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レイラ

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レイラは、この、

<地球である条件があまりにも揃いつつも決して地球ではない惑星>

について拘泥することはない。

<彼女が持つデータからはモンブラン以外の何でもない山>

についても、<エジェレネイカ山>として対処する。

実際、緻密に照合すると、山体の輪郭にごくわずかな差異も見られる。しかし、シルエットの適合率は実に九七.七二パーセントであるため、本来ならば、

『モンブランではない』

などと判定できないレベルである。

ただ、ここまで近付くとはっきりと確認できたのだが、エジェレネイカ山の山体に、<山の一部>では有り得ない<何か>が取り付いているのが分かった。

一見すると<木>のように見えつつも、彼女が行った三角測量により、高さは約三千七百メートルに及ぶことから、およそ<木>では有り得ないことも分かる。しかも、ゆっくりとではあるが先端部が最大百メートル程度の範囲でゆらゆらと動いているのだ。

最大望遠で目視すると、表面は木のようにも見えつつ<大トカゲの皮膚>のようにも見えるため、工業的な建築物とも思えない。

レイラが運用されていた世界では、<軌道エレベータ>も実用化されて(実際にはすでに旧式化した技術ではあるもののコスト面で優秀なのでなお運用は続けられて)おり、その高さは実に十万キロメートルに達する上に、三千メートル級、四千メートル級の建築物も特に珍しいものではないので驚くには値しないものの、この世界の技術レベルではおよそ到達不可能なものであることも間違いない。

『もしかするとあれが<魔王>でしょうか?』

とも思う。さりとてやはりもっと近付いて詳細にデータを得ないと話にならないため、彼女は移動を続けた。

こうして二日目の夜に差し掛かった時、

「今のは!?」

レイラの聴覚センサーが非常に重要な<音>を捉えた。

「間違いありません。人間の声です」

完全にデモニューマに制圧され<生きている人間の姿>がまったく確認されなかった<帝政バルラシアム>において初めて人間の気配を捉えたのである。場所は、イタリアで言えば、ローマ時代の遺跡も数多く残る<アオスタ>周辺に当たるのだろうか。実際、それらしい建築物が見えるが、彼女が知る<ローマ時代の遺跡>とは違っている。

それとは関係なく、生存している人間がいるとなれば、ロボットであり人命を最優先とすることが至上命題である彼女としては無視もできない。他の人間に任せようにもその<他の人間>もいない。だから彼女はためらうことなく<声>のする方へと向かった。

もちろん、進路上のデモニューマを撃破しつつ。

しかも、<声>のする辺りに近付くと、それこそ周囲にいたデモニューマを、容赦なく倒していく。<動物愛護>を信条とする者が見れば憤死しそうな光景であったものの、ロボットが人間以外の動物を保護するのは、人間の身体生命に危険が及ばない状況に限るため、レイラの行いは至極当然のものなのだった。

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