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レイラ

ハッキング

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「私は、デモニューマ、いえ、<デモニィ>を操っているとされる<魔王>なる存在の撃破に必要な情報を得るために偵察に向かう途中でした。そのため、シズカを連れて行くことはできませんが、十二時間で戻ってきます。それまでここで待っていてくださいますか?」



レイラは、静香にそう告げるために、様々な準備をした。

自身が装備の一部として持ってきた水と食料(長期保存が利く固いパン及び干し肉)のすべてを提供し、静香が持っていたモバイルルーターとスマホを解析、モバイルルーターにリンク。さらにスマホのアプリを解析してそれを基にアプリをその場で自作、インストールした。レイラと通信するためのアプリだった。

西暦五八〇〇年代に製造されたレイラからすると、静香の持つモバイルルーターやスマホなどそれこそ子供の玩具おもちゃ以下のものでしかなく、ハッキングも造作もなかった。ちゃんと知識のある人間が玩具おもちゃのネジを外して中の機構を弄る程度のものなのだ。

「これで、私とリアルタイムに会話ができます。モバイルルーターについては、通気用の穴を通じて地下に電波を送るために、地上に設置させていただきますが、よろしいでしょうか?」

「うん、分かった」

モバイルルーターに対しては、レイラが、強い指向性を持たせた電波を発信することでリンクし、魔王への威力偵察中も静香との通話を確保。それを、地下への空気取り入れ口に置き、静香のスマホとの接続が確保されることも確認。

さらに、

「モバイルバッテリーの電池はほとんど残ってなくて、それがなくなったらあとはスマホのバッテリーだけになる」

という静香の不安に対しても、

「問題ありません。こちらのモバイルバッテリーは規格が合わないので無理ですが、こちらのスマホの無線給電には対応可能です。私のバッテリーから給電できます」

実際に目の前で給電してみせて、丁寧に解消する。

地上に出れば太陽電池がスマホの充電にも使えるものの、地下ではさすがに使えなかった。



こうして、常時、スマホのアプリを通じて静香と、

「<デモニィ>が侵入できないように出入り口は塞いでおきます」

などと会話しつつ、地上に戻ったレイラは改めて<エジェレネイカ山>の方を向いた。

『どうやらこの辺りはつい最近まで雪に閉ざされていたようですね。そのため、デモニューマ、この国では<デモニィ>ですか? の侵攻を逃れていたのかもしれません。彼女は運がよかった。

ただ、静香が言う<異世界転移>なるものが実際に起こり得るかどうかの検証は、おそらく私には無理でしょう。ですが、現に静香はここに存在し、私もこうして存在している。ならば、その事実を基に私は自らの役目を果たすまでです。

バッテリー残量、八十三パーセント。コンディション、オールグリーン。行きます』

と、<エジェレネイカ山>目指して走り出したのだった。

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