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レイラ
兵装
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こうして出発したレイラは、やはり<行きがけの駄賃>とばかりに遭遇したデモニューマを撃破しつつ、魔王を目指した。前回の威力偵察ですでに人間はいないことも分かっているので、それこそ脇目も振らず。
本当は、威力偵察を行った際にそのまま魔王を撃破することもできた。しかし、
『威力偵察を行い情報を持ち帰ります』
と人間に対して告げた以上はそれを果たさなければならなかった。また、静香に対しても『解析が済み次第、そちらに戻ります。夜が明けるまでには戻れるでしょう』と告げたのもある。
さらには、王直々に兵士らへの指南を依頼されもした。今回の作戦を提案した時にも、先に魔王を討伐してから残ったデモニューマの対処について共に考えることもできたし一案として告げもしたのだ。けれど、どうしても『魔王は倒せてもレイラも失うことになるのでは?』という王や軍の上層部の不安を払拭することは叶わず、まず、確実にデモニューマに対抗できる体制を構築してからということになった。魔王を倒すのに必要な電力を確保できている範囲内で協力することになったというわけだ。ロボットだからこそ、人間の要望には極力応えようとするがゆえに。
その上で、エギナには<帰還>まで厳命された。
これにより、極限まで電力の消耗を避ける必要が出てきた。だからこそ彼女は、現時点で可能な最高の効率で美しく駆け抜ける。格好こそは<メイド>そのままでありつつ、トップアスリートそのままのフォームで、まるで幻のように美しく。
森を貫く街道を、草原を、ただ駆け抜け、幅二十メートルはある河を一飛びで越え、前へ、前へと。
そして、予定していたよりも少ない消費で魔王の下にたどり着くことに成功する。
<エジェレネイカ山>の山体にとりついた<魔王>は、前回とまったく変わることなくそこにいた。前回は、レイラの移動速度があまりに早すぎたことで報告が間に合わなかった可能性もあったとしても、ここまでの間であれば、十分に情報を持ち帰る時間もあったはずだ。なのに、何らかの対策を講じている様子もない。
だとすればやはり、魔王の目的は自己保全であって、それ以外には、デモニューマとここでは称されている<生物兵器>と思しきものをただひたすら生み出すことにすべてのリソースを割いているのだろう。
『魔王、あなたにはあなたの目的があるのでしょうが、それが人間を傷付けるものである以上、人間の幸福に資するために作られた私の目的に決定的に反します。となれば、私は自らのすべてのリソースをもってあなたを無力化します』
そう考えながら、レイラは、一切の躊躇もなく真正面から魔王へと迫った。
「ギュイッ! ギュイッ! ギュイッ!」
自身目掛けて一直線に凄まじい速度で接近する<それ>に、魔王が警報らしき音を発した。すると、生まれたばかりで魔王の根元辺りで蹲っていたデモニューマらも体を起こし、迎撃に当たる。
翼竜型は空へと飛び立ち、レーザー光を発振する犀型のデモニューマらによる一斉砲撃が行われた。
けれど、狙いを正確に見通し最小限の動きで躱してみせるレイラには、まるで無力だった。たとえ僅かに掠めることはあっても、彼女の<装甲スキン>は高出力レーザー砲の直撃でも一瞬では溶解しない処理が施されており、深刻なダメージにはならない。
何度も同じ箇所に命中させる必要があるものの、その、
『何度も同じ箇所に命中させる』
ということができないのだ。
さらに、周りにいたデモニューマの中からも、火炎を放射するものもいたが、それさえ、彼女の速度であれば一瞬で通り過ぎてしまうので、これもまた、ダメージは与えられない。
加えて、人間達が使う<雷霆の魔法>と同じものを使うデモニューマのそれも、先にも説明したとおり、機体表面の電気が流れやすい部分を通して地面に流れるので、やはりダメージにはならない。
明らかに、彼女に施されているレベルの高い防御力を想定していない兵装なのであった。
本当は、威力偵察を行った際にそのまま魔王を撃破することもできた。しかし、
『威力偵察を行い情報を持ち帰ります』
と人間に対して告げた以上はそれを果たさなければならなかった。また、静香に対しても『解析が済み次第、そちらに戻ります。夜が明けるまでには戻れるでしょう』と告げたのもある。
さらには、王直々に兵士らへの指南を依頼されもした。今回の作戦を提案した時にも、先に魔王を討伐してから残ったデモニューマの対処について共に考えることもできたし一案として告げもしたのだ。けれど、どうしても『魔王は倒せてもレイラも失うことになるのでは?』という王や軍の上層部の不安を払拭することは叶わず、まず、確実にデモニューマに対抗できる体制を構築してからということになった。魔王を倒すのに必要な電力を確保できている範囲内で協力することになったというわけだ。ロボットだからこそ、人間の要望には極力応えようとするがゆえに。
その上で、エギナには<帰還>まで厳命された。
これにより、極限まで電力の消耗を避ける必要が出てきた。だからこそ彼女は、現時点で可能な最高の効率で美しく駆け抜ける。格好こそは<メイド>そのままでありつつ、トップアスリートそのままのフォームで、まるで幻のように美しく。
森を貫く街道を、草原を、ただ駆け抜け、幅二十メートルはある河を一飛びで越え、前へ、前へと。
そして、予定していたよりも少ない消費で魔王の下にたどり着くことに成功する。
<エジェレネイカ山>の山体にとりついた<魔王>は、前回とまったく変わることなくそこにいた。前回は、レイラの移動速度があまりに早すぎたことで報告が間に合わなかった可能性もあったとしても、ここまでの間であれば、十分に情報を持ち帰る時間もあったはずだ。なのに、何らかの対策を講じている様子もない。
だとすればやはり、魔王の目的は自己保全であって、それ以外には、デモニューマとここでは称されている<生物兵器>と思しきものをただひたすら生み出すことにすべてのリソースを割いているのだろう。
『魔王、あなたにはあなたの目的があるのでしょうが、それが人間を傷付けるものである以上、人間の幸福に資するために作られた私の目的に決定的に反します。となれば、私は自らのすべてのリソースをもってあなたを無力化します』
そう考えながら、レイラは、一切の躊躇もなく真正面から魔王へと迫った。
「ギュイッ! ギュイッ! ギュイッ!」
自身目掛けて一直線に凄まじい速度で接近する<それ>に、魔王が警報らしき音を発した。すると、生まれたばかりで魔王の根元辺りで蹲っていたデモニューマらも体を起こし、迎撃に当たる。
翼竜型は空へと飛び立ち、レーザー光を発振する犀型のデモニューマらによる一斉砲撃が行われた。
けれど、狙いを正確に見通し最小限の動きで躱してみせるレイラには、まるで無力だった。たとえ僅かに掠めることはあっても、彼女の<装甲スキン>は高出力レーザー砲の直撃でも一瞬では溶解しない処理が施されており、深刻なダメージにはならない。
何度も同じ箇所に命中させる必要があるものの、その、
『何度も同じ箇所に命中させる』
ということができないのだ。
さらに、周りにいたデモニューマの中からも、火炎を放射するものもいたが、それさえ、彼女の速度であれば一瞬で通り過ぎてしまうので、これもまた、ダメージは与えられない。
加えて、人間達が使う<雷霆の魔法>と同じものを使うデモニューマのそれも、先にも説明したとおり、機体表面の電気が流れやすい部分を通して地面に流れるので、やはりダメージにはならない。
明らかに、彼女に施されているレベルの高い防御力を想定していない兵装なのであった。
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