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リーネの章

ちょっとデリカシーが

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こうしてリーネと一緒に再び夜を迎える。周囲に罠を仕掛け、山の斜面で落ち葉に埋もれて眠る。と言っても、やはりナイフを手にして熟睡はできなかったが。

些細な物音に何度も眠りが浅くなってナイフを握りなおす。リーネは、子供らしい深い眠りについてるようだ。それに俺もホッとする。

そして今度は何事もなく朝を迎え、

「どうだ? 寝小便は?」

リーネに尋ねると、彼女は恥ずかしそうに、

「はい、大丈夫です……」

と応えた。尋ねてから、

『いかん、ちょっとデリカシーがなかったかな』

などと思ってしまったが、口にしたものは取り消せないので、次から気を付けなきゃと考える。

沢の水で顔を洗い、改めて上流を目指す。リーネの足に合わせて、ゆっくりと、確実に。

足場の悪いところでは、俺が手を差し伸べて、彼女を支える。その俺の手を握る力が、しっかりしてきてる気がする。一昨日は、触れることがあっても本当に仕方なくという感じだったしな。

そうして遂に、岩の下から水が湧き出してるだけの場所まで来た。ここからは一気に尾根を越えて集落を目指すことになる。なので、無理はせず、水を確保できるこの場所でさらに休んで翌朝に出発することにした。今からだと確実に水のないところで野宿することになるしな。リーネを連れてる以上はあんまりな強行軍は避けたい。

ただ今度は、果実しか手に入れられなかった。でもまあ、それなりに腹は満たせたから良しとするか。



だが、翌日、

「マズいな……雨になりそうだ」

空には、分厚い雲。むしろここまで晴天が続いたことが幸運だったか。なのでやはり無理はせず、今日は雨をやり過ごすことにする。リーネにも手伝ってもらって、水源の辺りに生えていた葉の大きな草をナイフで刈って集めて木の枝に重ねていく。簡易の屋根だ。雨漏りはするだろうが、そのまま雨に打たれるよりはマシだ。

こうしているうちにもポツポツ雨が降り始める。

「急ぐぞ」

「はい…!」

俺が声を掛けると、彼女もはっきりと返事をしてくれて、頑張ってくれる。それがすごく頼もしい。

つくづく、頑張り屋ないい子じゃないか。

そんなこんなで、本降りになるまでには何とか雨をしのげる簡易のテントが出来上がった。

足元には岩があるから、その上に足を乗せておけば、そんなに濡れない。寛ぐまではできなくても、悪くない感じだ。

やがて雨は、ざあざあと結構激しいものになってきた。そんな雨音に包まれながら、俺は、岩の上に座りリーネを膝に抱いて、彼女の体温と呼吸と鼓動を感じていたのだった。

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