前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十

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リーネの章

生活サイクル

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朝、夜が明けたらまた目が覚めた。すっかり身に付いた生活サイクルだ。ネットもなけりゃテレビもない。日が暮れたら起きてる意味がない世界じゃこんなもんだ。

まあ、その分、<相手>がいりゃ、お楽しみもできるんだろうけどな。で、子供ができると。

だが、こんな世の中に勝手に送り出されるとか、マジで最低だな。そりゃ、

『生んでくれなんて頼んでない!』

と言いたくもなるだろう。

しかし、生まれてきてしまったものは仕方ない。

『リーネには生まれてきたことを後悔してほしくないな……』

朝のなんとも澄んだ空気の中、そんなことを考える。それと同時に、

『風呂…作りてえなあ……』

とも脈絡なく思ってしまった。湯を沸かすのはともかく、湯船も水道もないけどな。

さて、どうしようか。

が、まずは草刈り用の鎌を仕上げないと。刃をのこぎり状に加工するための道具は今のところないので、普通のナイフ状にする。その上で、柄をしっかりと掴んで手前に引くだけで切れるように。

そうして俺が鎌の刃を研いでいるところに、

「おはようございます」

と、リーネが起きてきた。

「おはようさん」

俺も応えて、二人で朝食にする。

そして朝食を終えてすぐ、水汲みの用意を始めた彼女に、

「気を付けてな」

声を掛けた。

「はい、行ってきます」

応えたリーネの表情が柔らかい。気分が安定してる証拠だろう。それを見て俺もホッとする。

そうだよな。こういう穏やかな表情をしてくれてた方がこっちも安らいだ気持ちになれるよな。なんで前世の俺はそんなことにも気付かなかったんだか……

たぶん、俺がいつも不愉快そうな表情をしてたから、女房も娘もいい気がしなかったんだろう。いい気がしないから表情も険しくなる。で、女房や娘の表情が険しいから俺もますます不愉快になってしまう。

典型的な悪循環だ。ここでどっちかが穏やかな表情でいることを心掛ければまだマシだったのかもしれないが、俺も女房も、お互いに相手が先にそうしてくれるのが当たり前だと思ってて、自分からはやるつもりがまったくなかったんだ。

実に幼稚だよ。

『相手が険しい顔をしてるから自分も』

なんて、ただ『相手の所為』にしてるだけじゃないか。そこで敢えて自分から穏やかな表情をすることを心掛ければいいのに、

『自分からそれをするのは損だ!』

とか考えて。やれやれだ。

女房が先にやってくれればいいと望んでも、それをやろうとしない女を選んだのは、他でもない俺だしなあ。

相手に文句言うのは勝手だが、その相手を選んだのは誰だ? って話だと、今なら分かる。

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