69 / 108
レイラ
ハッキング
しおりを挟む
「私は、デモニューマ、いえ、<デモニィ>を操っているとされる<魔王>なる存在の撃破に必要な情報を得るために偵察に向かう途中でした。そのため、シズカを連れて行くことはできませんが、十二時間で戻ってきます。それまでここで待っていてくださいますか?」
レイラは、静香にそう告げるために、様々な準備をした。
自身が装備の一部として持ってきた水と食料(長期保存が利く固いパン及び干し肉)のすべてを提供し、静香が持っていたモバイルルーターとスマホを解析、モバイルルーターにリンク。さらにスマホのアプリを解析してそれを基にアプリをその場で自作、インストールした。レイラと通信するためのアプリだった。
西暦五八〇〇年代に製造されたレイラからすると、静香の持つモバイルルーターやスマホなどそれこそ子供の玩具以下のものでしかなく、ハッキングも造作もなかった。ちゃんと知識のある人間が玩具のネジを外して中の機構を弄る程度のものなのだ。
「これで、私とリアルタイムに会話ができます。モバイルルーターについては、通気用の穴を通じて地下に電波を送るために、地上に設置させていただきますが、よろしいでしょうか?」
「うん、分かった」
モバイルルーターに対しては、レイラが、強い指向性を持たせた電波を発信することでリンクし、魔王への威力偵察中も静香との通話を確保。それを、地下への空気取り入れ口に置き、静香のスマホとの接続が確保されることも確認。
さらに、
「モバイルバッテリーの電池はほとんど残ってなくて、それがなくなったらあとはスマホのバッテリーだけになる」
という静香の不安に対しても、
「問題ありません。こちらのモバイルバッテリーは規格が合わないので無理ですが、こちらのスマホの無線給電には対応可能です。私のバッテリーから給電できます」
実際に目の前で給電してみせて、丁寧に解消する。
地上に出れば太陽電池がスマホの充電にも使えるものの、地下ではさすがに使えなかった。
こうして、常時、スマホのアプリを通じて静香と、
「<デモニィ>が侵入できないように出入り口は塞いでおきます」
などと会話しつつ、地上に戻ったレイラは改めて<エジェレネイカ山>の方を向いた。
『どうやらこの辺りはつい最近まで雪に閉ざされていたようですね。そのため、デモニューマ、この国では<デモニィ>ですか? の侵攻を逃れていたのかもしれません。彼女は運がよかった。
ただ、静香が言う<異世界転移>なるものが実際に起こり得るかどうかの検証は、おそらく私には無理でしょう。ですが、現に静香はここに存在し、私もこうして存在している。ならば、その事実を基に私は自らの役目を果たすまでです。
バッテリー残量、八十三パーセント。コンディション、オールグリーン。行きます』
と、<エジェレネイカ山>目指して走り出したのだった。
レイラは、静香にそう告げるために、様々な準備をした。
自身が装備の一部として持ってきた水と食料(長期保存が利く固いパン及び干し肉)のすべてを提供し、静香が持っていたモバイルルーターとスマホを解析、モバイルルーターにリンク。さらにスマホのアプリを解析してそれを基にアプリをその場で自作、インストールした。レイラと通信するためのアプリだった。
西暦五八〇〇年代に製造されたレイラからすると、静香の持つモバイルルーターやスマホなどそれこそ子供の玩具以下のものでしかなく、ハッキングも造作もなかった。ちゃんと知識のある人間が玩具のネジを外して中の機構を弄る程度のものなのだ。
「これで、私とリアルタイムに会話ができます。モバイルルーターについては、通気用の穴を通じて地下に電波を送るために、地上に設置させていただきますが、よろしいでしょうか?」
「うん、分かった」
モバイルルーターに対しては、レイラが、強い指向性を持たせた電波を発信することでリンクし、魔王への威力偵察中も静香との通話を確保。それを、地下への空気取り入れ口に置き、静香のスマホとの接続が確保されることも確認。
さらに、
「モバイルバッテリーの電池はほとんど残ってなくて、それがなくなったらあとはスマホのバッテリーだけになる」
という静香の不安に対しても、
「問題ありません。こちらのモバイルバッテリーは規格が合わないので無理ですが、こちらのスマホの無線給電には対応可能です。私のバッテリーから給電できます」
実際に目の前で給電してみせて、丁寧に解消する。
地上に出れば太陽電池がスマホの充電にも使えるものの、地下ではさすがに使えなかった。
こうして、常時、スマホのアプリを通じて静香と、
「<デモニィ>が侵入できないように出入り口は塞いでおきます」
などと会話しつつ、地上に戻ったレイラは改めて<エジェレネイカ山>の方を向いた。
『どうやらこの辺りはつい最近まで雪に閉ざされていたようですね。そのため、デモニューマ、この国では<デモニィ>ですか? の侵攻を逃れていたのかもしれません。彼女は運がよかった。
ただ、静香が言う<異世界転移>なるものが実際に起こり得るかどうかの検証は、おそらく私には無理でしょう。ですが、現に静香はここに存在し、私もこうして存在している。ならば、その事実を基に私は自らの役目を果たすまでです。
バッテリー残量、八十三パーセント。コンディション、オールグリーン。行きます』
と、<エジェレネイカ山>目指して走り出したのだった。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
フェンリル娘と異世界無双!!~ダメ神の誤算で生まれたデミゴッド~
華音 楓
ファンタジー
主人公、間宮陸人(42歳)は、世界に絶望していた。
そこそこ順風満帆な人生を送っていたが、あるミスが原因で仕事に追い込まれ、そのミスが連鎖反応を引き起こし、最終的にはビルの屋上に立つことになった。
そして一歩を踏み出して身を投げる。
しかし、陸人に訪れたのは死ではなかった。
眩しい光が目の前に現れ、周囲には白い神殿のような建物があり、他にも多くの人々が突如としてその場に現れる。
しばらくすると、神を名乗る人物が現れ、彼に言い渡したのは、異世界への転移。
陸人はこれから始まる異世界ライフに不安を抱えつつも、ある意味での人生の再スタートと捉え、新たな一歩を踏み出す決意を固めた……はずだった……
この物語は、間宮陸人が幸か不幸か、異世界での新たな人生を満喫する物語である……はずです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
放浪者
側溝
ファンタジー
最近変な夢を見る、妙に生々しい夢だ。
覚えているのはそれだけで、妙に後味の悪い気分で目を覚ます。
しかし、起きて少ししたらどうということはない。
さっぱりその事を忘れてしまっているのだから。
アトラス
レオパッド
SF
明治初頭。日本に現れた謎の生物『異獣』の登場は
その後、数百年の間に世界を大きく変えた。生態系は既存の生物の多くが絶滅し、陸も空も海も、異獣が繁栄を極めた。
異獣という脅威に対し、人類は異能の力を行使する者『クリエイター』を生み出すことで、なんとか生存することを許されていた……。
しかし、クリエイターでも苦戦する異獣の突然変異種が出現。新たな混乱の時代を迎えようとしていた
人類の前に敵か味方か……異獣ならざる者たちが降臨する。
美少女ゲーム大好き女の私が、ゲームの主人公と入れ替わってさあ大変! しかも記憶や知識がそのままだから百合ハーレムです。
楠富 つかさ
恋愛
この物語は、美少女ゲーを愛し、美少女ゲーに愛された主人公がそのゲームのハーレムエンディングを実体験する百合色に満ちたハーレムストーリーなのです!!
2年ぶりに家を出たら異世界に飛ばされた件
後藤蓮
ファンタジー
生まれてから12年間、東京にすんでいた如月零は中学に上がってすぐに、親の転勤で北海道の中高一貫高に学校に転入した。
転入してから直ぐにその学校でいじめられていた一人の女の子を助けた零は、次のいじめのターゲットにされ、やがて引きこもってしまう。
それから2年が過ぎ、零はいじめっ子に復讐をするため学校に行くことを決断する。久しぶりに家を出る決断をして家を出たまでは良かったが、学校にたどり着く前に零は突如謎の光に包まれてしまい気づいた時には森の中に転移していた。
これから零はどうなってしまうのか........。
お気に入り・感想等よろしくお願いします!!
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる