206 / 398
暮らしの章
幸せな家族の図
しおりを挟む
だから、リーネとトーイとの暮らしには特別なイベントなんざ必要じゃなかった。アミューズメントパークみたいなところに行って家族がみんな笑顔で何枚もの写真を撮るとか、そういうのは必須じゃねえんだよ。
だってそうだろ? ここにゃそんなもんはねえ。ファミレスも、百貨店も、映画館も、水族館も、動物園も、アミューズメントパークもねえんだ。そういうところに家族で出掛けて思い出づくりしなきゃ<幸せな家庭>って言えないんなら、そういうもんがなかった時代の連中は<幸せな家庭>は作れなかったのかよ?
まあ確かに、俺がいるこの辺りじゃ、前世の連中が思うような<幸せな家庭>ってのはねえだろう。子供は親の奴隷であり家畜であり、何人もころころ死んじゃ新しいのを作ってってのをしてる世界じゃ、
『あなたが来てくれてよかった』
みたいに涙を浮かべながら子供を抱き締める親ってえ感じの、
<幸せな家族の図>
ってのは期待するだけ無駄だ。けどな、それでもここの奴らだって笑うことはあるんだよ。笑顔だって見せるんだ。その一瞬は<幸せ>なんだろうさ。
だからこんな世界でも幸せを感じることはできないわけじゃないんだと思う。
もっとも俺は、元の村で暮らしてた時に幸せなんか感じたことはなかったけどよ。それはむしろ前世の記憶が蘇っちまった所為もあるんだろうなとは思う。どうしたって前世と比べちまうから。
そういう意味じゃ、俺は不幸だっただろうな。
でも今は、リーネとトーイとの三人で毎日平穏に暮らせているだけで幸せなんだよ。前世よりもずっと幸せだ。
『引きニートやってるから不幸』
なんじゃねえ。
『後悔しかない人生だから不幸』
なんだと思う。だってよ。今は<後悔>してねえし。両親を捨てたことも、俺と結婚してもいいと言ってくれた幼馴染の女を捨てたことも、生まれ育った村を捨てたことも、何一つ後悔してねえ。する必要がねえ。
今のこの生活を手に入れるためだったんだって思ったらな。
でもまあ、俺と結婚してもいいと言ってくれてた幼馴染の女については、ちょっとだけ申し訳ない気がしないでもない。どうせあの村で生まれ育った奴だから性根はロクなもんじゃねえのは分かってても、少ーしリーネに似てるところもあったんだよな……
あいつももう、他の避難した村の連中と一緒に無元の集落にいて、それで殺し合いに巻き込まれて死んだんだろうと思う。死体は見ちゃいないが、逃げ出せたのはほんの数人だったみたいだしな。
ちょっと、可哀想かな……って思ったりもしないわけじゃないんだ。
だってそうだろ? ここにゃそんなもんはねえ。ファミレスも、百貨店も、映画館も、水族館も、動物園も、アミューズメントパークもねえんだ。そういうところに家族で出掛けて思い出づくりしなきゃ<幸せな家庭>って言えないんなら、そういうもんがなかった時代の連中は<幸せな家庭>は作れなかったのかよ?
まあ確かに、俺がいるこの辺りじゃ、前世の連中が思うような<幸せな家庭>ってのはねえだろう。子供は親の奴隷であり家畜であり、何人もころころ死んじゃ新しいのを作ってってのをしてる世界じゃ、
『あなたが来てくれてよかった』
みたいに涙を浮かべながら子供を抱き締める親ってえ感じの、
<幸せな家族の図>
ってのは期待するだけ無駄だ。けどな、それでもここの奴らだって笑うことはあるんだよ。笑顔だって見せるんだ。その一瞬は<幸せ>なんだろうさ。
だからこんな世界でも幸せを感じることはできないわけじゃないんだと思う。
もっとも俺は、元の村で暮らしてた時に幸せなんか感じたことはなかったけどよ。それはむしろ前世の記憶が蘇っちまった所為もあるんだろうなとは思う。どうしたって前世と比べちまうから。
そういう意味じゃ、俺は不幸だっただろうな。
でも今は、リーネとトーイとの三人で毎日平穏に暮らせているだけで幸せなんだよ。前世よりもずっと幸せだ。
『引きニートやってるから不幸』
なんじゃねえ。
『後悔しかない人生だから不幸』
なんだと思う。だってよ。今は<後悔>してねえし。両親を捨てたことも、俺と結婚してもいいと言ってくれた幼馴染の女を捨てたことも、生まれ育った村を捨てたことも、何一つ後悔してねえ。する必要がねえ。
今のこの生活を手に入れるためだったんだって思ったらな。
でもまあ、俺と結婚してもいいと言ってくれてた幼馴染の女については、ちょっとだけ申し訳ない気がしないでもない。どうせあの村で生まれ育った奴だから性根はロクなもんじゃねえのは分かってても、少ーしリーネに似てるところもあったんだよな……
あいつももう、他の避難した村の連中と一緒に無元の集落にいて、それで殺し合いに巻き込まれて死んだんだろうと思う。死体は見ちゃいないが、逃げ出せたのはほんの数人だったみたいだしな。
ちょっと、可哀想かな……って思ったりもしないわけじゃないんだ。
0
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー
紫電のチュウニー
ファンタジー
第四部第一章 新大陸開始中。 開始中(初投稿作品)
転生前も、転生後も 俺は不幸だった。
生まれる前は弱視。
生まれ変わり後は盲目。
そんな人生をメルザは救ってくれた。
あいつのためならば 俺はどんなことでもしよう。
あいつの傍にずっといて、この生涯を捧げたい。
苦楽を共にする多くの仲間たち。自分たちだけの領域。
オリジナルの世界観で描く 感動ストーリーをお届けします。
異世界災派 ~1514億4000万円を失った自衛隊、海外に災害派遣す~
ス々月帶爲
ファンタジー
元号が令和となり一年。自衛隊に数々の災難が、襲い掛かっていた。
対戦闘機訓練の為、東北沖を飛行していた航空自衛隊のF-35A戦闘機が何の前触れもなく消失。そのF-35Aを捜索していた海上自衛隊護衛艦のありあけも、同じく捜索活動を行っていた、いずも型護衛艦2番艦かがの目の前で消えた。約一週間後、厄災は東北沖だけにとどまらなかった事を知らされた。陸上自衛隊の車両を積載しアメリカ合衆国に向かっていたC-2が津軽海峡上空で消失したのだ。
これまでの損失を計ると、1514億4000万円。過去に類をみない、恐ろしい損害を負った防衛省・自衛隊。
防衛省は、対策本部を設置し陸上自衛隊の東部方面隊、陸上総隊より選抜された部隊で混成団を編成。
損失を取り返すため、何より一緒に消えてしまった自衛官を見つけ出す為、混成団を災害派遣する決定を下したのだった。
派遣を任されたのは、陸上自衛隊のプロフェッショナル集団、陸上総隊の隷下に入る中央即応連隊。彼等は、国際平和協力活動等に尽力する為、先遣部隊等として主力部隊到着迄活動基盤を準備する事等を主任務とし、日々訓練に励んでいる。
其の第一中隊長を任されているのは、暗い過去を持つ新渡戸愛桜。彼女は、この派遣に於て、指揮官としての特殊な苦悩を味い、高みを目指す。
海上自衛隊版、出しました
→https://ncode.syosetu.com/n3744fn/
※作中で、F-35A ライトニングⅡが墜落したことを示唆する表現がございます。ですが、実際に墜落した時より前に書かれた表現ということをご理解いただければ幸いです。捜索が打ち切りとなったことにつきまして、本心から残念に思います。搭乗員の方、戦闘機にご冥福をお祈り申し上げます。
「小説家になろう」に於ても投稿させて頂いております。
→https://ncode.syosetu.com/n3570fj/
「カクヨム」に於ても投稿させて頂いております。
→https://kakuyomu.jp/works/1177354054889229369
世界最強の勇者は伯爵家の三男に転生し、落ちこぼれと疎まれるが、無自覚に無双する
平山和人
ファンタジー
世界最強の勇者と称えられる勇者アベルは、新たな人生を歩むべく今の人生を捨て、伯爵家の三男に転生する。
しかしアベルは忌み子と疎まれており、優秀な双子の兄たちと比べられ、学校や屋敷の人たちからは落ちこぼれと蔑まれる散々な日々を送っていた。
だが、彼らは知らなかったアベルが最強の勇者であり、自分たちとは遥かにレベルが違うから真の実力がわからないことに。
そんなことも知らずにアベルは自覚なく最強の力を振るい、世界中を驚かせるのであった。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
コグマと大虎 ~捨てられたおっさんと拾われた女子高生~
京衛武百十
現代文学
古隈明紀(こぐまあきのり)は、四十歳を迎えたある日、妻と娘に捨てられた。元々好きで結婚したわけでもなくただ体裁を繕うためのそれだったことにより妻や娘に対して愛情が抱けず、それに耐えられなくなった妻に三下り半を突き付けられたのだ。
財産分与。慰謝料なし。養育費は月五万円(半分は妻が負担)という条件の一切を呑んで離婚を承諾。独り身となった。ただし、実は会社役員をしていた妻の方が収入が多かったこともあり、実際はコグマに有利な条件だったのだが。妻としても、自分達を愛してもいない夫との暮らしが耐えられなかっただけで、彼に対しては特段の恨みもなかったのである。
こうして、形の上では家族に捨てられることになったコグマはその後、<パパ活>をしていた女子高生、大戸羅美(おおとらみ)を、家に泊めることになる。コグマ自身にはそのつもりはなかったのだが、待ち合わせていた相手にすっぽかされた羅美が強引に上がり込んだのだ。
それをきっかけに、捨てられたおっさんと拾われた(拾わせた)女子高生の奇妙な共同生活が始まったのだった。
筆者より。
中年男が女子高生を拾って罪に問われずに済むのはどういうシチュエーションかを考えるために書いてみます。
なお、あらかじめ明かしておきますが、最後にコグマと大虎はそれぞれ自分の人生を歩むことになります。
コグマは結婚に失敗して心底懲りてるので<そんな関係>にもなりません。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる