62 / 398
リーネの章
やっぱり風呂が欲しいなあ……
しおりを挟む
取り敢えず、鍋をある程度の形にして今日の作業は終え、夕食にする。
と言っても、果実と木の実だけの食事だ。さすがに食い応えという点で物足りないが、獲物が掛からなかったんだから仕方ない。そうして夕食を終えて、水で体を拭く。
『やっぱり風呂が欲しいなあ……』
そう言えば、前世の中世ヨーロッパは、
『水こそが万病の素だ』
的な考えがあって、
『風呂なんかとんでもない!』
みたいな感じだったらしいな。こっちでも、都会なんかはそうなんだろうか? 俺達が住んでる辺りでは、そこまでじゃないが。
ただ、水を飲む時はなるべく沸かして飲むようにというのはあったな。でもそれは、水瓶に水を溜めておいて使うからっていう感じで、湧水とかをそのまま飲む分には気にしてなかった。でも、前世の場合、ヨーロッパの水は<硬水>だから、現代でも煮沸してない生水は飲まない方がいいとは聞いたのは覚えてる。
その辺りがどの程度正確なのか俺は詳しくないが、まあ、水を煮沸するにも鍋はあった方がいいだろうし、あと二~三個作ろうか。
なんてことを思いつつ、リーネと一緒にベッドに横になる。
すると、
「あの……」
おずおずとリーネが声を掛けてきた。
「なんだ……?」
俺も、なるべく穏やかな感じになるように応える。そんな俺に、
「一つ、訊いてもいいですか……?」
彼女から質問が。
「ん……いいぞ…俺に分かることなら答える」
と返す。それを受けて彼女は、
「トニーさんは、どうしてそんなに優しいんですか……?」
と問い掛けてきた。
なんか以前にも同じようなことを訊かれた気がするが、まあいい。
「別に俺は優しくしてるつもりはないけどな……自分がやりたいようにやってるだけだ……」
本当は、前世の自分と比べて優しい感じになるようにと意識してる部分は間違いなくあるんだが、敢えてそう応えた。正直、気取ってしまったのはある。そんな自分に内心では苦笑いしつつ、平静を装った。
その上で、
「ひょっとして、気持ち悪いか? こういうの……」
自分でも実はそんなことを感じていたので、つい訊き返してしまう。が、それに対しては、彼女は、
「いいえ、そんなことないです……!」
俺の方に向き直って言った。
「お…おう、そうか……」
逆に俺の方が戸惑ってしまう。けれどリーネは、
「でも、トニーさんは、他の大人と全然違ってるから、どうしてなんだろうって思ってしまって……」
とも。確かに、俺でもそう思うよ。自分が他の連中と違ってしまってるのが。たぶんこういうのは、ここでは、
『子供に甘い!』
とか、
『軟弱だ!』
とか言われるんだろう。だが、俺は他の連中にムカついてるから、同じにはなりたくないだけなんだ……
それだけなんだよ……
と言っても、果実と木の実だけの食事だ。さすがに食い応えという点で物足りないが、獲物が掛からなかったんだから仕方ない。そうして夕食を終えて、水で体を拭く。
『やっぱり風呂が欲しいなあ……』
そう言えば、前世の中世ヨーロッパは、
『水こそが万病の素だ』
的な考えがあって、
『風呂なんかとんでもない!』
みたいな感じだったらしいな。こっちでも、都会なんかはそうなんだろうか? 俺達が住んでる辺りでは、そこまでじゃないが。
ただ、水を飲む時はなるべく沸かして飲むようにというのはあったな。でもそれは、水瓶に水を溜めておいて使うからっていう感じで、湧水とかをそのまま飲む分には気にしてなかった。でも、前世の場合、ヨーロッパの水は<硬水>だから、現代でも煮沸してない生水は飲まない方がいいとは聞いたのは覚えてる。
その辺りがどの程度正確なのか俺は詳しくないが、まあ、水を煮沸するにも鍋はあった方がいいだろうし、あと二~三個作ろうか。
なんてことを思いつつ、リーネと一緒にベッドに横になる。
すると、
「あの……」
おずおずとリーネが声を掛けてきた。
「なんだ……?」
俺も、なるべく穏やかな感じになるように応える。そんな俺に、
「一つ、訊いてもいいですか……?」
彼女から質問が。
「ん……いいぞ…俺に分かることなら答える」
と返す。それを受けて彼女は、
「トニーさんは、どうしてそんなに優しいんですか……?」
と問い掛けてきた。
なんか以前にも同じようなことを訊かれた気がするが、まあいい。
「別に俺は優しくしてるつもりはないけどな……自分がやりたいようにやってるだけだ……」
本当は、前世の自分と比べて優しい感じになるようにと意識してる部分は間違いなくあるんだが、敢えてそう応えた。正直、気取ってしまったのはある。そんな自分に内心では苦笑いしつつ、平静を装った。
その上で、
「ひょっとして、気持ち悪いか? こういうの……」
自分でも実はそんなことを感じていたので、つい訊き返してしまう。が、それに対しては、彼女は、
「いいえ、そんなことないです……!」
俺の方に向き直って言った。
「お…おう、そうか……」
逆に俺の方が戸惑ってしまう。けれどリーネは、
「でも、トニーさんは、他の大人と全然違ってるから、どうしてなんだろうって思ってしまって……」
とも。確かに、俺でもそう思うよ。自分が他の連中と違ってしまってるのが。たぶんこういうのは、ここでは、
『子供に甘い!』
とか、
『軟弱だ!』
とか言われるんだろう。だが、俺は他の連中にムカついてるから、同じにはなりたくないだけなんだ……
それだけなんだよ……
0
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております
【完結】シナリオに沿ってやり返そうと思います。
as
ファンタジー
乙女ゲームの強制力により婚約破棄を言い渡され、ヒロインが別の攻略対象者を選んだせいで元婚約者と結婚させられたイリーニア。強制力があるなら、シナリオに沿ってやり返してやる!
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
転生幼女具現化スキルでハードな異世界生活
高梨
ファンタジー
ストレス社会、労働社会、希薄な社会、それに揉まれ石化した心で唯一の親友を守って私は死んだ……のだけれども、死後に閻魔に下されたのは願ってもない異世界転生の判決だった。
黒髪ロングのアメジストの眼をもつ美少女転生して、
接客業後遺症の無表情と接客業の武器営業スマイルと、勝手に進んで行く周りにゲンナリしながら彼女は異世界でくらします。考えてるのに最終的にめんどくさくなって突拍子もないことをしでかして周りに振り回されると同じくらい周りを振り回します。
中性パッツン氷帝と黒の『ナンでも?』できる少女の恋愛ファンタジー。平穏は遙か彼方の代物……この物語をどうぞ見届けてくださいませ。
無表情中性おかっぱ王子?、純粋培養王女、オカマ、下働き大好き系国王、考え過ぎて首を落としたまま過ごす医者、女装メイド男の娘。
猫耳獣人なんでもござれ……。
ほの暗い恋愛ありファンタジーの始まります。
R15タグのように15に収まる範囲の描写がありますご注意ください。
そして『ほの暗いです』
伯爵家の次男に転生しましたが、10歳で当主になってしまいました
竹桜
ファンタジー
自動運転の試験車両に轢かれて、死んでしまった主人公は異世界のランガン伯爵家の次男に転生した。
転生後の生活は順調そのものだった。
だが、プライドだけ高い兄が愚かな行為をしてしまった。
その結果、主人公の両親は当主の座を追われ、主人公が10歳で当主になってしまった。
これは10歳で当主になってしまった者の物語だ。
異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。
星の国のマジシャン
ファンタジー
引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。
そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。
本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。
この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる