前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十

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暮らしの章

ドンブリ勘定もいいところだ

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この日を境に……なんて都合のいい展開は別になく、トーイは相変わらず俺に対しては少なからず距離を置いているのは感じていた。

でもまあ、それでいい。なんでも一朝一夕に解決するなんて展開の方が好みの奴はそういうのを見ればいいんだからな。俺はただただ、今度は後悔しないように努力ってのを続けるだけだ。

前世の俺がやらなかった努力をな。

でも、そうしようと思えば思うほど、ゆかりのことが重くのしかかってくるのも感じてた。今の俺ならそんなに無理しなくてもできることを前世の俺はまったくやらなかった。努力しようとしなかった。そのくせ、

『お前らがこの家に住めるのは俺のおかげだ!』

と、女房と娘に対して思ってた。別に、俺でなくても構わなかったのにな。女房やゆかりにとっては。むしろ、

『一ヶ月に二十万もあれば生活できるだろ?』

って考えて、それ以外は全部自分で好き勝手に使ってたんだから、そうじゃない奴の方がよっぽどありがたかっただろ。

なにしろ、『月に二十万あれば』と言ったって、住民税やら固定資産税は家の方に通知が届くからそれを二十万円の内から支払って、その上でゆかりを学校に通わせて生活してってしてたんだ。普通に考えりゃそれこそ、

『爪に火を点す』

ような生活だったと今なら想像できる。ドンブリ勘定もいいところだ。まともに生活設計ができる奴の発想じゃない。まあだから、老後はかろうじて施設に入れただけのギリギリの年金生活だったけどな。

そんな前世の自分の姿が、ヘドロみたいに俺の中で悪臭も放ってる気がしたよ。

正直、<呪い>の類のような気がする。前世の記憶なんてのは。ただ、俺の場合は、呪いであると同時に<反面教師>でもあるからな。しかも、赤の他人じゃなく、他でもない俺自身だってことで、遠慮なく批判もできる。

できるが、あそこまでだとむしろ憐れみを感じるか。だからこの程度で済んでるって気もするし。

『自分の子供に人間としてまっとうな在り方も教えられないような<ハズレ親>の下に生まれたらどうなるか?』

っていう、これ以上ない実例だったしな。<ハズレ親>の下に生まれた俺が<ハズレ親>になったんだ。まったくもって笑うしかない。

その上で、思う。

『ゆかりは、どうだったんだろうな……』

<ハズレ親>の下に生まれて親そっくりの<ハズレ親>になって、そんな<ハズレ親>の下に生まれたゆかりは、大人になってから幸せな人生を送れたんだろうか……?

やっとまたゆっくり風呂に入れるようになったことで俺と一緒に気持ちよさそうに風呂に浸かってるリーネとトーイを見ながら、俺は思ってたのだった。

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