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リーネの章

ごめんなさい。寝過ごしました

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そうしてリーネと話をしながらベッドに横になってたら、また、いつの間にか眠ってしまってた。他人と一緒じゃ気になって寝られなかったはずの俺がだ。彼女となら、気付いたら寝てる。

ああ……ホントに悪くない。こういうの。もっと早く気付けてればな……

やっぱり先に目が覚めて、リーネの寝顔を見ていたら、そんなことも思ってしまう。が、感慨に浸ってばかりもいられないわけで、とにかく鍋を完成させないと。

と言っても、本体はほぼ出来上がってるから、後は取っ手を付けるだけなんだけどな。

そんなこんなで一つ目の鍋、完成。だが、錆を防ぐために油の膜を作らなきゃいけないんだよ。で、外に出て、家の裏手の木になっていた実を両手いっぱい採ってくる。

実はこれ、<味のついてないカチカチの脂身>って感じでとても食えたもんじゃないんだが、やたらと油分が多くて、サラダ油的に使われるものだった。それを、金床に並べてナイフの背で叩いて潰し、鍋に放り込む。それから石を並べただけの簡単なコンロで薪に火を熾して炒める。すると油が出てきて鍋の底に広がるんだ。

それでもって、布の切れ端で油を全体に塗り広げ、再びコンロにかけてあぶって油を定着させる。

そこに、

「おはようございます」

リーネの声。でも、

「ごめんなさい。寝過ごしました」

と彼女は付け足す。外の気配でいつもより起きるのが遅くなったことに気付いたんだろう。昨夜、俺と話し込んでしまって寝るのが遅くなったから、その分、起きるのも遅くなったってことだ。

「ああ、いい。気にするな。どうせ急ぎの用事もないしな」

俺も笑顔で応えられた。前世では遅刻した奴なんか頭ごなしに怒鳴ってたな。それについてはもちろん遅刻する奴が悪いんだが、別に怒鳴る必要もなかった気がする。怒鳴るのは、俺自身の憂さ晴らしのためだったしな。

「それじゃ、水汲み、行ってきます」

「おう、気を付けてな」

いそいそと支度をして出ていく彼女を俺は苛々せずに見送ることができた。自分が苛々せずに済んでるというのが心地好い。

油の膜を作る作業も終え、俺は早速、その鍋に今度は樹皮をはがしてきて放り込み、水を張って、コンロで煮始めた。

その間に、二つ目の鍋を作る準備に取り掛かる。

地金を炉で焼き、金床の上で鎚で打つ。カーン、カーンといい音がする。そして鉄を打ちながら、鍋の湯が減ってくると水を足し、とにかく樹皮を煮る。これで、タンニンとかいうのを煮出すらしい。で、十分にタンニンが出た煮汁に皮を浸すんだ。

ひょっとしたら必ずしも正確なやり方じゃないかもしれないが、少なくとも俺はこれで教わってるから、他のやり方は知らん。

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