前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十

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トーイの章

じゃあ、入ってみるか

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でかい鍋でぐつぐつと音を立てていた湯を、鍋を浴槽側に傾けて一気に流し込んだ。もわあと湯気が上がる。それから湯をかき混ぜてみたが、正直、まだまだぬるい。しかし、先日入ってみた時のような<ぬるい水>ではなく、<ぬるい湯>にはなってたと思う。

これは期待できるぞ。

そんなことを思いながらさらに二度目の水をそれぞれ鍋に入れ、沸かし始める。もちろんでかい鍋でもな。

「じゃあまた水を汲みに行ってくるからな。また湯が沸いたら風呂に入れといてくれ」

収穫してきた果実と木の実を分別していたリーネに声を掛けると、

「はい!」

と応えてくれた。トーイはリーネに果実や木の実について教わっていたようだ。こうやって自然に知識を継承していく習慣が身に付いているんだろうな。

そんなこんなで三度目の水汲みを夕暮れまでに終わらせて、俺は、でかい鍋の湯を再び風呂に投入した。が、思ったほどは温かくならない。やはり時間が掛かるせいで冷めてしまう分が多いんだろうな。

しかし、ここからはひたすら湯を沸かすだけだ。水はもう、十分な量が入ってる。沸かしては投入、沸かしては投入を、リーネと一緒に繰り返す。トーイにはまださすがに危ないので、見ててもらうだけだが。

湯を沸かしながらその火でネズミ肉の串焼きを作って食べる。これは、トーイもしっかり食べてくれた。一匹だけだったから量はそれこそ一人頭は焼き鳥一本分程度だったけどな。物足りない分は果実と木の実で補う。

こうして、すっかり日が傾いた頃、

「お、割といい感じかもしれない」

湯加減を見てそう思った俺は、すべての竈の火を消して、

「じゃあ、入ってみるか」

服を脱いで浴槽に浸かってみた。

「う~ん、まだちょっとぬるいが、まあ今の時期ならこれでもいいか」

と口にして、

「リーネも入るか?」

問い掛けると、

「はい…!」

そう返事をしてくれた。正直、以前のような笑顔じゃない気もするものの、脱ぐのはためらってない。だけどそれさえ、俺の機嫌を損ねたくないという打算からのような印象はある。

まだまだ先は長いな。

とは思うものの、

「トーイも入ってみるか?」

俺の言葉に、彼も服を脱いでためらいがちながらも入ってきた。興味はあったようだ。

さすがに三人で一度に入るのは狭かったにせよ、リーネと俺は互いに少し傾いた形で向かい合い、トーイはリーネの膝に座る形で入った。すると、

「あったかくて気持ちいいですね……」

リーネはそう言ってくれた。その口調は、俺に気遣った嘘じゃなかったと思う。彼女も本当に気持ちいいと思ってくれたんだ。

実際、俺も気持ちよかった。

大変だったが、風呂を作ってよかったよ。

気分的にそれどころじゃない部分もあるから諸手を挙げて、

『やったあーっ!!』

って感じの達成感じゃなかったが、しみじみと感慨深いものがあったのだった。

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