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外伝
予備校
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こうして、臣民らが住む区域にある方の<学校>を訪問した後、今度は高さ十メートルの頑強な<城壁>を超えて、賤民らが暮らす区域にある<予備校>へと三人は向かった。
そこは、しっかりと整備され美しい街並みが並ぶ、臣民達の住む区画とは違い、明らかに無計画にその場の思い付きで次々と作られていったのが分かる、ほぼ<スラム街>同然の町だった。というのも、本来この<王都ルデニオン>は、<城壁>の内側のみを指し、賤民らが暮らす壁の外側は、彼らが勝手に住み着いたことで次第に大きくなっていっただけのそれなのだ。
勝手に住み着くのを許す代わりに、いわゆる<肉の壁>として有事の際の役目を与えているというのが実際のところだった。事実、魔王が生み出した<デモニューマ>と呼ばれる怪物の襲撃はここ賤民の区画で食い止められ、城壁の上に設置された<大型弩砲>で砲撃、賤民もろとも撃破するという戦術が取られていた。
ただしその代わりに城壁内に整備された上下水道は外側にも延伸され、賤民も自由に利用できた。ゆえに自分達の役目を知りつつ住み着く者は後を絶たなかったのである。加えて、<産品の買取>と、たまに出る<求人>とを目当てにというのもあった。
ベル・ルデニオーラはそのような仕組みで成り立っている国だった。
とは言え、賤民が臣民として城壁内に住めるようになるのは先にも触れたようにハードルは決して低くなかった。何しろ、何をどう努力すれば召し上げてもらえるのかがまったく示されていなかったのだ。だからほとんど偶然のような確率に賭けるしかなかった。そんな賤民達に道筋を示してくれたのが、新たに設置された<予備校>である。
さすがに建物は粗末であはあるものの新たに作られたもので、こちらには現在、男女合わせて三十余名の生徒が通っている。無償で通えるとはいえ、子供といえど労働力として利用されているため、子供をわざわざ<予備校>に通わせる決断ができる親は決して多くないからだ。
また、親世代にはあまりにも狭き門だったことで、とても信じられないという思い込みが強くあるのだと見られている。
けれどこの一年で十人が新たに臣民として生きることを許された。その事実に、徐々に生徒の数は増えているという。
そしてここでも、
「ようこそ! レイラ様、パティリエカ様、シェイナ様!」
と、熱烈な歓迎を受け、特にシェイナはやはり少女達の憧れの的であり、輝くような笑顔で取り囲まれた。
「シェイナ様はどのようなお仕事をなさっているのですか!?」
「シェイナ様はどのような勉強をなされたのですか!?」
新たに<予備校>通うようになった生徒からは必ずと言っていいほどそう問い掛けられたのであった。
そこは、しっかりと整備され美しい街並みが並ぶ、臣民達の住む区画とは違い、明らかに無計画にその場の思い付きで次々と作られていったのが分かる、ほぼ<スラム街>同然の町だった。というのも、本来この<王都ルデニオン>は、<城壁>の内側のみを指し、賤民らが暮らす壁の外側は、彼らが勝手に住み着いたことで次第に大きくなっていっただけのそれなのだ。
勝手に住み着くのを許す代わりに、いわゆる<肉の壁>として有事の際の役目を与えているというのが実際のところだった。事実、魔王が生み出した<デモニューマ>と呼ばれる怪物の襲撃はここ賤民の区画で食い止められ、城壁の上に設置された<大型弩砲>で砲撃、賤民もろとも撃破するという戦術が取られていた。
ただしその代わりに城壁内に整備された上下水道は外側にも延伸され、賤民も自由に利用できた。ゆえに自分達の役目を知りつつ住み着く者は後を絶たなかったのである。加えて、<産品の買取>と、たまに出る<求人>とを目当てにというのもあった。
ベル・ルデニオーラはそのような仕組みで成り立っている国だった。
とは言え、賤民が臣民として城壁内に住めるようになるのは先にも触れたようにハードルは決して低くなかった。何しろ、何をどう努力すれば召し上げてもらえるのかがまったく示されていなかったのだ。だからほとんど偶然のような確率に賭けるしかなかった。そんな賤民達に道筋を示してくれたのが、新たに設置された<予備校>である。
さすがに建物は粗末であはあるものの新たに作られたもので、こちらには現在、男女合わせて三十余名の生徒が通っている。無償で通えるとはいえ、子供といえど労働力として利用されているため、子供をわざわざ<予備校>に通わせる決断ができる親は決して多くないからだ。
また、親世代にはあまりにも狭き門だったことで、とても信じられないという思い込みが強くあるのだと見られている。
けれどこの一年で十人が新たに臣民として生きることを許された。その事実に、徐々に生徒の数は増えているという。
そしてここでも、
「ようこそ! レイラ様、パティリエカ様、シェイナ様!」
と、熱烈な歓迎を受け、特にシェイナはやはり少女達の憧れの的であり、輝くような笑顔で取り囲まれた。
「シェイナ様はどのようなお仕事をなさっているのですか!?」
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新たに<予備校>通うようになった生徒からは必ずと言っていいほどそう問い掛けられたのであった。
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