上 下
77 / 398
リーネの章

上手くできなくて当たり前

しおりを挟む
それでも、リーネが水汲みを終えられるまでには、子供が一人寝そべることができる程度には穴が掘れた。

が、石がとにかく多い。体積で言えば土と変わらないくらいにあると思う。

しかし、その石は、風呂作りに利用することになるだろうな。さすがに土が剥き出しのまま湯を張るのもどうかと思うから、石で固めようと考えてる。

ただ、掘り出した石のほとんどは、そのまま使うにはちょっとという気がする。結構、ごつごつしてて鋭いところとかもあって、変に踏んだら足とか切りそうな感じなんだ。

となれば……

俺は思い立って家に戻り、鉄を打つための槌を持ってきて、出てきた石の角になった部分をコツコツと叩いてみた。すると、刃物のようになった部分が削れて、丸くなる。

「これだ……!」

と思った。そこに、

「水汲み、終わりました」

リーネが声を掛けてくる。

「おお、ご苦労さん。じゃあ、この槌を使って、ここの石の角になったところをこうやってコンコンと叩いて丸くしていってくれ」

俺は、そう説明しながら、実際に石の角を槌で叩いて滑らかにしていく。それから彼女に槌を渡して、

「こうですか……?」

リーネが石を叩く様子を見て、

「いやいや、そんなに力を入れなくていい。槌の重さだけで、こう、上から当てるだけって感じでいい。一気にやろうとすると大きく割れてまた角ができてしまうかもしれないから」

石を叩くということで少し力んでしまったのか、強くガンガンと叩こうとしたのを見て、俺は改めてやって見せた。槌そのものもがっしり握るんじゃなくて、柄を包み込む感じで柔らかく握って、ホントに当てるだけって感じでやって見せる。

それでもすぐには彼女も俺の言ってることがピンと来ないらしくて、イメージどおりにできない。

前世の俺だったら、たぶん、二回やって見せただけで、

『何で分からないんだ!!』

とか怒鳴ってただろうな。でも、相手は自分とは違う人間なんだよ。しかも子供で、鍛冶を仕事にしてる俺と違って槌の扱いそのものだって慣れちゃいない。そういう相手に俺の思う感覚がすぐに理解できると考える方が、そもそもどうかしてる。

そんなことで苛々して、それでストレスを発散するためにリーネに当ったんじゃ、何してるか分かったもんじゃない。

だから俺は、

『上手くできなくて当たり前』

と考えて、彼女が感覚を掴むまで、何度でも丁寧に教えることにした。

そして、三十分くらいすると、

「おお! そうだ。そんな感じでいい!」

って口にするくらいにはリーネもコツを掴んでくれた。

「焦らなくていいんだ。急がなくていい。期限が決められてるわけじゃないんだからな」

「はい、分かりました…!」

嬉しそうに笑顔を見せる彼女が眩しかったのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー

紫電のチュウニー
ファンタジー
 第四部第一章 新大陸開始中。 開始中(初投稿作品)  転生前も、転生後も 俺は不幸だった。  生まれる前は弱視。  生まれ変わり後は盲目。  そんな人生をメルザは救ってくれた。  あいつのためならば 俺はどんなことでもしよう。  あいつの傍にずっといて、この生涯を捧げたい。  苦楽を共にする多くの仲間たち。自分たちだけの領域。  オリジナルの世界観で描く 感動ストーリーをお届けします。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

コグマと大虎 ~捨てられたおっさんと拾われた女子高生~

京衛武百十
現代文学
古隈明紀(こぐまあきのり)は、四十歳を迎えたある日、妻と娘に捨てられた。元々好きで結婚したわけでもなくただ体裁を繕うためのそれだったことにより妻や娘に対して愛情が抱けず、それに耐えられなくなった妻に三下り半を突き付けられたのだ。 財産分与。慰謝料なし。養育費は月五万円(半分は妻が負担)という条件の一切を呑んで離婚を承諾。独り身となった。ただし、実は会社役員をしていた妻の方が収入が多かったこともあり、実際はコグマに有利な条件だったのだが。妻としても、自分達を愛してもいない夫との暮らしが耐えられなかっただけで、彼に対しては特段の恨みもなかったのである。 こうして、形の上では家族に捨てられることになったコグマはその後、<パパ活>をしていた女子高生、大戸羅美(おおとらみ)を、家に泊めることになる。コグマ自身にはそのつもりはなかったのだが、待ち合わせていた相手にすっぽかされた羅美が強引に上がり込んだのだ。 それをきっかけに、捨てられたおっさんと拾われた(拾わせた)女子高生の奇妙な共同生活が始まったのだった。      筆者より。 中年男が女子高生を拾って罪に問われずに済むのはどういうシチュエーションかを考えるために書いてみます。 なお、あらかじめ明かしておきますが、最後にコグマと大虎はそれぞれ自分の人生を歩むことになります。 コグマは結婚に失敗して心底懲りてるので<そんな関係>にもなりません。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!(改訂版)

IXA
ファンタジー
凡そ三十年前、この世界は一変した。 世界各地に次々と現れた天を突く蒼の塔、それとほぼ同時期に発見されたのが、『ダンジョン』と呼ばれる奇妙な空間だ。 不気味で異質、しかしながらダンジョン内で手に入る資源は欲望を刺激し、ダンジョン内で戦い続ける『探索者』と呼ばれる職業すら生まれた。そしていつしか人類は拒否感を拭いきれずも、ダンジョンに依存する生活へ移行していく。 そんなある日、ちっぽけな少女が探索者協会の扉を叩いた。 諸事情により金欠な彼女が探索者となった時、世界の流れは大きく変わっていくこととなる…… 人との出会い、無数に折り重なる悪意、そして隠された真実と絶望。 夢見る少女の戦いの果て、ちっぽけな彼女は一体何を選ぶ? 絶望に、立ち向かえ。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...