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レイラ

西へ

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<装備品>と言っても、背嚢の中に入っているのは、ナイフ三本、大型弩砲の投擲体二十、牛に似た草食獣の胃袋を利用して作られた水筒と水、非常食の干し肉七日分、傷薬として使われる薬草、くらいのものである。

ちなみに、ロボットであるレイラには水も食料も本来は必要ないが、さすがにそこまでとなると異様さが増すので、レイラはここまで飲食を行っているフリはしていた。

と言うのも、彼女には<毒見機能>も備わっており、口から水や食品を取り入れることもできるのである。もっとも、当然のこととして生物のようにそれをエネルギー源としては利用できないので、小さなパックに詰めて腹部のハッチから取り出す形にはなっているが。

ここまでは気付かれずにこられたものの、長く人間と一緒に暮らしていればいずれは気付かれるだろう。そういうことも含めて、人間達とは違いすぎるため、理解してもらうのは難しい面も出てくると思われる。

それら諸々については、ことが終わってから考えるとして、

「それでは、行ってまいります」

外套をまとい背嚢を背負ったレイラは、やはり穏やかな笑顔を浮かべて、詰所を後にした。フードを目深にかぶっていることもあり、賤民達の街を通り抜けても、人々からはレイラであることは気付かれなかった。

そうして賤民達の街の側の門を抜けて外に出てしばらく歩いたところで外套を脱ぎ、丁寧に畳んで背嚢に収め、西を見詰め、

『バッテリー残量、九十四パーセント。自己診断、問題なし。オールグリーン。危機対応モード、起動』

と、と、と、と走り始めた。そしてそれはたちまち途轍もない速度となり、知っている人間が意識して見なければもはや<人の姿をした何か>であることすら認識できないような、

<高速移動体>

となっていた。時速にして約百五十キロ。センサー類をフル稼働し、人や馬車と遭遇しても速度を緩めることなくすり抜け、あるいは飛び越え、

「え…?」

「なんだ……?」

つむじ風と共に何かが通り過ぎたようにしか、人間達には感じ取れなかった。

なお、彼女が元々運用されていた人間社会においては、ロボットが『走る』時には車道を通ることが義務付けられており、同時に、<制限速度>以上では走れないようになっている。しかしここには彼女を縛る<法>はない。

『移動距離、二十キロ……前方に街……』

<王都ルデニオン>と同じく粗末な柵の向こうに巨大な城壁という造りの<街>が見えてきたことで、レイラは速度を落とす。

王都ルデニオンのいわば<衛星都市>、<ラデノセシオン>であった。

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