前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十

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リーネの章

やっぱり風呂が欲しいなあ……

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取り敢えず、鍋をある程度の形にして今日の作業は終え、夕食にする。

と言っても、果実と木の実だけの食事だ。さすがに食い応えという点で物足りないが、獲物が掛からなかったんだから仕方ない。そうして夕食を終えて、水で体を拭く。

『やっぱり風呂が欲しいなあ……』

そう言えば、前世の中世ヨーロッパは、

『水こそが万病の素だ』

的な考えがあって、

『風呂なんかとんでもない!』

みたいな感じだったらしいな。こっちでも、都会なんかはそうなんだろうか? 俺達が住んでる辺りでは、そこまでじゃないが。

ただ、水を飲む時はなるべく沸かして飲むようにというのはあったな。でもそれは、水瓶に水を溜めておいて使うからっていう感じで、湧水とかをそのまま飲む分には気にしてなかった。でも、前世の場合、ヨーロッパの水は<硬水>だから、現代でも煮沸してない生水は飲まない方がいいとは聞いたのは覚えてる。

その辺りがどの程度正確なのか俺は詳しくないが、まあ、水を煮沸するにも鍋はあった方がいいだろうし、あと二~三個作ろうか。

なんてことを思いつつ、リーネと一緒にベッドに横になる。

すると、

「あの……」

おずおずとリーネが声を掛けてきた。

「なんだ……?」

俺も、なるべく穏やかな感じになるように応える。そんな俺に、

「一つ、訊いてもいいですか……?」

彼女から質問が。

「ん……いいぞ…俺に分かることなら答える」

と返す。それを受けて彼女は、

「トニーさんは、どうしてそんなに優しいんですか……?」

と問い掛けてきた。

なんか以前にも同じようなことを訊かれた気がするが、まあいい。

「別に俺は優しくしてるつもりはないけどな……自分がやりたいようにやってるだけだ……」

本当は、前世の自分と比べて優しい感じになるようにと意識してる部分は間違いなくあるんだが、敢えてそう応えた。正直、気取ってしまったのはある。そんな自分に内心では苦笑いしつつ、平静を装った。

その上で、

「ひょっとして、気持ち悪いか? こういうの……」

自分でも実はそんなことを感じていたので、つい訊き返してしまう。が、それに対しては、彼女は、

「いいえ、そんなことないです……!」

俺の方に向き直って言った。

「お…おう、そうか……」

逆に俺の方が戸惑ってしまう。けれどリーネは、

「でも、トニーさんは、他の大人と全然違ってるから、どうしてなんだろうって思ってしまって……」

とも。確かに、俺でもそう思うよ。自分が他の連中と違ってしまってるのが。たぶんこういうのは、ここでは、

『子供に甘い!』

とか、

『軟弱だ!』

とか言われるんだろう。だが、俺は他の連中にムカついてるから、同じにはなりたくないだけなんだ……

それだけなんだよ……

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