異世界転移したロボ娘が、バッテリーが尽きるまでの一ヶ月で世界を救っちゃう物語

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
101 / 108
レイラ

エピローグ

しおりを挟む
こうして魔王を倒し帰還した<英雄>を、<ベル・ルデニオーラ>を挙げて盛大に出迎えた。もっとも、レイラ自身は起き上がることさえできない状態ないので、彼女のために設えた<台>に、斜めに寝そべる形で固定した状態で凱旋パレードが行われたのだが。

臣民も賎民も関係なく惜しみない賛辞を彼女に送り、レイラも、穏やかな笑みでそれを受け入れた。もちろん、彼女が魔王との戦いにより体が不自由になってしまったことについては知らされている。だからこそ、そこまでして自分達を救ってくれた英雄に心から感謝しているのだ。



そしてパレードを終え、凱旋を祝う盛大なパーティも終え、レイラは、屋敷へと帰ってきた。

ただし、太陽電池パネルからの給電を受けられない状況ではスリープモードに入ってしまうので、今は眠っているようにも見える。

すると、代わりに静香が告げた。

「今のこれだと、レイラを完全に回復させることはできないんだ。だから、レイラから、彼女を完全に回復させるための方法を、私は教わった。そのために必要なものをこれから揃える。正直、何年もかかると思う。だけど、レイラから教わった通りにやれば必ず成功する。みんなにも協力をお願いしたい」

と。まだ流暢とは言い難いものの、かろうじて意味が酌み取れる言葉で。

そう。レイラは、それに必要な情報を、彼女のスマホに転送していたのである。

それは、水車を用いた発電機を作り、充電するというものだった。

とは言え、すべてをゼロから作り上げることになるので、決して容易なことではない。静香も、ここの人間達に比べれば多少は知識があるとはいっても、決して技術者ではない。きっと試行錯誤の連続になるだろう。なお、そのための資金はレイラに支払われた褒賞の一部を充てる予定だ。

『レイラ自身が先に作ればよかったのでは?』と思う者もいるかもしれない。しかし、その完成を待っている間にどれだけの被害が出るかと考えた時、彼女にはそちらを優先することはできなかったのだ。

それに、

「私も手伝います! レイラ様を必ずお救いします……!」

強い意志がこもった眼差しで、シェイナはそう告げた。

「もちろん私も、協力は惜しみませんわ!」

パティリエカも真っ直ぐに立って宣言する。

「お役に立てることがあれば何なりとお申し付けください」

と、ニューティ。

「私めも、浅学ながらお力になりたいと存じます」

と、ブルーディス。

外では、エギナや兵士達だけでなく、賎民達も進んで鍛錬を積み、残ったデモニューマを迎え撃っていた。しかし、その襲撃の頻度は目に見えて減ってきている。新たに生まれることがなくなったからというのは明白だろう。

「レイラ様、今度は私がレイラ様をお救いします」

栄養状態が改善されたこともあってか少し背が伸びたシェイナが、ベッドに寝かされたレイラに語り掛ける。そこに、この世界そのものに怯えて震えていた憐れな少女の姿はない。

レイラとニューティの手ほどきによりメイドとしての基礎的な技能を身に付けた彼女は、ニューティと共に改めてパティリエカに仕えることがすでに決まっているそうだ。つまり、正式に臣民の一人として迎えられたという意味である。その上で、レイラの回復のために尽力することになると。

その部屋の片隅には、シェイナの手による、真新しい、以前のものよりも確実にクオリティが上がった外套が掛けられていたのだった。





~Fin~









追記:レイラが魔王を倒すまで三十三日。そしてこの後、多くの人間達の尽力により、十年の歳月を費やして彼女はその機能を取り戻すのだが、それはまた別のお話である。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

超文明日本

点P
ファンタジー
2030年の日本は、憲法改正により国防軍を保有していた。海軍は艦名を漢字表記に変更し、正規空母、原子力潜水艦を保有した。空軍はステルス爆撃機を保有。さらにアメリカからの要求で核兵器も保有していた。世界で1、2を争うほどの軍事力を有する。 そんな日本はある日、列島全域が突如として謎の光に包まれる。光が消えると他国と連絡が取れなくなっていた。 異世界転移ネタなんて何番煎じかわかりませんがとりあえず書きます。この話はフィクションです。実在の人物、団体、地名等とは一切関係ありません。

異世界起動兵器ゴーレム

ヒカリ
ファンタジー
高校生鬼島良太郎はある日トラックに 撥ねられてしまった。そして良太郎 が目覚めると、そこは異世界だった。 さらに良太郎の肉体は鋼の兵器、 ゴーレムと化していたのだ。良太郎が 目覚めた時、彼の目の前にいたのは 魔術師で2級冒険者のマリーネ。彼女は 未知の世界で右も左も分からない状態 の良太郎と共に冒険者生活を営んで いく事を決めた。だがこの世界の裏 では凶悪な影が……良太郎の異世界 でのゴーレムライフが始まる……。 ファンタジーバトル作品、開幕!

女神様、もっと早く祝福が欲しかった。

しゃーりん
ファンタジー
アルーサル王国には、女神様からの祝福を授かる者がいる。…ごくたまに。 今回、授かったのは6歳の王女であり、血縁の判定ができる魔力だった。 女神様は国に役立つ魔力を授けてくれる。ということは、血縁が乱れてるってことか? 一人の倫理観が異常な男によって、国中の貴族が混乱するお話です。ご注意下さい。

生活魔法しか使えない少年、浄化(クリーン)を極めて無双します(仮)(習作3)

田中寿郎
ファンタジー
壁しか見えない街(城郭都市)の中は嫌いだ。孤児院でイジメに遭い、無実の罪を着せられた幼い少年は、街を抜け出し、一人森の中で生きる事を選んだ。武器は生活魔法の浄化(クリーン)と乾燥(ドライ)。浄化と乾燥だけでも極めれば結構役に立ちますよ? コメントはたまに気まぐれに返す事がありますが、全レスは致しません。悪しからずご了承願います。 (あと、敬語が使えない呪いに掛かっているので言葉遣いに粗いところがあってもご容赦をw) 台本風(セリフの前に名前が入る)です、これに関しては助言は無用です、そういうスタイルだと思ってあきらめてください。 読みにくい、面白くないという方は、フォローを外してそっ閉じをお願いします。 (カクヨムにも投稿しております)

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

処理中です...