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レイラ

それは楽しみですね

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今回の、<さいに似たデモニューマによる襲撃>では、レイラが出るまでもなく撃破でき人的被害もなかったものの、この<ルデニオン>より西側にある街や集落がデモニューマの襲撃を受けていることは、彼女も聞かされていた。しかし、レイラは、

『シェイナを保護対象とする』

と決めたので、<保護対象>を放ってまでそちらの救援に駆け付けることはしない。ロボットである彼女は、自身にできることとできないことを冷酷なまでに割り切ることができてしまう。

彼女が本来運用されていた方の人間社会では、彼女以外にも多数のロボットがいたことにより適切な配分も可能だったとはいえ、ここではそれを望むべくもない。

ならば、自身にできることをするだけだ。

そうして、威力偵察の実行を決めた翌々日、準備を整えたレイラが、いよいよ出発の時を迎えていた。

「それでは、行ってまいります」

「レイラ様……」

「レイラ様ぁ……」

シェイナとパティリエカが、屋敷の玄関でレイラを見送る。外套こそまとっているものの、その姿は『近所にちょっと出掛けてくる』という印象しか抱けないような軽装だった。この後、装備品を準備してある<詰所>に行って実際の装備を行うからだ。エギナはそこまで同行する。

「シェイナとパティリエカ様が作ってくださる外套を楽しみにしています」

レイラはあくまで笑顔で言う。その彼女がまとっている外套は、ニューティとシェイナとパティリエカが三人で作ったものだった。正直、サイズが完全には合っておらず、しかもシェイナとパティリエカが担当した部分は縫製が拙いので、シルエットもバランスが取れていない。

けれど、レイラはそれを大事そうにまとい、

「ありがとうございます」

と三人に頭を下げた。

「今度はもっとちゃんとしたのを作りますから……!」

「私も! シェイナには負けません! レイラ様がお召し上がりになるのにふさわしい逸品を作ってみせます…!」

シェイナとパティリエカは、目に涙をいっぱい溜めて、縋るように口にした。

「それは楽しみですね」

二人の言葉に、レイラはふわりと微笑んだ。その姿もまた、危険な任務に赴くそれとはまったく思えない。

「では、ニューティ、ブルーディス様、二人をよろしくお願いします」

「はい…!」

「お任せください!」

丁寧に頭を下げつつそう告げて、レイラは、エギナを伴い手を振りながら出発した。もっとも、屋敷からも見える場所にある詰所に行くだけなので、詰所に入る時にも視線を向けると、四人はまだ見送ってくれていた。

笑顔を浮かべながら改めて手を振って、レイラは詰所へと入っていく。すると今度は、何人もの兵士達が整列して彼女を迎えた。

「レイラ様に敬礼!」

あの<髭の小隊長>が号令を掛けると、兵士達が一斉に敬礼を。

「ありがとうございます」

レイラはそう応えながら、台の上に置かれた装備品が詰まった背嚢を手に取ったのだった。

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