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リーネの章
こんなことで泣くような奴は要らない!
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『泣くのをやめろ! うるさい! こんなことで泣くような奴は要らない!』
三歳とか四歳の子供相手にそんな風にイキる奴が、カッコいいか? まあ、本人は、と言うか前世の俺自身は、
『子供をきちんと躾けられる俺、カッコイー!』
と思ってたけどな。間違いなく。
だが、今、前世の俺を振り返った時、
『ダセぇ……超絶ダセぇ……』
としか思えないんだよ。自分より強い相手には頭を下げて、弱い相手にイキがって、それのどこが『カッコいい』んだ? 冗談もほどほどにしろってんだ。
強い相手に強く出られないなら、弱い相手にも丁寧に接しろってんだよな。
……まあ、今の俺がリーネに対して丁寧に接してられてるかと言われれば、疑問符しかないが……
そうしてリーネが水汲みに出ている間、俺はさらに罠を仕掛けては杭を立てていった。
ここに来る途中で採ってきた果実や木の実も残り少ない。改めて採ってくる必要がある。
家さえあれば生活できるわけじゃないんだよな。あと、やっぱり風呂も欲しい。それについては後回しになるとしても。
そうこうしている間にリーネが水を汲んできてくれて、今日の分の水汲みは終わった。
すると彼女は、
「木の実とか、採ってきます」
と告げてきた。残り少ないのを分かってたからだろうな。
それに対して、俺は、
「分かった。でも、家が見える場所だけにしておけ。あと、果実を採ってる間、これを家から見えるように枝に縛り付けとけ。リーネがどこにいるか俺からも分かるようにしておいてほしいんだ」
と言いつつ、なるべく白っぽい布を渡した。
「あ、はい。分かりました」
彼女は少し戸惑いながらも布を受け取って、果実や木の実を入れるための桶も手に森に入っていった。
俺は、罠を作りながらも彼女の姿を目で追って、そして彼女が、立ち止まって木の枝に布を縛り付けるのを確認した。果実を見付けて、そこで採取しようとしてるんだ。
『よしよし、それでいい』
十分に俺からも彼女の姿が見える場所だったものの言われたとおりにしてくれるリーネに、ホッとする。
が、そこでの採取を終えたらしい彼女が次の場所に移る時、枝に縛り付けた布をそのままにしていこうとしたので、
「リーネ! 布! 布を忘れてる! それはお前がどこにいるのか俺が見るためのものなんだから、お前の傍に縛り付けておかないと意味がない!」
大声で話しかけた。
「あ…! はい! ごめんなさい!」
まだ彼女の表情が十分に分かる程度の距離だったから、ハッとなるのが見て取れた。どうやら、俺の言ったことが十分に伝わってなかったようだ。
リーネは利口な子だと思うが、そんな彼女でもこういうことはある。指示がちゃんと伝わってるかどうかを確認するのは大事だと思い知らされたな。
三歳とか四歳の子供相手にそんな風にイキる奴が、カッコいいか? まあ、本人は、と言うか前世の俺自身は、
『子供をきちんと躾けられる俺、カッコイー!』
と思ってたけどな。間違いなく。
だが、今、前世の俺を振り返った時、
『ダセぇ……超絶ダセぇ……』
としか思えないんだよ。自分より強い相手には頭を下げて、弱い相手にイキがって、それのどこが『カッコいい』んだ? 冗談もほどほどにしろってんだ。
強い相手に強く出られないなら、弱い相手にも丁寧に接しろってんだよな。
……まあ、今の俺がリーネに対して丁寧に接してられてるかと言われれば、疑問符しかないが……
そうしてリーネが水汲みに出ている間、俺はさらに罠を仕掛けては杭を立てていった。
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家さえあれば生活できるわけじゃないんだよな。あと、やっぱり風呂も欲しい。それについては後回しになるとしても。
そうこうしている間にリーネが水を汲んできてくれて、今日の分の水汲みは終わった。
すると彼女は、
「木の実とか、採ってきます」
と告げてきた。残り少ないのを分かってたからだろうな。
それに対して、俺は、
「分かった。でも、家が見える場所だけにしておけ。あと、果実を採ってる間、これを家から見えるように枝に縛り付けとけ。リーネがどこにいるか俺からも分かるようにしておいてほしいんだ」
と言いつつ、なるべく白っぽい布を渡した。
「あ、はい。分かりました」
彼女は少し戸惑いながらも布を受け取って、果実や木の実を入れるための桶も手に森に入っていった。
俺は、罠を作りながらも彼女の姿を目で追って、そして彼女が、立ち止まって木の枝に布を縛り付けるのを確認した。果実を見付けて、そこで採取しようとしてるんだ。
『よしよし、それでいい』
十分に俺からも彼女の姿が見える場所だったものの言われたとおりにしてくれるリーネに、ホッとする。
が、そこでの採取を終えたらしい彼女が次の場所に移る時、枝に縛り付けた布をそのままにしていこうとしたので、
「リーネ! 布! 布を忘れてる! それはお前がどこにいるのか俺が見るためのものなんだから、お前の傍に縛り付けておかないと意味がない!」
大声で話しかけた。
「あ…! はい! ごめんなさい!」
まだ彼女の表情が十分に分かる程度の距離だったから、ハッとなるのが見て取れた。どうやら、俺の言ったことが十分に伝わってなかったようだ。
リーネは利口な子だと思うが、そんな彼女でもこういうことはある。指示がちゃんと伝わってるかどうかを確認するのは大事だと思い知らされたな。
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