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リーネの章

天秤棒

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こうして<ウサギ肉の串焼き>と果実とで夕食にし、また体を拭いて、寝る。

一つのベッドで隣り合ってるが、リーネに嫌がってる様子はない。さすがに触れてはこないけどな。

でも、それでいい。今は彼女が安心して眠れればそれでいいんだ。



翌朝も、夜が明けると同時に目が覚めた。鳥の鳴き声が五月蝿い。

リーネはまだ寝てるが、子供だし、別にいいだろう。

そうして俺は早速、作りかけの天秤棒の完成を急いだ。もう二日目だから傷も治ってきてるかもしれないものの、それとは別に。

取り敢えず形にはなったところで、両方の桶に水を入れて担いでみる。

『…痛ぇ……』

片方の肩に担ぐと天秤棒が思い切り肉に食い込んで痛い、容赦なく痛い。

『クソ……!』

また失敗か?とも考えたが、ふと思い立ち、両肩で担ぐ形にして両手を引っ掛けてみると、痛みはかなりマシになった。

『おお……!』

悪くないが、まだ痛いな。だから今度は布を巻いてクッションにする。

『よっしゃ! いい感じだ。これなら』

と思ったところに、

「おはようございます」

リーネが起きてきた。

「お、おお! おはよう」

不意を突かれて少し驚いてしまったが、まあいい。とにかく、昨日の肉の残りと果実で朝食にして、まず、

「今度は天秤棒にしてみた。取り敢えず一緒にいってみよう」

内心、ちょっとばかり浮かれつつ、天秤棒を担いで水汲みに出る。

空の桶に天秤棒だけだと、まったく問題なかった。足下さえ気を付ければ、ネコ車よりずっと楽だ。

そして水を汲んで、坂道を上る。さすがに重いが、やっぱりネコ車よりも確実だ。もちろん、二杯分の桶を担いでるから大変なのは大変でも、安定感が違う。

で、俺が二杯分の水を汲んで上がったから、

「俺は大人だから桶いっぱいに水を汲めたが、リーネは半分ずつでいい。無理せずに休み休みでいいからな」

そう言って送り出した。

「はい、ありがとうございます!」

リーネの笑顔が眩しい。

そうだ。前世の俺は、娘のこんな笑顔を見た覚えがない。それどころか、ぐずって泣く娘に、

「泣くのをやめろ! うるさい! こんなことで泣くような奴は要らない!」

とかなんとか言ってしまったことがある。娘がまだ三歳とか四歳だった頃だ。自分より確実に弱い相手にこの言い草。反撃されない、反撃されてもまったく怖くないのが分かってるからそれが言えたんだ。自分より間違いなく強くて、しかも容赦なく殴りかかってくるのが分かってる相手にこの調子で怒鳴れるか?

少なくとも俺は言えなかった。

つまり前世の俺は、やっぱり、自分より弱い(立場も含めて)相手にしかイキがれない奴だったということだ。

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