97 / 398
トーイの章
風呂沸かすだけで一日終わっちまうわ!!
しおりを挟む
食事を終えると、俺は、鉄を打つ作業に戻った。
俺の仕事は<鍛冶>。鉄を打ち鍛えて鋼を作ったり、ナイフを作ったり、農具を作ったり、鍋を作ったりというのが仕事だ。
と言っても、実は今はまだ、<仕事>としてそれをやってるというよりは、自分達の生活をまず成立させるためにやってる感じだ。
何しろ、前の住人が亡くなって放置されてたらしい人里離れた一軒家を見付けて住み始めたのはいいものの、普通に生活するために必要なものがまだまだ足りてないんだよ。
で、今は、風呂用に湯を沸かすための<でかい鍋>を作っているところだ。鍋と言っても、イメージとしては、
<鉄板焼き用の鉄板の枠の部分が高くなった鍋もどき>
だけどな。一度に二十リットルくらいの湯を沸かせるものを作ってる感じか。
本当は<湯沸し器>を作りたいところだが、残念ながら俺にはその知識がない。だから、取り敢えず思い付いたものを順に形にしていって、何とかしようとしているところだ。
風呂の浴槽についてはすでに用意できてる。庭に穴を掘って石を敷き詰めて露天風呂風にしたものだ。こちらもまだまだ改良の余地ありではあるものの、まずは湯を張れないと話にならないからな。
そんなこんなで、アントニオ・アークとしての父親から学んだ鍛冶の技術を使って、湯沸し用のでかい鍋を作っているところなわけだ。
この辺りも手探り試行錯誤の真っ最中だからな。知識のある人間からすれば馬鹿みたいなことをしてるようにも見えても、知識も経験もないならとりあえずやってみるしかないんだよ。便利な社会の基礎を作り上げてきた先人達もそうやってきたはずだ。
すると、夕方には、非常に不格好ではあるが、<四角いでかい鍋>が出来上がった。これを焚火に掛けて一気に二十リットルほどの湯を沸かすわけだ。この前には、料理用の鍋を使ってちまちま沸かそうとしたんだが、ざっと三百リットルくらいある浴槽に湯を張るには、少なくとも五十回以上は沸かさないとダメだろうってことで、ボツにした。
『風呂沸かすだけで一日終わっちまうわ!!』
って感じだしな。
前世でも、<中世>と呼ばれる頃にはたっぷり湯を張った風呂に入るってのはかなりの贅沢だったらしいしな。まあ、中世よりもずっと前の古代ローマ帝国の頃には<テルマエ>とかいう公衆浴場があったらしいが、なぜか引き継がれずに衰退して消滅したらしい。
確かに、それを作り維持していくのは並大抵のことじゃなかっただろうが。労力も手間もコストもな。
俺の仕事は<鍛冶>。鉄を打ち鍛えて鋼を作ったり、ナイフを作ったり、農具を作ったり、鍋を作ったりというのが仕事だ。
と言っても、実は今はまだ、<仕事>としてそれをやってるというよりは、自分達の生活をまず成立させるためにやってる感じだ。
何しろ、前の住人が亡くなって放置されてたらしい人里離れた一軒家を見付けて住み始めたのはいいものの、普通に生活するために必要なものがまだまだ足りてないんだよ。
で、今は、風呂用に湯を沸かすための<でかい鍋>を作っているところだ。鍋と言っても、イメージとしては、
<鉄板焼き用の鉄板の枠の部分が高くなった鍋もどき>
だけどな。一度に二十リットルくらいの湯を沸かせるものを作ってる感じか。
本当は<湯沸し器>を作りたいところだが、残念ながら俺にはその知識がない。だから、取り敢えず思い付いたものを順に形にしていって、何とかしようとしているところだ。
風呂の浴槽についてはすでに用意できてる。庭に穴を掘って石を敷き詰めて露天風呂風にしたものだ。こちらもまだまだ改良の余地ありではあるものの、まずは湯を張れないと話にならないからな。
そんなこんなで、アントニオ・アークとしての父親から学んだ鍛冶の技術を使って、湯沸し用のでかい鍋を作っているところなわけだ。
この辺りも手探り試行錯誤の真っ最中だからな。知識のある人間からすれば馬鹿みたいなことをしてるようにも見えても、知識も経験もないならとりあえずやってみるしかないんだよ。便利な社会の基礎を作り上げてきた先人達もそうやってきたはずだ。
すると、夕方には、非常に不格好ではあるが、<四角いでかい鍋>が出来上がった。これを焚火に掛けて一気に二十リットルほどの湯を沸かすわけだ。この前には、料理用の鍋を使ってちまちま沸かそうとしたんだが、ざっと三百リットルくらいある浴槽に湯を張るには、少なくとも五十回以上は沸かさないとダメだろうってことで、ボツにした。
『風呂沸かすだけで一日終わっちまうわ!!』
って感じだしな。
前世でも、<中世>と呼ばれる頃にはたっぷり湯を張った風呂に入るってのはかなりの贅沢だったらしいしな。まあ、中世よりもずっと前の古代ローマ帝国の頃には<テルマエ>とかいう公衆浴場があったらしいが、なぜか引き継がれずに衰退して消滅したらしい。
確かに、それを作り維持していくのは並大抵のことじゃなかっただろうが。労力も手間もコストもな。
0
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~
イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」
どごおおおぉっ!!
5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略)
ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。
…だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。
それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。
泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ…
旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは?
更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!?
ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか?
困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語!
※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください…
※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください…
※小説家になろう様でも掲載しております
※イラストは湶リク様に描いていただきました
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました
杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」
王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。
第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。
確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。
唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。
もう味方はいない。
誰への義理もない。
ならば、もうどうにでもなればいい。
アレクシアはスッと背筋を伸ばした。
そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺!
◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。
◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。
◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。
◆全8話、最終話だけ少し長めです。
恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。
◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。
◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03)
◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます!
9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる