異世界転移したロボ娘が、バッテリーが尽きるまでの一ヶ月で世界を救っちゃう物語

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
60 / 108
レイラ

行きがけの駄賃

しおりを挟む
翼竜型のデモニューマを撃破したレイラが城壁から飛び降りつつ情報を収集。彼女から見える位置だけでも六体の<翼竜型デモニューマ>の死骸を確認。現状の戦力で少なくとも二体を撃破していたことがこれで分かる。

そして、賤民街を囲う<柵>の一部が完全に破壊されていて、獣型のデモニューマが、確認できるだけでも七体、街の中を動き回っていた。そのうち二体は、レイラがシェイナを救った時に撃破したのと同じ、恐竜型だった。残りは、さいに似たものだ。

そこに、城壁からの大型弩砲の砲撃が雨のように降り注ぐ。幸い、賤民達はすでに避難しているようで、姿は見えない。

今回の襲撃は、翼竜型のそれと比較的体の大きいものばかりだったことで、おそらく発見が早かったのだろう。ルデニオンに到着した時にレイラが遭遇した獅子型のデモニューマは、ライオンが獲物に近付くような形で身を隠しながら近付いてきたことで発見が遅れたものと思われる。そのような事例もありつつも、この世界の人間達はずっとデモニューマと戦ってきたゆえに、当然、相応の対処もできるようになっているということだ。

レイラが確認した七体のうちの三体は、いくつもの投擲体を浴びて明らかに弱ってきていた。なので彼女は、ほとんどダメージを受けていないように見える二体を標的とする。

ここまでで一秒足らず。そして彼女が狙いを定めてから二体のデモニューマ(いずれも恐竜型)を撃破するまでさえ、三秒強。城壁の上から大型弩砲で攻撃する兵士達ですら、何が起こったのかよく分からなかっただろう。

彼女が、秒速五十メートルを超える速度でデモニューマに迫り、右手の指を揃えてまるで剣のように恐竜型デモニューマの腹に突き立てた上で大きく裂いて致命傷を与えたのと同時に次の恐竜型デモニューマ目掛けて走って同じく剣のようにした右手を突き立て腹を裂いて見せたことも、ほとんど認識できなかったそうだ。

とにかく、何かものすごい速さで動く<もの>が次々とデモニューマを倒したかと思うとそのままの勢いで壊れた柵のところから西に向けて走り去っていったのしか分からなかった。

辛うじて、翼竜型のデモニューマが撃墜された時に、

『城壁の上に長い髪の女が突然現れて大型弩砲の投擲体を投げ付けたと思うと次々とデモニューマが落ちていった』

というのが認識できただけであったのだと言う。

それでも、兵士達とて呆気に取られて手を止めた者は少なく、恐竜型のデモニューマが地面に倒れ伏したと見るや、

「そちらは右を狙え! こちらは左に攻撃を集中!!」

指揮に当たった者の指示を受けて、残る二体のさい型のデモニューマも撃破してみせたのだった。

こうして、彼らが、

『王都からの報せにあった<レイラ>が、魔王に対する威力偵察の行きがけの駄賃とばかりに力を貸してくれた』

事実に気付いたのは、完全に状況が終了してからのことなのであった。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

鋼なるドラーガ・ノート ~S級パーティーから超絶無能の烙印を押されて追放される賢者、今更やめてくれと言われてももう遅い~

月江堂
ファンタジー
― 後から俺の実力に気付いたところでもう遅い。絶対に辞めないからな ―  “賢者”ドラーガ・ノート。鋼の二つ名で知られる彼がSランク冒険者パーティー、メッツァトルに加入した時、誰もが彼の活躍を期待していた。  だが蓋を開けてみれば彼は無能の極致。強い魔法は使えず、運動神経は鈍くて小動物にすら勝てない。無能なだけならばまだしも味方の足を引っ張って仲間を危機に陥れる始末。  当然パーティーのリーダー“勇者”アルグスは彼に「無能」の烙印を押し、パーティーから追放する非情な決断をするのだが、しかしそこには彼を追い出すことのできない如何ともしがたい事情が存在するのだった。  ドラーガを追放できない理由とは一体何なのか!?  そしてこの賢者はなぜこんなにも無能なのに常に偉そうなのか!?  彼の秘められた実力とは一体何なのか? そもそもそんなもの実在するのか!?  力こそが全てであり、鋼の教えと闇を司る魔が支配する世界。ムカフ島と呼ばれる火山のダンジョンの攻略を通して彼らはやがて大きな陰謀に巻き込まれてゆく。

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

旅人アルマは動かない

洞貝 渉
ファンタジー
引きこもりのアルマは保護者ルドベキアと共にヤドカリに乗って旅をする。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

クズの異世界転生

中二病
ファンタジー
現代日本で高校生だった主人公は夜に散歩していたら赤信号を突っ切ってきたトラックに轢かれて死んでしまい気がついたら赤子になっていた。 トラックに轢かれ死んでしまって転生した直後主人公に天使が念話で話しかけてきた。 その天使はもう少しで主人公を助けてくれる人が来るという、その話を天使が話した少し後、司祭とシスターだろう男女が主人公の前まで来た。 ……しかしその司祭は私欲のために、主人公を助けずに見捨てた……。 そんな状況を見た神は強硬な手段で主人公を助けることにした。 しかし主人公を助けた貴族家やその貴族家が帰属する国の貴族家や王家の内部には敵国と内通する者たちがたくさんいた!しかも問題はそれだけではなく十数年後には魔王が復活してしまうらしい……。 主人公は神から力を貰ったがだからといって簡単に内通者や魔王そしてその他の問題を解決をできなかった……。 なぜなら主人公が転生した世界には主人公と同等に強い人間や主人公より強い人間がたくさんいたからだ……。 そんな世界で主人公は大切な人たちや護るべき人たちを護るために奮闘する。 カクヨム様と小説家になろう様の方でも同じ作品を書いています。

異世界無宿

ゆきねる
ファンタジー
運転席から見た景色は、異世界だった。 アクション映画への憧れを捨て切れない男、和泉 俊介。 映画の影響で筋トレしてみたり、休日にエアガンを弄りつつ映画を観るのが楽しみな男。 訳あって車を購入する事になった時、偶然通りかかったお店にて運命の出会いをする。 一目惚れで購入した車の納車日。 エンジンをかけて前方に目をやった時、そこは知らない景色(異世界)が広がっていた… 神様の道楽で異世界転移をさせられた男は、愛車の持つ特別な能力を頼りに異世界を駆け抜ける。 アクション有り! ロマンス控えめ! ご都合主義展開あり! ノリと勢いで物語を書いてますので、B級映画を観るような感覚で楽しんでいただければ幸いです。 不定期投稿になります。 投稿する際の時間は11:30(24h表記)となります。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

処理中です...