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レイラ
ヘルクレス座
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レイラは、静香を極力揺らさないように徹底して体を安定させる形で走っていた。時速百キロで走るようにしたのは、そのためもある。最終的に千キロ以上走ることになるが、バイクで長距離移動をした経験があるのなら、耐えられるだろう。
しかも、レイラに保護されたことでよほど安堵したのか、静香はそのままたっぷり八時間以上眠ってしまった。途中、何度か眠りが浅くなったのも察知できたが起きることができなかったらしく、そのまままた眠ってしまったようだ。
「え…あ? うわ、よだれ……ってぇっ!?」
ようやく体を起こした途端、頭に風圧を感じ、静香の意識が完全に覚醒する。
「あ…あ、そうか……!」
咄嗟に<ハンドル>を握り直し風圧に備えた。レイラの頭が風除けになっていたのが、体を起こしたことで静香も自分の頭に風を受ける形になったからである。
「…て、もう夜じゃん……っ!?」
視界が真っ暗なことで自分がかなりの時間、眠っていたことを察する。
「八時間強、眠っていらっしゃいましたね。この辺りでいったん休憩なさいますか?」
「うえ? 八時間も…? 確かに体もバッキバキだぁ……」
とのことだったので、すでに<ベル・ルデニオーラ>の領内に入っていたものの、いったん、休むことにする。
満点の星空の下、街道沿いにシートを広げて、静香はそこで横になって体を「ん~っ!」と伸ばした。ほとんど同じ姿勢で寝ていたことで固まっていたのがほぐされていくのが分かる。
そうして彼女が体を休めている間に、レイラは、静香のコンロとコッヘルと、自分が持ってきた水の残りで、カップラーメンを用意した。
「どうぞ」
「ありがとう。は~、しみるわ~」
カップラーメンのスープを一口飲んだ静香が声を漏らす。
それから星を見上げて、
「星座は変わらないのに、ここは私が生きてたのとは別の世界なんだね……だから、<異世界>って言うよりは、<並行世界>、なのかな……」
呟いて、空を指さし、
「あれって、ヘルクレス座だよね、あの、星が三つ並んでるの」
と口にした。
「ヘルクレス座?」
静香が指さした先にあったのは、
<ベテルギウスが見当たらないオリオン座らしきもの>
だった。瞬間、レイラは察した。静香がいた世界では、それが<ヘルクレス座>と称されているのだと。
念のために、
「オリオン座はどちらだったでしょう?」
と尋ねると、
「え? オリオン座は確か夏の星座だったから、ヘルクレス座が見えてる時には見えなかったと思うけど?」
静香がそう応えたため、レイラは、
『やはり彼女がいた世界も、私がいた世界とは別なのですね』
と確信したのだった。
しかも、レイラに保護されたことでよほど安堵したのか、静香はそのままたっぷり八時間以上眠ってしまった。途中、何度か眠りが浅くなったのも察知できたが起きることができなかったらしく、そのまままた眠ってしまったようだ。
「え…あ? うわ、よだれ……ってぇっ!?」
ようやく体を起こした途端、頭に風圧を感じ、静香の意識が完全に覚醒する。
「あ…あ、そうか……!」
咄嗟に<ハンドル>を握り直し風圧に備えた。レイラの頭が風除けになっていたのが、体を起こしたことで静香も自分の頭に風を受ける形になったからである。
「…て、もう夜じゃん……っ!?」
視界が真っ暗なことで自分がかなりの時間、眠っていたことを察する。
「八時間強、眠っていらっしゃいましたね。この辺りでいったん休憩なさいますか?」
「うえ? 八時間も…? 確かに体もバッキバキだぁ……」
とのことだったので、すでに<ベル・ルデニオーラ>の領内に入っていたものの、いったん、休むことにする。
満点の星空の下、街道沿いにシートを広げて、静香はそこで横になって体を「ん~っ!」と伸ばした。ほとんど同じ姿勢で寝ていたことで固まっていたのがほぐされていくのが分かる。
そうして彼女が体を休めている間に、レイラは、静香のコンロとコッヘルと、自分が持ってきた水の残りで、カップラーメンを用意した。
「どうぞ」
「ありがとう。は~、しみるわ~」
カップラーメンのスープを一口飲んだ静香が声を漏らす。
それから星を見上げて、
「星座は変わらないのに、ここは私が生きてたのとは別の世界なんだね……だから、<異世界>って言うよりは、<並行世界>、なのかな……」
呟いて、空を指さし、
「あれって、ヘルクレス座だよね、あの、星が三つ並んでるの」
と口にした。
「ヘルクレス座?」
静香が指さした先にあったのは、
<ベテルギウスが見当たらないオリオン座らしきもの>
だった。瞬間、レイラは察した。静香がいた世界では、それが<ヘルクレス座>と称されているのだと。
念のために、
「オリオン座はどちらだったでしょう?」
と尋ねると、
「え? オリオン座は確か夏の星座だったから、ヘルクレス座が見えてる時には見えなかったと思うけど?」
静香がそう応えたため、レイラは、
『やはり彼女がいた世界も、私がいた世界とは別なのですね』
と確信したのだった。
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