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リーネの章
ストレスなんか吹っ飛ぶぜ
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そんなこんなで、リーネの料理を堪能した俺は、
「リーネも食べろよ」
ついつい全部食べてしまいたいと思ってしまう気持ちを抑えて、彼女に鍋を返した。
「いえ、私はいいですから、トニーさんが食べてください」
リーネはそう言うが、
「ダメだ。これはお前が作ってくれたものなんだ。本当はお前に食べる権利がある。俺はそのおこぼれをもらっただけだ」
俺はきっぱりと告げて、彼女にちゃんと食べるように命じた。本当は命令なんかしなくていいはずなんだが、こう言わないと彼女も納得してくれないからな。命令されるのが当たり前の境遇で育ってきたせいで。
「あ、はい。分かりました。それでは、いただきます」
彼女は恐縮しながら<ウサギ肉と野草のスープ>を食べた。とても美味しそうに。
そんな彼女の様子を見てるだけで、俺もなんだか幸せな気分になる。安らいだ気分になる。これがいい。ストレスなんか吹っ飛ぶぜ……
俺はそれを実感しながら、果実と木の実も食べた。さすがにスープだけじゃ物足りなかったからな。前世の俺なら、一人で食っちまってたところだろう。
こうして夕食を終えると、また、二人して体を濡らした布で拭いて、一緒のベッドで寝る。
「明日は、<風呂>を作ろうと思う」
リーネと向かい合って、俺はそう話し掛けた。
「<FURO>…? って、なんですか……?」
彼女はきょとんとした表情で訊き返してくる。無理もない。ここにゃ<風呂>なんてなかったし、それに相当する言葉も知らなかったから、日本語で、
<風呂>
って言ったからな。だから俺は、
「風呂ってのは、こう、地面に穴を掘って池みたいにして、そこに湯を張って浸かるんだ。気持ちいいぞ」
<湯船>に相当する言葉も<浴槽>に相当する言葉も聞いたことがなかったから、仕方なく、露天風呂のイメージで『池みたいに』と表現した。
するとリーネは、
「へえ! なんだか素敵ですね!」
と食いついてきてくれた。
「そうだろう、そうだろう? だから風呂を作ろうと思うんだ」
「いいですね。私もお手伝いします……!」
彼女もノリノリだ。こうなるともう、作る以外に選択肢はない。
「正直、俺も作るのは初めてだから上手くいく保障はないが、頑張ってみたいと思う。上手くいけば本当に気持ちいいぞ。疲れも吹っ飛ぶ」
「それは楽しみです…!」
とかなんとか、楽しく話し合って、それでまたいつの間にか眠っていた。
本当に、こうして一緒に寝るのが苦にならない。それどころか、すごく安らいだ気持ちになる。それがたまらなく心地好いんだ。
「リーネも食べろよ」
ついつい全部食べてしまいたいと思ってしまう気持ちを抑えて、彼女に鍋を返した。
「いえ、私はいいですから、トニーさんが食べてください」
リーネはそう言うが、
「ダメだ。これはお前が作ってくれたものなんだ。本当はお前に食べる権利がある。俺はそのおこぼれをもらっただけだ」
俺はきっぱりと告げて、彼女にちゃんと食べるように命じた。本当は命令なんかしなくていいはずなんだが、こう言わないと彼女も納得してくれないからな。命令されるのが当たり前の境遇で育ってきたせいで。
「あ、はい。分かりました。それでは、いただきます」
彼女は恐縮しながら<ウサギ肉と野草のスープ>を食べた。とても美味しそうに。
そんな彼女の様子を見てるだけで、俺もなんだか幸せな気分になる。安らいだ気分になる。これがいい。ストレスなんか吹っ飛ぶぜ……
俺はそれを実感しながら、果実と木の実も食べた。さすがにスープだけじゃ物足りなかったからな。前世の俺なら、一人で食っちまってたところだろう。
こうして夕食を終えると、また、二人して体を濡らした布で拭いて、一緒のベッドで寝る。
「明日は、<風呂>を作ろうと思う」
リーネと向かい合って、俺はそう話し掛けた。
「<FURO>…? って、なんですか……?」
彼女はきょとんとした表情で訊き返してくる。無理もない。ここにゃ<風呂>なんてなかったし、それに相当する言葉も知らなかったから、日本語で、
<風呂>
って言ったからな。だから俺は、
「風呂ってのは、こう、地面に穴を掘って池みたいにして、そこに湯を張って浸かるんだ。気持ちいいぞ」
<湯船>に相当する言葉も<浴槽>に相当する言葉も聞いたことがなかったから、仕方なく、露天風呂のイメージで『池みたいに』と表現した。
するとリーネは、
「へえ! なんだか素敵ですね!」
と食いついてきてくれた。
「そうだろう、そうだろう? だから風呂を作ろうと思うんだ」
「いいですね。私もお手伝いします……!」
彼女もノリノリだ。こうなるともう、作る以外に選択肢はない。
「正直、俺も作るのは初めてだから上手くいく保障はないが、頑張ってみたいと思う。上手くいけば本当に気持ちいいぞ。疲れも吹っ飛ぶ」
「それは楽しみです…!」
とかなんとか、楽しく話し合って、それでまたいつの間にか眠っていた。
本当に、こうして一緒に寝るのが苦にならない。それどころか、すごく安らいだ気持ちになる。それがたまらなく心地好いんだ。
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