145 / 398
トーイの章
過度に干渉して何もやらせねえ
しおりを挟む
そんな感じで、俺はただ鉄を打ち、リーネとトーイには、麓の集落から回収したものの整理を改めて行ってもらってた。
日常的に使う諸々の大半はそれで確保できたと思う。特に、針仕事のための道具が確保できたのは大きかった。リーネは、だいたいの片付けが終わると服の繕いを始めた。言わなくても当たり前にやってくれるんだ。
トーイは、そんなリーネのしてることをじっと見てたと思ったら、いつの間にか今度は俺の仕事を見てた。まあ、男の子なだけに、針仕事よりはこっちの方が興味あるかな。
ただ、俺は、
「あんまり近付くなよ。熱いぞ」
と忠告した。すると火の粉が飛んでトーイの手に当たったらしく、
「っ!?」
慌てて手を振って距離を取ってた。まあそうやって実際に経験しながら学んでいくっていうのもあるだろう。なんにもやらせないってのもたぶん<過干渉>ってやつだと思う。
よくまあ、そういうのは<過保護>って言われるかもしれねえけど、俺の実感としちゃ<過保護>よりは<過干渉>なんだよな。やっぱり。保護することは悪くねえと思う。ただ、
『過度に干渉して何もやらせねえ』
ってのが問題なんだって感じるんだ。今だって、トーイが俺の仕事を見てることに干渉して、
『近付くな!』
とか怒鳴り散らしてたら経験できなかったことだしな。ただし、さっきのよりももっと近いところにいたら、敢えて手を止めてトーイの方に向き直って厳しい表情で、
『トーイ……』
みたいに声を掛けてたかもしれねえが。俺が声のトーンを落として名前を呼ぶだけで『これはまずい!』とトーイも感じてくれるらしい。
もっとも、やり過ぎるときっと慣れてしまって、効かなくなるだろう。こういうのはそれこそ『いざという時に』って感じに抑えておくのが肝だろうなって今は思う。
何でもかんでも頭ごなしに怒鳴りゃいいってもんでもないだろ。
「熱かっただろ? 水でよく冷やしとけ。そうすりゃそんなに痛くなくなる」
俺が告げると、
「トーイ! 大丈夫?」
リーネが手を止めてトーイの手を桶に汲んだ水に浸けてやってた。トーイも、
「……」
黙ったまま頷きつつもおとなしくその通りにしてる。
「ありがとう、リーネ」
俺は鉄を打ちながら彼女を労った。これが大事だと改めて思う。
『労うなら『ごめん』よりも『ありがとう』だよな。やっぱり……』
そんなことも頭をよぎる。なんかっちゃあ『ごめん』『ごめん』と、取り敢えず謝っときゃ許されるだろみたいに考えてそうなのが、そう言えば前世にもいたよなあ。
日常的に使う諸々の大半はそれで確保できたと思う。特に、針仕事のための道具が確保できたのは大きかった。リーネは、だいたいの片付けが終わると服の繕いを始めた。言わなくても当たり前にやってくれるんだ。
トーイは、そんなリーネのしてることをじっと見てたと思ったら、いつの間にか今度は俺の仕事を見てた。まあ、男の子なだけに、針仕事よりはこっちの方が興味あるかな。
ただ、俺は、
「あんまり近付くなよ。熱いぞ」
と忠告した。すると火の粉が飛んでトーイの手に当たったらしく、
「っ!?」
慌てて手を振って距離を取ってた。まあそうやって実際に経験しながら学んでいくっていうのもあるだろう。なんにもやらせないってのもたぶん<過干渉>ってやつだと思う。
よくまあ、そういうのは<過保護>って言われるかもしれねえけど、俺の実感としちゃ<過保護>よりは<過干渉>なんだよな。やっぱり。保護することは悪くねえと思う。ただ、
『過度に干渉して何もやらせねえ』
ってのが問題なんだって感じるんだ。今だって、トーイが俺の仕事を見てることに干渉して、
『近付くな!』
とか怒鳴り散らしてたら経験できなかったことだしな。ただし、さっきのよりももっと近いところにいたら、敢えて手を止めてトーイの方に向き直って厳しい表情で、
『トーイ……』
みたいに声を掛けてたかもしれねえが。俺が声のトーンを落として名前を呼ぶだけで『これはまずい!』とトーイも感じてくれるらしい。
もっとも、やり過ぎるときっと慣れてしまって、効かなくなるだろう。こういうのはそれこそ『いざという時に』って感じに抑えておくのが肝だろうなって今は思う。
何でもかんでも頭ごなしに怒鳴りゃいいってもんでもないだろ。
「熱かっただろ? 水でよく冷やしとけ。そうすりゃそんなに痛くなくなる」
俺が告げると、
「トーイ! 大丈夫?」
リーネが手を止めてトーイの手を桶に汲んだ水に浸けてやってた。トーイも、
「……」
黙ったまま頷きつつもおとなしくその通りにしてる。
「ありがとう、リーネ」
俺は鉄を打ちながら彼女を労った。これが大事だと改めて思う。
『労うなら『ごめん』よりも『ありがとう』だよな。やっぱり……』
そんなことも頭をよぎる。なんかっちゃあ『ごめん』『ごめん』と、取り敢えず謝っときゃ許されるだろみたいに考えてそうなのが、そう言えば前世にもいたよなあ。
0
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
貧乏男爵家の四男に転生したが、奴隷として売られてしまった
竹桜
ファンタジー
林業に従事していた主人公は倒木に押し潰されて死んでしまった。
死んだ筈の主人公は異世界に転生したのだ。
貧乏男爵四男に。
転生したのは良いが、奴隷商に売れてしまう。
そんな主人公は何気ない斧を持ち、異世界を生き抜く。
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
転生幼女具現化スキルでハードな異世界生活
高梨
ファンタジー
ストレス社会、労働社会、希薄な社会、それに揉まれ石化した心で唯一の親友を守って私は死んだ……のだけれども、死後に閻魔に下されたのは願ってもない異世界転生の判決だった。
黒髪ロングのアメジストの眼をもつ美少女転生して、
接客業後遺症の無表情と接客業の武器営業スマイルと、勝手に進んで行く周りにゲンナリしながら彼女は異世界でくらします。考えてるのに最終的にめんどくさくなって突拍子もないことをしでかして周りに振り回されると同じくらい周りを振り回します。
中性パッツン氷帝と黒の『ナンでも?』できる少女の恋愛ファンタジー。平穏は遙か彼方の代物……この物語をどうぞ見届けてくださいませ。
無表情中性おかっぱ王子?、純粋培養王女、オカマ、下働き大好き系国王、考え過ぎて首を落としたまま過ごす医者、女装メイド男の娘。
猫耳獣人なんでもござれ……。
ほの暗い恋愛ありファンタジーの始まります。
R15タグのように15に収まる範囲の描写がありますご注意ください。
そして『ほの暗いです』
異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。
星の国のマジシャン
ファンタジー
引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。
そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。
本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。
この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる