異世界転移したロボ娘が、バッテリーが尽きるまでの一ヶ月で世界を救っちゃう物語

京衛武百十

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レイラ

鍛錬

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『あの<魔王>が、いずこかの<自動兵器の生産工場>だとするならば、その行動理念も理解できます。『自身の保全を優先し、優位性を確保せよ』でしょうね』

シェイナやパティリエカの相手をしながらも、レイラは並列して思考を続けていた。彼女は、それぞれが独立して完結した人工頭脳五つを一つにまとめて作られた<メインフレーム>を有したロボットであり、二百五十六のタスクを同時に処理できる機能を持つ。

メイトギアに搭載できるものとしては、当時、ほぼ最高水準のものであった。それ以上となると、単純に物理的な制約として無理となる。もっと大きな機体を持つロボットなどには、さらに高性能なそれが搭載されていたりもするが、こちらはまた、コスト的な面で見合わなくなるので、あまり採用されないが。

まあそれは余談なので置くとして、いずれにせよ、<魔王>は自己保全を最優先し、味方としての信号を発していない正体不明の知的生命体を殲滅ないし友軍の回収を待つというのが基本姿勢と推測できた。

友好的なコミュニケーションを図る思考ルーチンは持っていないようなので、よほど苛烈な戦局の下で運用されていたものなのだろう。生物を思わせる構造を持ちつつもその本質はレイラと同じ<ロボット>であり、友軍以外の外部からの干渉は一切受けない<スタンドアロン機>であることも推測できる。

ゆえに、<破壊による無力化>のみが現時点で取り得る唯一の対処であるというのが、レイラの結論だった。同じロボット同士であるなら、彼女は何一つ遠慮しない。躊躇しない。人間の身体生命を守るために徹底した対処を行うだけだ。

なお、人間の場合は今回の事態について、<神>と称されるものの存在をその背景に見てしまうだろう。

<レイラ>

<静香>

<魔王>

少なく見積もってもこれだけの存在が<別の世界>から転移してくるなど、およそただの偶然とは思えない。

しかし、ロボットであるレイラには、そちらの方向に思考が向くことはない。<神>なるものの存在を窺わせる事象はここまで観測されていないからだ。異様な<転移現象>についても、彼女としては、

『これまでオカルトと見做され具体的に検証されてこなかった何らかの物理現象かもしれません』

と考えるだけで、肯定も否定もしないのである、ロボットである彼女にそれはできないがゆえに。



そして午後、エギナらへの教導のために、レイラは演習場へと向かった。すると、すでに、エギナをはじめとした兵士達が整列していた。

「総員、敬礼!!」

エギナの掛け声で、二百人余りの兵士達が一斉に、右腕を自分の胸の前に水平に上げる、軍隊式の敬礼を見せた。一糸乱れぬそれが、高い士気と規律正しさを改めて窺わせた。

レイラは言う。

「こうして皆さんにお集まりいただいたのは、他でもありません。デモニューマを確実に討ち倒す戦術を磨いていただくためです。勇敢で高い練度を持つ皆さんであれば、必ずやそれを習得し、結果を出してくださるでしょう!」

鼓舞するように胸を張って声を張る彼女に、兵士達も真剣そのものの表情だった。

かくして新型のいしゆみを用いた集団戦の鍛錬が始まった。いしゆみは苦手だと言っていたエギナも、レイラの指導の下、真剣に臨んでいたのだった。

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