76 / 108
レイラ
客人
しおりを挟む
「彼女は、シズカ・フジワラ。ここよりはるか東方の国より来た旅人で、<帝政バルラシアム>領内での唯一の生存者です」
屋敷に戻ったレイラは、まず、そう言って静香をシェイナ達と引き合わせた。
「彼女も、当面の間、この屋敷にて暮らすことになります」
そう告げるレイラに、
「よろしくお願います」
静香は深々と頭を下げ、
「よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
シェイナとニューティは快く彼女を迎え入れてくれた。ただ、パティリエカだけは、
「ええ……?」
と、少し不満そうだ。どうやら、レイラを見る静香の様子に、感じるものがあったらしい。
それでも、
「レイラ様! 見てください! レイラ様がお役目を果たしている間に作り上げようと思ってた外套です! お早いお帰りでしたのでまだ途中になってしまいましたけど、いかがでしょうか!?」
留守中、ニューティがとても丁寧に接してくれたのが分かる朗らかなシェイナの様子に、レイラはふわっと微笑んで、
「さすがによくできていますね。これは完成が楽しみです」
応えた。それにシェイナは、ぱあっと頬を染めて、
「はい♡」
満面の笑顔になる。レイラが早く帰ってきてくれたのが嬉しいというのもあるのだろう。
「わ、私も、シェイナには負けませんわ!」
慌ててパティリエカが、自分の作っているものを手にとって、差し出してくる。こちらも、元々、<淑女の嗜み>として針仕事も学んでいたこともあり、途中ではあるもののよくできていた。だから当然、
「パティリエカ様も素晴らしい腕前です。この調子でお願いします」
レイラは笑顔でそう告げた。するとパティリエカの表情も明るくなって、
「はい、お任せください!」
と。
さらにレイラは、二人の後に控えて立っていたニューティに向かい、
「お二人に丁寧な指導をなさってくださったようですね。ありがとうございます」
礼を述べる。それに対してニューティは、
「ありがたき幸せ」
レイラの言葉に恐縮し、深々と頭を下げた。
そんなニューティを見届けて、部屋の隅にやはり控えていたブルーディスにも、
「お役目、ご苦労様です」
と声を掛ける。
「光栄の極み」
大きな体を折りたたむようにして、ブルーディスも頭を下げた。
こうして再会を喜び合い、夕食にする。
なお、静香の身柄は、レイラの客人として彼女が預かることとなった。身元もはっきりしない<旅人>だとはいえ、そこは、レイラに任せた方が確実だと、軍の幹部達も判断したのである。
何より、今は、魔王とデモニューマが最大の脅威であり、人間同士であれこれしている場合じゃないというのも、あるのだから。
屋敷に戻ったレイラは、まず、そう言って静香をシェイナ達と引き合わせた。
「彼女も、当面の間、この屋敷にて暮らすことになります」
そう告げるレイラに、
「よろしくお願います」
静香は深々と頭を下げ、
「よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
シェイナとニューティは快く彼女を迎え入れてくれた。ただ、パティリエカだけは、
「ええ……?」
と、少し不満そうだ。どうやら、レイラを見る静香の様子に、感じるものがあったらしい。
それでも、
「レイラ様! 見てください! レイラ様がお役目を果たしている間に作り上げようと思ってた外套です! お早いお帰りでしたのでまだ途中になってしまいましたけど、いかがでしょうか!?」
留守中、ニューティがとても丁寧に接してくれたのが分かる朗らかなシェイナの様子に、レイラはふわっと微笑んで、
「さすがによくできていますね。これは完成が楽しみです」
応えた。それにシェイナは、ぱあっと頬を染めて、
「はい♡」
満面の笑顔になる。レイラが早く帰ってきてくれたのが嬉しいというのもあるのだろう。
「わ、私も、シェイナには負けませんわ!」
慌ててパティリエカが、自分の作っているものを手にとって、差し出してくる。こちらも、元々、<淑女の嗜み>として針仕事も学んでいたこともあり、途中ではあるもののよくできていた。だから当然、
「パティリエカ様も素晴らしい腕前です。この調子でお願いします」
レイラは笑顔でそう告げた。するとパティリエカの表情も明るくなって、
「はい、お任せください!」
と。
さらにレイラは、二人の後に控えて立っていたニューティに向かい、
「お二人に丁寧な指導をなさってくださったようですね。ありがとうございます」
礼を述べる。それに対してニューティは、
「ありがたき幸せ」
レイラの言葉に恐縮し、深々と頭を下げた。
そんなニューティを見届けて、部屋の隅にやはり控えていたブルーディスにも、
「お役目、ご苦労様です」
と声を掛ける。
「光栄の極み」
大きな体を折りたたむようにして、ブルーディスも頭を下げた。
こうして再会を喜び合い、夕食にする。
なお、静香の身柄は、レイラの客人として彼女が預かることとなった。身元もはっきりしない<旅人>だとはいえ、そこは、レイラに任せた方が確実だと、軍の幹部達も判断したのである。
何より、今は、魔王とデモニューマが最大の脅威であり、人間同士であれこれしている場合じゃないというのも、あるのだから。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
【R18】無口な百合は今日も放課後弄ばれる
Yuki
恋愛
※性的表現が苦手な方はお控えください。
金曜日の放課後――それは百合にとって試練の時間。
金曜日の放課後――それは末樹と未久にとって幸せの時間。
3人しかいない教室。
百合の細腕は頭部で捕まれバンザイの状態で固定される。
がら空きとなった腋を末樹の10本の指が蠢く。
無防備の耳を未久の暖かい吐息が這う。
百合は顔を歪ませ紅らめただ声を押し殺す……。
女子高生と女子高生が女子高生で遊ぶ悪戯ストーリー。
フェンリル娘と異世界無双!!~ダメ神の誤算で生まれたデミゴッド~
華音 楓
ファンタジー
主人公、間宮陸人(42歳)は、世界に絶望していた。
そこそこ順風満帆な人生を送っていたが、あるミスが原因で仕事に追い込まれ、そのミスが連鎖反応を引き起こし、最終的にはビルの屋上に立つことになった。
そして一歩を踏み出して身を投げる。
しかし、陸人に訪れたのは死ではなかった。
眩しい光が目の前に現れ、周囲には白い神殿のような建物があり、他にも多くの人々が突如としてその場に現れる。
しばらくすると、神を名乗る人物が現れ、彼に言い渡したのは、異世界への転移。
陸人はこれから始まる異世界ライフに不安を抱えつつも、ある意味での人生の再スタートと捉え、新たな一歩を踏み出す決意を固めた……はずだった……
この物語は、間宮陸人が幸か不幸か、異世界での新たな人生を満喫する物語である……はずです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる