前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十

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リーネの章

アイデア

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リーネは、桶を手に、水汲みへと向かった。一方の俺は、今日はまず、家の周囲に罠を仕掛ける。獣を捕えるためと、近付けさせないためだ。

そうして罠を準備していると、リーネが一回目の水汲みから戻ってきた。昨日汲んだ分がかなり残ってたから今日は少なくて済むと思うが、それでも大変だろう。と思ったら、彼女は顔を歪ませながら桶を運んでいた。

「あ……」

そこで俺はようやく察した。

「おい、リーネ、手を見せて見ろ…!」

俺は罠作りを中断して彼女の下に駆け寄った。そして渋る彼女の手を取って見ると、

「そりゃ、こうなるよな……」

桶を運んできたことで昨日の傷が開いたらしく、また血がにじんでいた。

「やっぱり、今日はやめとけ。部屋で休んでろ」

俺はそう言うが、彼女は、

「でも、水汲みしないと……」

まだそんなことを言う。おとなしいクセに強情な奴だ。だがそれは、結局、リーネが俺との生活で自分も役に立ちたいと思ってくれてる証拠でもある。俺だったら、『休んでていい』なんてあのクソ親に言われたら喜んで休んだだろう。本音では奴らのためになんか働きたくないからな。

とは言え、同時にこれは、

『言われたとおりに休んだら今度はまた何か理由を付けて怒鳴られたりするかもしれない』

なんてことを勘ぐってしまう状況でもある。彼女はそれを心配してるんだろうか?

……いや、彼女の表情を見るに、そんな感じでもない気がする。単純に、

『自分だけ休んでるなんて申し訳ない』

と考えてる表情だと思う。

まあ、それがどちらにせよ、おとなしく休んではいられないってことなら、

「じゃあ、こうすれば少しはマシになるだろ……」

俺は仕方なく、桶の持ち手に布を巻いて、クッションにした。あまり太くすると今度は逆に持ちにくいはずだから、彼女の手の大きさを考慮に入れてだが。

その上でリーネに持ってもらって、

「あ、すごく持ちやすくなりました…!」

彼女の表情が明るくなるのを確認して、

「とにかく、今日のところはこれで頼む。明日以降はまた何か考える。でも、無理はしなくていい。分かったな?」

そう言って送り出した。

それから罠の準備を再開。罠を作りながら、どうすれば水汲みが楽になるだろうかと考える。

『ロープウェイみたいにロープに桶を吊るして水場まで……って、そんな丈夫で精度の高いロープなんかどこで手に入れんだよ。しかも機構の精度も求められるだろ。技術的に無理がある。却下』

続けて、

『山の斜面に沿っていくつも木枠の水路を作って、それらに水車で水を汲み上げて順に揚水するか……って、さすがに手間がかかりすぎる。完成がいつになるか分かりゃしない。却下』

などと、アイデアを練ったのだった。

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