前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十

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暮らしの章

これで安心して仕事ができる

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翌日、今のところ野菜も十分にあるから村には行かず、俺は、

「これから暑くなってくるし、俺が仕事中にリーネとトーイがいられる部屋を作ろうと思う」

そう告げて、補修用の部材の中から適当なのを引っ張り出して部屋を作ることにした。

もっとも、俺はあくまで<鍛冶屋>であって<大工>じゃないから、それこそ掘っ立て小屋もいいところのものになるだろうけどな。それでも、リーネとトーイを家の外に放り出しておくよりはマシだ。

で、風呂の前のスペースに、丸太を三本、蔓で縛ってまとめて立て、それを四つ作り、さらにそこに梁を渡して蔓で縛り、固定。まとめた丸太の内の二本は壁を支える<筋交い>的な形で活かし、残りの一本は外から躯体を支える形にする。

補修用の部材をどけたら釘も大量に出てきたので、惜しみなく使う。

屋根の形は、確か<切妻屋根>とかいう、<屋根>と言ったらまず思い浮かべるであろう真ん中が高くなったヤツは作りにくいので、少しだけ片方を高くして雨が流れやすくした平らな屋根にした。

素人工作だから雨漏りとかもきっと酷いが、それはまあその時点で直していけばいいだろう。

風呂の前に作ったのは、風呂に入ってる時に山道を誰かが通りがかっても丸見えにはならないようにするためだ。あと、壁も完全には作らずに、作業場がある元々の家の窓から部屋の中が見えるように、風呂との行き来がしやすいようにごっそり開けた。

で、朝から作り始めて、夕方にはだいたい出来上がった。

しかし、出来そのものはひどいものだ。壁も屋根も隙間だらけで、それこそホームレスが作るそれと大差ないと思う。でもまあ、元の家もそんなに立派なものじゃないし、仮設の部屋としてならこれで十分だろう。

ちなみに屋根は、風呂の方に向かって雨水が流れ落ちるようにして、雨が降ればそのまま風呂に溜められればと考えてみた。上手くいくかどうかは実際に雨が降ってみないと分からないけどな。

俺がそうして新しい部屋を作ってる間、リーネとトーイも、森に入って蔓を集めてくれたりと手伝ってくれた。本当にいい子達だよ。

でもこれも、二人にとって、

『手伝いたいと思える親』

であることを心掛けてるからだというのは忘れないでおこうと思う。これで慢心して、

『手伝ってもらえて当たり前』

と考えたら一気に信頼を失うだろうな。

こうしてまずは完成として、実際に使ってみて不具合があったらその度に手を加えていくことにして今日も風呂に入った。

「できましたね♡」

リーネが嬉しそうに言ってくれたことで、俺も、

「ああ、これで安心して仕事ができる」

ホッとしたのだった。

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