湯を被る心配も減る。そうするとトーイにもやってもらえるようになるはずだ。
そんなわけで早速作り始めるが、さすがにすぐには上手くいかない。しかも、注文の品を作りながらだからな。そっちを優先しなきゃならんし。
でも、ちゃんとした金床が手に入ったおかげで作業が捗る。ここまで二日掛かってた品物が一日でできるようになったのは、大きかったよ。
0
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました
杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」
王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。
第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。
確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。
唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。
もう味方はいない。
誰への義理もない。
ならば、もうどうにでもなればいい。
アレクシアはスッと背筋を伸ばした。
そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺!
◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。
◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。
◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。
◆全8話、最終話だけ少し長めです。
恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。
◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。
◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03)
◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます!
9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~
イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」
どごおおおぉっ!!
5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略)
ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。
…だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。
それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。
泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ…
旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは?
更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!?
ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか?
困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語!
※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください…
※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください…
※小説家になろう様でも掲載しております
※イラストは湶リク様に描いていただきました
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
転生嫌われ令嬢の幸せカロリー飯
赤羽夕夜
恋愛
15の時に生前OLだった記憶がよみがえった嫌われ令嬢ミリアーナは、OLだったときの食生活、趣味嗜好が影響され、日々の人間関係のストレスを食や趣味で発散するようになる。
濃い味付けやこってりとしたものが好きなミリアーナは、令嬢にあるまじきこと、いけないことだと認識しながらも、人が寝静まる深夜に人目を盗むようになにかと夜食を作り始める。
そんななかミリアーナの父ヴェスター、父の専属執事であり幼い頃自分の世話役だったジョンに夜食を作っているところを見られてしまうことが始まりで、ミリアーナの変わった趣味、食生活が世間に露見して――?
※恋愛要素は中盤以降になります。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる