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トーイの章
俺は善人じゃねえ。聖人でもねえ
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『これからもリーネやトーイに怖い思いをさせることもあると思う。でも、そんな自分を正しいとは俺は思わない。それは本当なんだよ……』
これが今の俺の、嘘偽りない実感だ。
俺は善人じゃねえ。聖人でもねえ。どうしようもないロクデナシだ。だからこれからも何度も失敗するだろうし間違いだってやらかすだろう。それだからこそ、自分の失敗や間違いを正当化しないようにって思うんだ。
前世の俺はとにかく、
『俺は何も間違ってねえ。間違ってるのは他の奴らだ』
って考えた。自分のやらかしたことを認めず、他人のやらかしは針小棒大にコキ下ろした。それが正しいことだと思ってた。
説教臭いことをホザく奴らを見下してた。だが、他人の言うことを『説教臭い』と感じるのは、自分がそれまできちんと、
<腑に落ちる説教>
ってもんに触れてこなかったからだってのが今なら分かる。前世の俺の両親が吹いてた<説教>も、
<説教ぶったただの愚痴>
でしかなかったんだよ。何一つ筋が通ってなかった。だから俺に届かなかったし、
『説教とか何の役にも立たねえ。ウザいだけだ』
と思ってた。そりゃそうだよな。俺の両親が並べてたのは、ただの愚痴に紛れ込案せた<自分を正当化するための身勝手な言い訳>でしかなかったもんな。
『他人に迷惑を掛けるな』
ってのは、
『自分達に迷惑を掛けるな』
と言いたいだけで、他人を思いやってたわけじゃねえ。ガキだった俺にさえそれが透けて見えるほどあいつらは口先だけの奴らだった。
……でもなあ…あいつらも結局、あいつらの親からそう教わってきただけなんだよな……だからそうするのが正しいと思うしかなかったんだ……そう考えたら憐れでもある……
でもよ、だったらリーネやトーイがあいつらや俺みたいにならないようにするためには何が必要なんだ? 俺が変わるしかねえじゃねえか。
俺の言葉に安心したみたいにリーネもホッとした様子で、静かに寝息を立て始めた。
穏やかな寝顔だった。それを見てると俺もホッとする。安心する。幸せな気分になれる。
フッと眠りに落ちかけた時、
「う……うあ……うあ~……っ!」
という声。トーイがまたうなされてたんだ。眠りかけてたところを起こされる形になって、たぶん、前世の俺ならイラついて、
『うるせえ!!』
とか怒鳴っちまってたところだろうが、実際、少しイラついちまったが、
「大丈夫だ……もう大丈夫だ、トーイ……もう誰もお前を苦しめたりしない……」
囁くように声を掛けながら、そっと頭を撫でてやった。するとまた、スースーと静かに寝息を立て始めたのだった。
これが今の俺の、嘘偽りない実感だ。
俺は善人じゃねえ。聖人でもねえ。どうしようもないロクデナシだ。だからこれからも何度も失敗するだろうし間違いだってやらかすだろう。それだからこそ、自分の失敗や間違いを正当化しないようにって思うんだ。
前世の俺はとにかく、
『俺は何も間違ってねえ。間違ってるのは他の奴らだ』
って考えた。自分のやらかしたことを認めず、他人のやらかしは針小棒大にコキ下ろした。それが正しいことだと思ってた。
説教臭いことをホザく奴らを見下してた。だが、他人の言うことを『説教臭い』と感じるのは、自分がそれまできちんと、
<腑に落ちる説教>
ってもんに触れてこなかったからだってのが今なら分かる。前世の俺の両親が吹いてた<説教>も、
<説教ぶったただの愚痴>
でしかなかったんだよ。何一つ筋が通ってなかった。だから俺に届かなかったし、
『説教とか何の役にも立たねえ。ウザいだけだ』
と思ってた。そりゃそうだよな。俺の両親が並べてたのは、ただの愚痴に紛れ込案せた<自分を正当化するための身勝手な言い訳>でしかなかったもんな。
『他人に迷惑を掛けるな』
ってのは、
『自分達に迷惑を掛けるな』
と言いたいだけで、他人を思いやってたわけじゃねえ。ガキだった俺にさえそれが透けて見えるほどあいつらは口先だけの奴らだった。
……でもなあ…あいつらも結局、あいつらの親からそう教わってきただけなんだよな……だからそうするのが正しいと思うしかなかったんだ……そう考えたら憐れでもある……
でもよ、だったらリーネやトーイがあいつらや俺みたいにならないようにするためには何が必要なんだ? 俺が変わるしかねえじゃねえか。
俺の言葉に安心したみたいにリーネもホッとした様子で、静かに寝息を立て始めた。
穏やかな寝顔だった。それを見てると俺もホッとする。安心する。幸せな気分になれる。
フッと眠りに落ちかけた時、
「う……うあ……うあ~……っ!」
という声。トーイがまたうなされてたんだ。眠りかけてたところを起こされる形になって、たぶん、前世の俺ならイラついて、
『うるせえ!!』
とか怒鳴っちまってたところだろうが、実際、少しイラついちまったが、
「大丈夫だ……もう大丈夫だ、トーイ……もう誰もお前を苦しめたりしない……」
囁くように声を掛けながら、そっと頭を撫でてやった。するとまた、スースーと静かに寝息を立て始めたのだった。
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