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レイラ
エピローグ
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こうして魔王を倒し帰還した<英雄>を、<ベル・ルデニオーラ>を挙げて盛大に出迎えた。もっとも、レイラ自身は起き上がることさえできない状態ないので、彼女のために設えた<台>に、斜めに寝そべる形で固定した状態で凱旋パレードが行われたのだが。
臣民も賎民も関係なく惜しみない賛辞を彼女に送り、レイラも、穏やかな笑みでそれを受け入れた。もちろん、彼女が魔王との戦いにより体が不自由になってしまったことについては知らされている。だからこそ、そこまでして自分達を救ってくれた英雄に心から感謝しているのだ。
そしてパレードを終え、凱旋を祝う盛大なパーティも終え、レイラは、屋敷へと帰ってきた。
ただし、太陽電池パネルからの給電を受けられない状況ではスリープモードに入ってしまうので、今は眠っているようにも見える。
すると、代わりに静香が告げた。
「今のこれだと、レイラを完全に回復させることはできないんだ。だから、レイラから、彼女を完全に回復させるための方法を、私は教わった。そのために必要なものをこれから揃える。正直、何年もかかると思う。だけど、レイラから教わった通りにやれば必ず成功する。みんなにも協力をお願いしたい」
と。まだ流暢とは言い難いものの、かろうじて意味が酌み取れる言葉で。
そう。レイラは、それに必要な情報を、彼女のスマホに転送していたのである。
それは、水車を用いた発電機を作り、充電するというものだった。
とは言え、すべてをゼロから作り上げることになるので、決して容易なことではない。静香も、ここの人間達に比べれば多少は知識があるとはいっても、決して技術者ではない。きっと試行錯誤の連続になるだろう。なお、そのための資金はレイラに支払われた褒賞の一部を充てる予定だ。
『レイラ自身が先に作ればよかったのでは?』と思う者もいるかもしれない。しかし、その完成を待っている間にどれだけの被害が出るかと考えた時、彼女にはそちらを優先することはできなかったのだ。
それに、
「私も手伝います! レイラ様を必ずお救いします……!」
強い意志がこもった眼差しで、シェイナはそう告げた。
「もちろん私も、協力は惜しみませんわ!」
パティリエカも真っ直ぐに立って宣言する。
「お役に立てることがあれば何なりとお申し付けください」
と、ニューティ。
「私めも、浅学ながらお力になりたいと存じます」
と、ブルーディス。
外では、エギナや兵士達だけでなく、賎民達も進んで鍛錬を積み、残ったデモニューマを迎え撃っていた。しかし、その襲撃の頻度は目に見えて減ってきている。新たに生まれることがなくなったからというのは明白だろう。
「レイラ様、今度は私がレイラ様をお救いします」
栄養状態が改善されたこともあってか少し背が伸びたシェイナが、ベッドに寝かされたレイラに語り掛ける。そこに、この世界そのものに怯えて震えていた憐れな少女の姿はない。
レイラとニューティの手ほどきによりメイドとしての基礎的な技能を身に付けた彼女は、ニューティと共に改めてパティリエカに仕えることがすでに決まっているそうだ。つまり、正式に臣民の一人として迎えられたという意味である。その上で、レイラの回復のために尽力することになると。
その部屋の片隅には、シェイナの手による、真新しい、以前のものよりも確実にクオリティが上がった外套が掛けられていたのだった。
~Fin~
追記:レイラが魔王を倒すまで三十三日。そしてこの後、多くの人間達の尽力により、十年の歳月を費やして彼女はその機能を取り戻すのだが、それはまた別のお話である。
臣民も賎民も関係なく惜しみない賛辞を彼女に送り、レイラも、穏やかな笑みでそれを受け入れた。もちろん、彼女が魔王との戦いにより体が不自由になってしまったことについては知らされている。だからこそ、そこまでして自分達を救ってくれた英雄に心から感謝しているのだ。
そしてパレードを終え、凱旋を祝う盛大なパーティも終え、レイラは、屋敷へと帰ってきた。
ただし、太陽電池パネルからの給電を受けられない状況ではスリープモードに入ってしまうので、今は眠っているようにも見える。
すると、代わりに静香が告げた。
「今のこれだと、レイラを完全に回復させることはできないんだ。だから、レイラから、彼女を完全に回復させるための方法を、私は教わった。そのために必要なものをこれから揃える。正直、何年もかかると思う。だけど、レイラから教わった通りにやれば必ず成功する。みんなにも協力をお願いしたい」
と。まだ流暢とは言い難いものの、かろうじて意味が酌み取れる言葉で。
そう。レイラは、それに必要な情報を、彼女のスマホに転送していたのである。
それは、水車を用いた発電機を作り、充電するというものだった。
とは言え、すべてをゼロから作り上げることになるので、決して容易なことではない。静香も、ここの人間達に比べれば多少は知識があるとはいっても、決して技術者ではない。きっと試行錯誤の連続になるだろう。なお、そのための資金はレイラに支払われた褒賞の一部を充てる予定だ。
『レイラ自身が先に作ればよかったのでは?』と思う者もいるかもしれない。しかし、その完成を待っている間にどれだけの被害が出るかと考えた時、彼女にはそちらを優先することはできなかったのだ。
それに、
「私も手伝います! レイラ様を必ずお救いします……!」
強い意志がこもった眼差しで、シェイナはそう告げた。
「もちろん私も、協力は惜しみませんわ!」
パティリエカも真っ直ぐに立って宣言する。
「お役に立てることがあれば何なりとお申し付けください」
と、ニューティ。
「私めも、浅学ながらお力になりたいと存じます」
と、ブルーディス。
外では、エギナや兵士達だけでなく、賎民達も進んで鍛錬を積み、残ったデモニューマを迎え撃っていた。しかし、その襲撃の頻度は目に見えて減ってきている。新たに生まれることがなくなったからというのは明白だろう。
「レイラ様、今度は私がレイラ様をお救いします」
栄養状態が改善されたこともあってか少し背が伸びたシェイナが、ベッドに寝かされたレイラに語り掛ける。そこに、この世界そのものに怯えて震えていた憐れな少女の姿はない。
レイラとニューティの手ほどきによりメイドとしての基礎的な技能を身に付けた彼女は、ニューティと共に改めてパティリエカに仕えることがすでに決まっているそうだ。つまり、正式に臣民の一人として迎えられたという意味である。その上で、レイラの回復のために尽力することになると。
その部屋の片隅には、シェイナの手による、真新しい、以前のものよりも確実にクオリティが上がった外套が掛けられていたのだった。
~Fin~
追記:レイラが魔王を倒すまで三十三日。そしてこの後、多くの人間達の尽力により、十年の歳月を費やして彼女はその機能を取り戻すのだが、それはまた別のお話である。
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