172 / 398
暮らしの章
ドンブリ勘定もいいところだ
しおりを挟む
この日を境に……なんて都合のいい展開は別になく、トーイは相変わらず俺に対しては少なからず距離を置いているのは感じていた。
でもまあ、それでいい。なんでも一朝一夕に解決するなんて展開の方が好みの奴はそういうのを見ればいいんだからな。俺はただただ、今度は後悔しないように努力ってのを続けるだけだ。
前世の俺がやらなかった努力をな。
でも、そうしようと思えば思うほど、ゆかりのことが重くのしかかってくるのも感じてた。今の俺ならそんなに無理しなくてもできることを前世の俺はまったくやらなかった。努力しようとしなかった。そのくせ、
『お前らがこの家に住めるのは俺のおかげだ!』
と、女房と娘に対して思ってた。別に、俺でなくても構わなかったのにな。女房やゆかりにとっては。むしろ、
『一ヶ月に二十万もあれば生活できるだろ?』
って考えて、それ以外は全部自分で好き勝手に使ってたんだから、そうじゃない奴の方がよっぽどありがたかっただろ。
なにしろ、『月に二十万あれば』と言ったって、住民税やら固定資産税は家の方に通知が届くからそれを二十万円の内から支払って、その上でゆかりを学校に通わせて生活してってしてたんだ。普通に考えりゃそれこそ、
『爪に火を点す』
ような生活だったと今なら想像できる。ドンブリ勘定もいいところだ。まともに生活設計ができる奴の発想じゃない。まあだから、老後はかろうじて施設に入れただけのギリギリの年金生活だったけどな。
そんな前世の自分の姿が、ヘドロみたいに俺の中で悪臭も放ってる気がしたよ。
正直、<呪い>の類のような気がする。前世の記憶なんてのは。ただ、俺の場合は、呪いであると同時に<反面教師>でもあるからな。しかも、赤の他人じゃなく、他でもない俺自身だってことで、遠慮なく批判もできる。
できるが、あそこまでだとむしろ憐れみを感じるか。だからこの程度で済んでるって気もするし。
『自分の子供に人間としてまっとうな在り方も教えられないような<ハズレ親>の下に生まれたらどうなるか?』
っていう、これ以上ない実例だったしな。<ハズレ親>の下に生まれた俺が<ハズレ親>になったんだ。まったくもって笑うしかない。
その上で、思う。
『ゆかりは、どうだったんだろうな……』
<ハズレ親>の下に生まれて親そっくりの<ハズレ親>になって、そんな<ハズレ親>の下に生まれたゆかりは、大人になってから幸せな人生を送れたんだろうか……?
やっとまたゆっくり風呂に入れるようになったことで俺と一緒に気持ちよさそうに風呂に浸かってるリーネとトーイを見ながら、俺は思ってたのだった。
でもまあ、それでいい。なんでも一朝一夕に解決するなんて展開の方が好みの奴はそういうのを見ればいいんだからな。俺はただただ、今度は後悔しないように努力ってのを続けるだけだ。
前世の俺がやらなかった努力をな。
でも、そうしようと思えば思うほど、ゆかりのことが重くのしかかってくるのも感じてた。今の俺ならそんなに無理しなくてもできることを前世の俺はまったくやらなかった。努力しようとしなかった。そのくせ、
『お前らがこの家に住めるのは俺のおかげだ!』
と、女房と娘に対して思ってた。別に、俺でなくても構わなかったのにな。女房やゆかりにとっては。むしろ、
『一ヶ月に二十万もあれば生活できるだろ?』
って考えて、それ以外は全部自分で好き勝手に使ってたんだから、そうじゃない奴の方がよっぽどありがたかっただろ。
なにしろ、『月に二十万あれば』と言ったって、住民税やら固定資産税は家の方に通知が届くからそれを二十万円の内から支払って、その上でゆかりを学校に通わせて生活してってしてたんだ。普通に考えりゃそれこそ、
『爪に火を点す』
ような生活だったと今なら想像できる。ドンブリ勘定もいいところだ。まともに生活設計ができる奴の発想じゃない。まあだから、老後はかろうじて施設に入れただけのギリギリの年金生活だったけどな。
そんな前世の自分の姿が、ヘドロみたいに俺の中で悪臭も放ってる気がしたよ。
正直、<呪い>の類のような気がする。前世の記憶なんてのは。ただ、俺の場合は、呪いであると同時に<反面教師>でもあるからな。しかも、赤の他人じゃなく、他でもない俺自身だってことで、遠慮なく批判もできる。
できるが、あそこまでだとむしろ憐れみを感じるか。だからこの程度で済んでるって気もするし。
『自分の子供に人間としてまっとうな在り方も教えられないような<ハズレ親>の下に生まれたらどうなるか?』
っていう、これ以上ない実例だったしな。<ハズレ親>の下に生まれた俺が<ハズレ親>になったんだ。まったくもって笑うしかない。
その上で、思う。
『ゆかりは、どうだったんだろうな……』
<ハズレ親>の下に生まれて親そっくりの<ハズレ親>になって、そんな<ハズレ親>の下に生まれたゆかりは、大人になってから幸せな人生を送れたんだろうか……?
やっとまたゆっくり風呂に入れるようになったことで俺と一緒に気持ちよさそうに風呂に浸かってるリーネとトーイを見ながら、俺は思ってたのだった。
0
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー
紫電のチュウニー
ファンタジー
第四部第一章 新大陸開始中。 開始中(初投稿作品)
転生前も、転生後も 俺は不幸だった。
生まれる前は弱視。
生まれ変わり後は盲目。
そんな人生をメルザは救ってくれた。
あいつのためならば 俺はどんなことでもしよう。
あいつの傍にずっといて、この生涯を捧げたい。
苦楽を共にする多くの仲間たち。自分たちだけの領域。
オリジナルの世界観で描く 感動ストーリーをお届けします。
異世界災派 ~1514億4000万円を失った自衛隊、海外に災害派遣す~
ス々月帶爲
ファンタジー
元号が令和となり一年。自衛隊に数々の災難が、襲い掛かっていた。
対戦闘機訓練の為、東北沖を飛行していた航空自衛隊のF-35A戦闘機が何の前触れもなく消失。そのF-35Aを捜索していた海上自衛隊護衛艦のありあけも、同じく捜索活動を行っていた、いずも型護衛艦2番艦かがの目の前で消えた。約一週間後、厄災は東北沖だけにとどまらなかった事を知らされた。陸上自衛隊の車両を積載しアメリカ合衆国に向かっていたC-2が津軽海峡上空で消失したのだ。
これまでの損失を計ると、1514億4000万円。過去に類をみない、恐ろしい損害を負った防衛省・自衛隊。
防衛省は、対策本部を設置し陸上自衛隊の東部方面隊、陸上総隊より選抜された部隊で混成団を編成。
損失を取り返すため、何より一緒に消えてしまった自衛官を見つけ出す為、混成団を災害派遣する決定を下したのだった。
派遣を任されたのは、陸上自衛隊のプロフェッショナル集団、陸上総隊の隷下に入る中央即応連隊。彼等は、国際平和協力活動等に尽力する為、先遣部隊等として主力部隊到着迄活動基盤を準備する事等を主任務とし、日々訓練に励んでいる。
其の第一中隊長を任されているのは、暗い過去を持つ新渡戸愛桜。彼女は、この派遣に於て、指揮官としての特殊な苦悩を味い、高みを目指す。
海上自衛隊版、出しました
→https://ncode.syosetu.com/n3744fn/
※作中で、F-35A ライトニングⅡが墜落したことを示唆する表現がございます。ですが、実際に墜落した時より前に書かれた表現ということをご理解いただければ幸いです。捜索が打ち切りとなったことにつきまして、本心から残念に思います。搭乗員の方、戦闘機にご冥福をお祈り申し上げます。
「小説家になろう」に於ても投稿させて頂いております。
→https://ncode.syosetu.com/n3570fj/
「カクヨム」に於ても投稿させて頂いております。
→https://kakuyomu.jp/works/1177354054889229369
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
コグマと大虎 ~捨てられたおっさんと拾われた女子高生~
京衛武百十
現代文学
古隈明紀(こぐまあきのり)は、四十歳を迎えたある日、妻と娘に捨てられた。元々好きで結婚したわけでもなくただ体裁を繕うためのそれだったことにより妻や娘に対して愛情が抱けず、それに耐えられなくなった妻に三下り半を突き付けられたのだ。
財産分与。慰謝料なし。養育費は月五万円(半分は妻が負担)という条件の一切を呑んで離婚を承諾。独り身となった。ただし、実は会社役員をしていた妻の方が収入が多かったこともあり、実際はコグマに有利な条件だったのだが。妻としても、自分達を愛してもいない夫との暮らしが耐えられなかっただけで、彼に対しては特段の恨みもなかったのである。
こうして、形の上では家族に捨てられることになったコグマはその後、<パパ活>をしていた女子高生、大戸羅美(おおとらみ)を、家に泊めることになる。コグマ自身にはそのつもりはなかったのだが、待ち合わせていた相手にすっぽかされた羅美が強引に上がり込んだのだ。
それをきっかけに、捨てられたおっさんと拾われた(拾わせた)女子高生の奇妙な共同生活が始まったのだった。
筆者より。
中年男が女子高生を拾って罪に問われずに済むのはどういうシチュエーションかを考えるために書いてみます。
なお、あらかじめ明かしておきますが、最後にコグマと大虎はそれぞれ自分の人生を歩むことになります。
コグマは結婚に失敗して心底懲りてるので<そんな関係>にもなりません。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!(改訂版)
IXA
ファンタジー
凡そ三十年前、この世界は一変した。
世界各地に次々と現れた天を突く蒼の塔、それとほぼ同時期に発見されたのが、『ダンジョン』と呼ばれる奇妙な空間だ。
不気味で異質、しかしながらダンジョン内で手に入る資源は欲望を刺激し、ダンジョン内で戦い続ける『探索者』と呼ばれる職業すら生まれた。そしていつしか人類は拒否感を拭いきれずも、ダンジョンに依存する生活へ移行していく。
そんなある日、ちっぽけな少女が探索者協会の扉を叩いた。
諸事情により金欠な彼女が探索者となった時、世界の流れは大きく変わっていくこととなる……
人との出会い、無数に折り重なる悪意、そして隠された真実と絶望。
夢見る少女の戦いの果て、ちっぽけな彼女は一体何を選ぶ?
絶望に、立ち向かえ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる