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リーネの章

自分の迂闊さに腹が立つ

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そんなこんなで、沢が見える場所をとにかく上流へ上流へと向かって、俺とリーネは移動した。

しかし、二十歳の絶頂期の体を持つ俺と比べると、リーネはとにかく頼りない。体力もない。

『子供の体力は無限だ』

みたいなことを前世でもよく聞いたが、いやいや、自分が興味あること、熱中してることに対しては、異様に集中力を発揮して疲れを感じていないだけで、体力そのものがあるわけじゃないと思うぞ。だから、突然、電池が切れたみたいに眠ったりするんじゃないだろうか。

今のリーネにとっても、この強行軍が楽しいもののはずもなく、そりゃ辛いよな。って話だ。

だから、今度は、ザクロに似た果実が成ってるところで、

「一休みするか」

と声を掛けた。

「……はい……」

返事にも力がない。相当、バテているな、これは。ザクロに似た果実をもいで、リーネに渡す。

さすがにもう、遠慮せず食ってくれるようになった。いや、遠慮する気力もない感じだろうか。

「それを食べたら少し眠れ。体力を回復させろ。それからまた進もう」

俺は、少しずつ果実を食べている彼女にそう命令した。

「……はい……」

やっぱり元気がない。ないが、俺もどうすることもできないからな。



果実を食べたリーネは、山の斜面の、落ち葉が積もった上にそのまま横になって、本当に眠ってしまった。

だが、その寝顔を見ていて、俺はふと違和感を覚えた。

『顔が、赤い……?』

泥と埃で汚れてたから分かり難かったが、近付いてよく見ると顔が赤いのが分かった。

『まさか……?』

そう思ってそっと頬に触れると、

『熱い……? 熱があるのか?』

間違いなかった。勘違いなんてしようがいないくらいの熱があった。

『くそ…っ! なんで気付かなかった……!?』

自分の迂闊さに腹が立つ。考えてみればかなり前から様子がおかしかったじゃないか。それを無理してついてきてくれてたんだ。

『ああもう……っ!』

声には出さずバリバリと頭を搔いて苛立ちを紛らわせる。しかし、苛々したってリーネの熱が下がるわけじゃない。

時期的に今はそんなに寒くないが、もしこのまま熱が下がらずに夜になれば、さすがに冷えてくるはずだ。だから俺は、周囲の落ち葉や枯草をかき集め、リーネの体にかけてやった。なるべく厚く。

すると、こんもりと山の斜面に瘤のような膨らみができた。これで寒くはないだろう。

あとは、できれば水分だな。

とにかく、目についた果実で手が届く範囲にあるのを、枝がついた状態でありったけ集めて、それらを、草を紐代わりにして縛って、近くの枝に吊るしておいた。こうしておけば分かりやすいし、地面に置くよりは虫とかも付きにくいだろ。

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