前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十

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リーネの章

いい頃合いってのを

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こうしてひたすら鉄を打ってると、

「あの……次は何をしたら……?」

リーネがそんなことを尋ねてきた。

「あ…? ああ…え~と……庭の草引きでもやっててくれ…!」

咄嗟に思い付かなくてそう言った。

「分かりました!」

応えた彼女の声が少し弾んでる感じだったのは、気のせいだろうか? いや、気のせいじゃないかもしれない。散々、大人にこき使われてきたから、のんびりと時間を浪費するということに、逆に不安を感じるんだろう。

本当に言われなきゃ何もできない奴は、ここの時点で、

『次は何をすればいいですか?』

ってことすら訊いてこない。『次に何かをしなきゃならない』って考えが頭に浮かばなくて、『言われなきゃ何もしなくていい』って考えるんだ。

実に怠惰だな。だから、リーネが訊いてきたことに対して、

『言われなきゃ何もできねえのか!?』

的なことは言わねえ。むしろ訊いてくるだけ上等なんだ。『何かしなきゃ』って思ってくれてるんだからな。

だが前世の俺は、『言われなきゃ何もできねえのか!?』ってガッツリ言っちまってたなあ……そりゃ嫌われるってもんだろ。

そんなことを思い出しながらもさらに鉄を打ち、伸ばし、それを折りたたんで熱して、また打つ。こうして硬さと粘りを両立させていくんだ。これを四回繰り返す。

日本刀なんかだと十回以上繰り返すようなことを聞いた覚えがあるが、正直、頭がおかしいと思う。日常的に使う程度のナイフならそこまでする必要もないし、俺が自分で使ってるものだって、四回で十分に実用的なものになってる。

ただ、俺は、この時に、鉄、と言うか<はがね>だな、の質の見極めが甘いんだろうなと思ってる。だから父親に敵わない。現在日本でなら測定方法やらが確立されてて数値で確認できるんだろうが、ここにはそんなものはねえ。職人の勘がすべてだ。

とは言え、一応、鎚で打った時の火花の飛び方やその形である程度は分かるらしいものの、いやいや、その違いが分かるようになるにはやっぱり経験が必要なんだよ。素人には、言われたって違いなんてほとんど分からないだろうしな。

となりゃ、とにかく自分で打って打って打ちまくって掴んでいくしかねえんだ。それでもなお、いい頃合いってのを掴めなきゃいつまで経っても二流どまりってことなんだろうって実感する。

そこが掴めるかどうかってのも、要するに<才能>なんだろうな。ある程度のレベルまでなら努力だけでも達することができるが、その先は、ってことだ。

父親のレベル程度までは至りたいが、それが叶わなきゃ、俺はあのクソ野郎にも劣ってるってことでもある。

それはムカつくぜ。

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