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トーイの章

今は彼女が

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『俺が間違ってた』

俺はそう言ったが、リーネはどこか怯えた様子で、

「……もう、大丈夫です……」

と、ひきつった笑みを浮かべてた。

それを見た瞬間、俺は、ここまで築き上げてきた信頼をごっそり失ったと感じた。でも、だからってここで、

『そんな目で俺を見るな!!』

とかキレ倒してそれで信頼が回復するか? そんなもん、むしろとどめを刺すだけだろう。だから俺は、

「すまん……」

そう言って、自分が使った食器を手に立ち上がろうとした。するとリーネは、

「あ、私が片付けます……!」

慌てたように言った。

「すまん……ありがとう……」

これまでの笑顔がない彼女の姿を見ながら、俺は自分をぶん殴りたくなっていた。

でも、あの時はああするしか思い付かなかった。やり方は正しくなかったかもしれないが、俺にはそれしか思い付かなかったんだ。

ただ、だからって、

『そうするしかなかったんだ! 仕方なかったんだ!』

とキレたところでそれこそ火に油だしな……失った信頼は、ここまでと同じく、時間をかけて取り戻していくしかない。

『俺は本当にバカだ……』

たまらない自己嫌悪に苛まれながらも、平静を装う。ここで狼狽えたって状況は改善しない。仕事でもそうだったはずだ。ミスをした部下が狼狽えているのを見ると、逆に、

「今さらビビるくらいなら最初からちゃんと確認しとけ!!」

と怒鳴り散らした。オロオロしていかにも同情を引こうとしてることに腹が立って仕方なかったんだ。己がそれを快く思ってなかったのに、いざ自分自身が失敗したらオロオロして相手の同情を買おうとするとか、ふざけすぎだろ。

でも、リーネにあんな表情をさせてることが、マジで精神にクる。

くそお……

泣きたくなるような気分を抑え付けて、いつものようにリーネに背中を向けたまま体を拭いた。それこそ風呂にでも入って気分を少しでも変えたかったが、まだ水さえ満足に入っていない状態だしな。

リーネも、今日、回収してきてさっそく使った食器を枯れ草でゴシゴシこすりながら片付けていった。前世のように水洗いはほとんどしない。そんな風に贅沢な使い方ができるほど水にも余裕はないし、そもそも排水がちゃんとした<流し>みたいなのはないしな。

水洗いするとしたら、桶に水を汲んで外で洗う感じだ。

で、体を拭いた俺は、ベッドの脇で蹲って寝てしまったトーイを抱き上げてベッドにそっと寝かせ、俺は奥の壁側に横になった。リーネとトーイには背を向けて。

すると、リーネが体を拭いている気配。

昨日まではまったく平然としてたのに、今は彼女がどこか緊張してるのが伝わってくる気がしたのだった。

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