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レイラ

行きがけの駄賃

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翼竜型のデモニューマを撃破したレイラが城壁から飛び降りつつ情報を収集。彼女から見える位置だけでも六体の<翼竜型デモニューマ>の死骸を確認。現状の戦力で少なくとも二体を撃破していたことがこれで分かる。

そして、賤民街を囲う<柵>の一部が完全に破壊されていて、獣型のデモニューマが、確認できるだけでも七体、街の中を動き回っていた。そのうち二体は、レイラがシェイナを救った時に撃破したのと同じ、恐竜型だった。残りは、さいに似たものだ。

そこに、城壁からの大型弩砲の砲撃が雨のように降り注ぐ。幸い、賤民達はすでに避難しているようで、姿は見えない。

今回の襲撃は、翼竜型のそれと比較的体の大きいものばかりだったことで、おそらく発見が早かったのだろう。ルデニオンに到着した時にレイラが遭遇した獅子型のデモニューマは、ライオンが獲物に近付くような形で身を隠しながら近付いてきたことで発見が遅れたものと思われる。そのような事例もありつつも、この世界の人間達はずっとデモニューマと戦ってきたゆえに、当然、相応の対処もできるようになっているということだ。

レイラが確認した七体のうちの三体は、いくつもの投擲体を浴びて明らかに弱ってきていた。なので彼女は、ほとんどダメージを受けていないように見える二体を標的とする。

ここまでで一秒足らず。そして彼女が狙いを定めてから二体のデモニューマ(いずれも恐竜型)を撃破するまでさえ、三秒強。城壁の上から大型弩砲で攻撃する兵士達ですら、何が起こったのかよく分からなかっただろう。

彼女が、秒速五十メートルを超える速度でデモニューマに迫り、右手の指を揃えてまるで剣のように恐竜型デモニューマの腹に突き立てた上で大きく裂いて致命傷を与えたのと同時に次の恐竜型デモニューマ目掛けて走って同じく剣のようにした右手を突き立て腹を裂いて見せたことも、ほとんど認識できなかったそうだ。

とにかく、何かものすごい速さで動く<もの>が次々とデモニューマを倒したかと思うとそのままの勢いで壊れた柵のところから西に向けて走り去っていったのしか分からなかった。

辛うじて、翼竜型のデモニューマが撃墜された時に、

『城壁の上に長い髪の女が突然現れて大型弩砲の投擲体を投げ付けたと思うと次々とデモニューマが落ちていった』

というのが認識できただけであったのだと言う。

それでも、兵士達とて呆気に取られて手を止めた者は少なく、恐竜型のデモニューマが地面に倒れ伏したと見るや、

「そちらは右を狙え! こちらは左に攻撃を集中!!」

指揮に当たった者の指示を受けて、残る二体のさい型のデモニューマも撃破してみせたのだった。

こうして、彼らが、

『王都からの報せにあった<レイラ>が、魔王に対する威力偵察の行きがけの駄賃とばかりに力を貸してくれた』

事実に気付いたのは、完全に状況が終了してからのことなのであった。

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