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レイラ
気丈に振る舞ってはいても
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風呂に入ってさっぱりすると、
「シズカはこちらの部屋を使ってください」
レイラが彼女を案内した。
「ありがとう。でも、いいのかな。こんなに良くしてもらっちゃって」
静香自身にはまったく悪気はないとは言っても、実際には、
<まったく得体のしれない異世界の住人>
である自分がこの待遇を受けられることが不思議だった。けれどレイラは、
「ロボットである私にとっては人間であるあなたは最優先で守るべき対象となります。これは当然のことなのです」
と、笑顔を向けるだけだった。
「……レイラと逢えて本当によかった……」
本当にホッとしたのだろう。静香はまた目に涙を溜める。けれどレイラは、
「ですが、今はいわば<戦時中>ですので、ある程度の緊張感は必要ですね」
とも、やはり穏やかな笑顔のままで言う。
「そっか、そうだよね……」
静香も涙を拭いながら背筋を伸ばした。
それでも今だけは安心していいだろう。ここは安全なのだから。
こうして静香を部屋に案内したレイラは、シェイナとパティリエカが待つ寝室へと戻り、二人と一緒にベッドに入った。二人を寝かしつけてからまた、工房に向かうことになる。
でもその前に、
「レイラ様、本当にご無事でなによりです……!」
「レイラ様の無事を、本当に心からお祈り申し上げておりました」
シェイナとパティリエカが、縋り付いてきた。気丈に振る舞ってはいても、二人とも、心配で仕方なかったのだ。そんな二人をそっと抱きしめ、
「ありがとうございます。私も、お二人が待ってくださっていたからこそ帰ってこれました。魔王との戦いはこれからが本番ですが、お二人の想いこそが私にとっては励みになります。必ず魔王を倒し、お二人とこの国に安寧をもたらしますことをここに約束いたします」
レイラは改めて丁寧にそう告げた。魔王についての情報を得たからこその言葉だった。
魔王を倒しこの地に安寧をもたらすことは可能だ。ただ、そこから先については何一つ保証できないため、レイラはそのことには触れなかった。
『バッテリー残量、七十二パーセント。魔王を倒すのはビル破壊の手順で可能でしょうが、全高三千七百メートルもの構造物である魔王を破壊するのは、さすがにかなりの電力を消費するでしょうね……』
そう。レイラの試算では、魔王を倒した時点でバッテリーに蓄えられた電力をほぼ使い果たし、機能を維持できなくなるのは確実だった。一応、静香が持っていた太陽電池を使えば充電もできなくはないものの、およそ普通に活動することが叶うようなものではなかったのだった。
「シズカはこちらの部屋を使ってください」
レイラが彼女を案内した。
「ありがとう。でも、いいのかな。こんなに良くしてもらっちゃって」
静香自身にはまったく悪気はないとは言っても、実際には、
<まったく得体のしれない異世界の住人>
である自分がこの待遇を受けられることが不思議だった。けれどレイラは、
「ロボットである私にとっては人間であるあなたは最優先で守るべき対象となります。これは当然のことなのです」
と、笑顔を向けるだけだった。
「……レイラと逢えて本当によかった……」
本当にホッとしたのだろう。静香はまた目に涙を溜める。けれどレイラは、
「ですが、今はいわば<戦時中>ですので、ある程度の緊張感は必要ですね」
とも、やはり穏やかな笑顔のままで言う。
「そっか、そうだよね……」
静香も涙を拭いながら背筋を伸ばした。
それでも今だけは安心していいだろう。ここは安全なのだから。
こうして静香を部屋に案内したレイラは、シェイナとパティリエカが待つ寝室へと戻り、二人と一緒にベッドに入った。二人を寝かしつけてからまた、工房に向かうことになる。
でもその前に、
「レイラ様、本当にご無事でなによりです……!」
「レイラ様の無事を、本当に心からお祈り申し上げておりました」
シェイナとパティリエカが、縋り付いてきた。気丈に振る舞ってはいても、二人とも、心配で仕方なかったのだ。そんな二人をそっと抱きしめ、
「ありがとうございます。私も、お二人が待ってくださっていたからこそ帰ってこれました。魔王との戦いはこれからが本番ですが、お二人の想いこそが私にとっては励みになります。必ず魔王を倒し、お二人とこの国に安寧をもたらしますことをここに約束いたします」
レイラは改めて丁寧にそう告げた。魔王についての情報を得たからこその言葉だった。
魔王を倒しこの地に安寧をもたらすことは可能だ。ただ、そこから先については何一つ保証できないため、レイラはそのことには触れなかった。
『バッテリー残量、七十二パーセント。魔王を倒すのはビル破壊の手順で可能でしょうが、全高三千七百メートルもの構造物である魔王を破壊するのは、さすがにかなりの電力を消費するでしょうね……』
そう。レイラの試算では、魔王を倒した時点でバッテリーに蓄えられた電力をほぼ使い果たし、機能を維持できなくなるのは確実だった。一応、静香が持っていた太陽電池を使えば充電もできなくはないものの、およそ普通に活動することが叶うようなものではなかったのだった。
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