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トーイの章
信頼と依存
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せっかくここまで築き上げてきたリーネからの信頼を失ったと感じた俺は、しかし敢えて最初の頃と同じように淡々と彼女と接することを心掛けた。
それができたのは、<百年分の人生経験>のおかげのような気はする。
そうだ。人間は間違う。失敗する。だが同時に、諦めなければやり直すことはできる。失われたものは取り戻せなくても、新たな形で再び手にすることもできるんだ。
ここまでのリーネとの関係は、無力な俺自身のヘマで失ったかもしれない。だが、リーネも俺もこうして生きている。なら、再び信頼関係を構築していけばいい。
まあ、<恋愛関係>ってやつは一度失われると戻らないものかもしれないが、リーネと俺との間にあるものは、幸いなことに恋愛関係じゃないからな。
こうして、体を拭き終えたリーネが、背中を向けた俺と同じベッドに、トーイを間に挟む形で一緒に寝てくれた。うん、一緒のベッドに寝てくれるなら、まだ、望みはあるだろう。
そして翌朝、俺は、再び集落に下りられるかどうかを確かめようと、かろうじてそれが見える場所まで下った。木々の間から見える集落はひっそりと静まり返っていて、動く者の気配もない。今のところは、他の<火事場泥棒>も<帰還者>もいないようだ。
それを確認し、家へと戻る。すると、
「……リーネ…?」
ふと気配を感じ頭を上げると、そこにはリーネの姿があった。目に涙を浮かべて、焦った様子で。でも俺が彼女の名前を口にした瞬間、
「ごめんなさい…! 私、トニーさんに助けてもらったのに……! 怖いだなんて…! 本当にごめんなさい……!」
両手を胸の前で組んで、祈るようにして、彼女は俺に詫びた。さらに、
「起きたらトニーさんがいなくて……! それで私、捨てられたんだと思って……! あの時のトニーさんは怖かったけど、トニーさんに捨てられるのはもっと怖いです……! ごめんなさい…! だから……だから……捨てないでください……!!」
縋るようにそう言った。リーネがまだ寝ていたから俺は行先も告げずに家を出てきて、それで、目が覚めたら俺の姿がなかったことに、彼女はパニックになったということか……
トーイへの恫喝で怯えさせてしまったものの、それでもまだ、リーネの俺への依存は失われなかったようだ。
そう……これは<信頼>じゃない。ただの<依存>だ。だから勘違いしちゃいけないと思う。俺に怯えてる時点で、彼女の俺への信頼は確かに失われているんだ。でも同時に、<依存>は失われていなかった。
あまり褒められた状況じゃない。だが俺は、
「バカだな……俺がリーネを捨てるわけないじゃないか……」
こみ上げるものを必死に抑え付けながら、それだけを口にしたのだった。
それができたのは、<百年分の人生経験>のおかげのような気はする。
そうだ。人間は間違う。失敗する。だが同時に、諦めなければやり直すことはできる。失われたものは取り戻せなくても、新たな形で再び手にすることもできるんだ。
ここまでのリーネとの関係は、無力な俺自身のヘマで失ったかもしれない。だが、リーネも俺もこうして生きている。なら、再び信頼関係を構築していけばいい。
まあ、<恋愛関係>ってやつは一度失われると戻らないものかもしれないが、リーネと俺との間にあるものは、幸いなことに恋愛関係じゃないからな。
こうして、体を拭き終えたリーネが、背中を向けた俺と同じベッドに、トーイを間に挟む形で一緒に寝てくれた。うん、一緒のベッドに寝てくれるなら、まだ、望みはあるだろう。
そして翌朝、俺は、再び集落に下りられるかどうかを確かめようと、かろうじてそれが見える場所まで下った。木々の間から見える集落はひっそりと静まり返っていて、動く者の気配もない。今のところは、他の<火事場泥棒>も<帰還者>もいないようだ。
それを確認し、家へと戻る。すると、
「……リーネ…?」
ふと気配を感じ頭を上げると、そこにはリーネの姿があった。目に涙を浮かべて、焦った様子で。でも俺が彼女の名前を口にした瞬間、
「ごめんなさい…! 私、トニーさんに助けてもらったのに……! 怖いだなんて…! 本当にごめんなさい……!」
両手を胸の前で組んで、祈るようにして、彼女は俺に詫びた。さらに、
「起きたらトニーさんがいなくて……! それで私、捨てられたんだと思って……! あの時のトニーさんは怖かったけど、トニーさんに捨てられるのはもっと怖いです……! ごめんなさい…! だから……だから……捨てないでください……!!」
縋るようにそう言った。リーネがまだ寝ていたから俺は行先も告げずに家を出てきて、それで、目が覚めたら俺の姿がなかったことに、彼女はパニックになったということか……
トーイへの恫喝で怯えさせてしまったものの、それでもまだ、リーネの俺への依存は失われなかったようだ。
そう……これは<信頼>じゃない。ただの<依存>だ。だから勘違いしちゃいけないと思う。俺に怯えてる時点で、彼女の俺への信頼は確かに失われているんだ。でも同時に、<依存>は失われていなかった。
あまり褒められた状況じゃない。だが俺は、
「バカだな……俺がリーネを捨てるわけないじゃないか……」
こみ上げるものを必死に抑え付けながら、それだけを口にしたのだった。
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