前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十

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リーネの章

なんの罰ゲームだよ

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水が冷たくて手がかじかんでイヤになってくるのを誤魔化すためにいろいろ考える。

村にいた時には、俺と結婚してもいいって言ってくれる女がいた。見た目もそんなに悪くねえし、子供の頃から家の仕事をやらされてきたから、当然、その辺もばっちりだ。

ただし、あの連中の中で育ったヤツだからな。今はまだ可愛いふりしてるが、子供を生めば豹変するのは目に見えてる。ちょっと気に入らないことがあれば悪態吐いて喚き散らして、下手すりゃ包丁振り回すようなのになるだろう。

しかも、子供相手でも容赦はねえ。怒鳴り殴り張り飛ばし、次の子を孕んで腹が大きくなってくりゃ、子供に尻まで拭かせるようになったりするぞ。何しろ俺も、あのクソ母親の尻を拭かされたからな。

そこまでして生まれた弟は、まだ赤ん坊のうちに熱病(はしかか何かか?)で呆気なく死んだ。ちなみに兄と姉がいるが、とっくに家を出て、実は村の連中が避難先として向かってる先の村に住んでるはずなんだ。それを頼って向かってたわけだな。

とは言え、あっちも、内心じゃ顔も合わせたくなかっただろうなって気はするけどな。俺が兄や姉の立場なら間違いなくそう感じる。たとえ、露骨に態度には出さなくても、余裕でそう思う。

考えてみりゃ、前世の女房も、きっと俺の実家とかに行く時には同じようなことを感じていたって気がしてくるな。実の親と義理の親じゃまた違うかもしれないが、

『本当は顔も見たくないが露骨にそれは表に出せない』

って意味じゃ似たようなものって気はする。

正直なところ、俺も実の両親となんて別に顔を合わせたいわけじゃなかったし。だから女房にやらせてたんだよ。

はは……そりゃ嫌がられるわ。

実の息子のはずである旦那でさえ本心じゃ顔を合わせたいとか思ってねえ義理の親のご機嫌取りとか、なんの罰ゲームだよ。



なんてことを考えてるうちに取り敢えず洗い終えて絞り、日当たりのいい木の枝に掛けて干す。天気もいいし気温自体はそこそこ上がってきてるから日が暮れるまでには乾くだろ。加えて、川原に落ち葉を集めてそこに今度は俺が火を熾す。かじかんだ手を温めたかったしな。

そうして手を温めると、今度は山に入って、また、ザクロに似た果実を採る。イノシシの肉をいくらか持ってきても良かったんだが、まあ、また罠を仕掛けりゃなんか採れるだろ。その程度には豊かなんだよ。この辺は。

おっと、また野イチゴがあった。他にも、ブルーベリーに似たものも。

そうして果実を集めて、俺はリーネのところに戻ったのだった。

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