45 / 398
リーネの章
また人生やり直そうなんて
しおりを挟む
でも、その<当たり前>ってやつは、実は、
<甘えたい奴の言い訳>
でしかないことも、前世を客観的に振り返ることのできる今の俺には分かってしまう。なにしろ俺自身、
『当たり前だろ!』
って言葉を散々口にしてきたからな。自分が楽をする言い訳のために。リーネみたいなお人好しのガキがこんな風に手を傷だらけにして血塗れにしてやらなきゃいけない<当たり前>ってなんだ? 大人が草引きを子供にやらせるのは、自分が面倒臭いからじゃねえか。それを<当たり前>って言葉で誤魔化してるだけでしかねえ。
とは言え、現に俺が鍛冶の仕事を本格的に再開したら、水汲みも草引きもやってる暇はねえだろう。リーネにやってもらうしかないのは確かだ。だが、こんなふうに手を傷だらけにしてまでする必要はねえ。
土中には、やべえ細菌も普通にいることがあるってのは、俺も聞いたことがある。だとしたら、するにしたってなるべく怪我をしないようにしてもらうのが大事じゃねえか。
「すまねえな。頑張ってくれてありがとうよ。しっかり手を洗って綺麗にして、メシにしよう……」
俺はリーネの手の土を掃いながらそう言った。
「はい…」
リーネも、手が痛いんだろうな。少し顔を歪ませながら応える。
そして、俺とリーネは、手を洗って、ここに来るまでに採ってきた果実や木の実で夕食にした。
それから、水で濡らした布で、それぞれ、体を拭く。お互いに背を向けてなるべく見ないようにして。
この辺りも、『子供だから』ってあんまりデリカシーのないことをするのはどうかなと俺も思う。何しろ、前世で娘が小学生の頃、まだ風呂に入ってたところに俺も入っていって、
「なんだよ! まだ入ってるだろ!」
って怒られたことがあったな。なのに俺は、
「うるせぇ! 生理も始まってねえガキがいっちょまえに色気づいてんじゃねえよ! ここは俺の家だ、俺がいつ風呂に入ろうが俺の勝手だ! お前は俺の家に住まわせてもらってるだけなんだからよ! 身の程をわきまえろ!」
とか、言っちまってたなあ……
『俺の家に住まわせてもらってる』って、娘にしたって別に好き好んで俺の子供として生まれてきたわけじゃねえよな。俺が勝手に、世間体ってもんを考えて家庭を作ろうとしただけで、要するに、俺の体裁を整えるための『小道具として』女房に生ませただけで、娘は俺のところになんて生まれたくなかったよな。
俺も、今の両親のところになんざ生まれたくなかったぜ。それどころか、生まれてくること自体、望んでなかった。
死にたくはなかったが、全部リセットしてまた人生やり直そうなんて思ってなかったよ。
せっかく<年長者>になったんだしよ。
<甘えたい奴の言い訳>
でしかないことも、前世を客観的に振り返ることのできる今の俺には分かってしまう。なにしろ俺自身、
『当たり前だろ!』
って言葉を散々口にしてきたからな。自分が楽をする言い訳のために。リーネみたいなお人好しのガキがこんな風に手を傷だらけにして血塗れにしてやらなきゃいけない<当たり前>ってなんだ? 大人が草引きを子供にやらせるのは、自分が面倒臭いからじゃねえか。それを<当たり前>って言葉で誤魔化してるだけでしかねえ。
とは言え、現に俺が鍛冶の仕事を本格的に再開したら、水汲みも草引きもやってる暇はねえだろう。リーネにやってもらうしかないのは確かだ。だが、こんなふうに手を傷だらけにしてまでする必要はねえ。
土中には、やべえ細菌も普通にいることがあるってのは、俺も聞いたことがある。だとしたら、するにしたってなるべく怪我をしないようにしてもらうのが大事じゃねえか。
「すまねえな。頑張ってくれてありがとうよ。しっかり手を洗って綺麗にして、メシにしよう……」
俺はリーネの手の土を掃いながらそう言った。
「はい…」
リーネも、手が痛いんだろうな。少し顔を歪ませながら応える。
そして、俺とリーネは、手を洗って、ここに来るまでに採ってきた果実や木の実で夕食にした。
それから、水で濡らした布で、それぞれ、体を拭く。お互いに背を向けてなるべく見ないようにして。
この辺りも、『子供だから』ってあんまりデリカシーのないことをするのはどうかなと俺も思う。何しろ、前世で娘が小学生の頃、まだ風呂に入ってたところに俺も入っていって、
「なんだよ! まだ入ってるだろ!」
って怒られたことがあったな。なのに俺は、
「うるせぇ! 生理も始まってねえガキがいっちょまえに色気づいてんじゃねえよ! ここは俺の家だ、俺がいつ風呂に入ろうが俺の勝手だ! お前は俺の家に住まわせてもらってるだけなんだからよ! 身の程をわきまえろ!」
とか、言っちまってたなあ……
『俺の家に住まわせてもらってる』って、娘にしたって別に好き好んで俺の子供として生まれてきたわけじゃねえよな。俺が勝手に、世間体ってもんを考えて家庭を作ろうとしただけで、要するに、俺の体裁を整えるための『小道具として』女房に生ませただけで、娘は俺のところになんて生まれたくなかったよな。
俺も、今の両親のところになんざ生まれたくなかったぜ。それどころか、生まれてくること自体、望んでなかった。
死にたくはなかったが、全部リセットしてまた人生やり直そうなんて思ってなかったよ。
せっかく<年長者>になったんだしよ。
0
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる