前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十

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リーネの章

気が遠くなるわ!!

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俺がそうやって水を運んでる間に、リーネは、ネズミの革で手袋を作っていた。俺が作ってやったものよりも少しちゃんとしたものだった。少しな。

俺が作った<針>がそもそもちゃんとしてないんだよ! まったく。

やっぱり、まともな針仕事をするにはまともな針も必要だな。

それはまあ置いといて、俺も一休みして朝食にして、水汲みを再開。昼には風呂がほぼいっぱいになった。

泥水で。

が、そんなことで凹んでるわけにもいかない。取り敢えずまた休憩して食事にして、リーネには家で使う分の水汲みをしてもらって、その間に俺は、リーネが庭に作った竈に石を並べて火を熾した。そこで、鍋も使って同時に水を沸かす。

さらに、その隣にももう一つ竈を作って、同じように火を熾して石を焼きながら鍋で水を沸かす。

その間に今度は、リーネの腕より少し細いくらいの枝二本を蔓で繋いで、<でかいやっとこ>みたいなものを作った。これで熱した石を運んで浴槽に放り込むんだ。

それが完成した頃にちょうど鍋の湯が沸いて、それを浴槽に流し込む。が、当然、鍋の湯を一つ二つ流し込んだくらいでぬるくなるわけもない。

鍋がまあ、精々三リットルくらいか。で、三リットルを沸騰するまで沸かしてそれを風呂に流し込むことで適温になるくらいにするには、時間経過で冷める分も含めると、

『……少なくとも百五十回くらいは沸かさなきゃならないか……?』

気が遠くなるわ!!

こりゃ、もっと確実に一度に湯を沸かす方法を考えなきゃいけないな。

石を焼いて浴槽に放り込むのも併用したら、もっと早く沸くかな……?

これも、やってみないと分からない。試したこともないしな。

で、焼いた石をでかいやっとこで掴んで浴槽に放り込むと、

「じゅばーっ!!」

と派手な音を上げながら、「バクン!」と、

『え? バクン…?』

まさかと思って浴槽に手を突っ込み慎重に探ってみると、指先に角がある石の感触。

あれほど派手な音を上げていたのに、もう、ほんのり『あったかいかな?』程度の温度になっていた。

とは言え、念のために気を付けながら掴んで持ち上げると、綺麗に割れていた。熱した状態でいきなり水に放り込んだから割れてしまったんだ。水から出すとそれなりに熱を持ってるのは感じられたが、熱いというほどでもなかった。肝心の風呂の水も、全然、ぬるくもないただの水だった。

割れた片割れも拾い上げて、脇に放り出す。

そうして再び焼けた石を放り込むと、今度は割れなかった。ホッとして次を放り込むと、また「バクン!」と音がして割れてしまった。

どうやら、割れるものとそうじゃないのがあるようだな。

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