異世界転移したロボ娘が、バッテリーが尽きるまでの一ヶ月で世界を救っちゃう物語

京衛武百十

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レイラ

砲撃

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<賤民達の自警団による見回り>

は、それ自体がこの<王都ルデニオン>の早期警戒網にもなっていった。実際、この夜も、

「デモニューマだ!」

見回りの一人が叫んだ。その声に他の男達がハッと視線を向けると、闇の中に、小さな火の玉のような赤い光が六つ。デモニューマの目が男達が持つ松明の灯りを反射して光っているのだ。

「デモニューマが出たぞぉ!!」

続けて、<声が大きいという特技>を持つ者が、渾身の力で叫び、他の者は力一杯松明を高く掲げて大きく回す。すると城壁に配された警備の兵士が異変を察し、デモニューマの出現を知らせる鐘を打ち鳴らした。

カーン! カーン!

という甲高い金属音は王宮まで届き、兵士や騎士達が一斉に身構える。レイラにあてがわれた屋敷でパティリエカのために待機していたブルーディスも、ベッドから飛び降り身支度を始める。

そんな人間達の前に現れたのは、巨大な岩のようなシルエットのデモニューマだった。松明の灯りに辛うじて浮かび上がったその姿は、真っ赤な目と鼻先の角だけが見て取れて、全容はまだ分からない。ただ、印象としては<さい>にも思えるだろうか。

自警団の男達は、

「デモニューマだ!」

「デモニューマが出たぞぉ!」

声の限りに叫んで、柵の内側の住人達の避難を促す。当然、柵の内側の賤民達も飛び起きて、脱兎のごとく逃げ出した。賤民達が用意できる農具や刃物ではまったく歯が立たないので、とにかくその場から離れて、城壁からの砲撃に自分達が巻き添えを受けないように備えるしかないのだ。

それは当然、自警団の者達も同じである。手にした<スペイド>や包丁は、完全に丸腰では心許ないので手にしているだけで、デモニューマを迎え撃つ武器としてはほとんど役には立たないものでしかない。

なので、

「来たぞ! 隠れろ!!」

柵の隙間から城壁の方を窺っていた一人が声を上げた瞬間、男達は柵に身を寄せ、祈るように可能な限り体を小さくした。直後、柵に何かが激しくぶつかる、

ゴッ! ガゴッッ!!

という音。同時に、柵の外の地面にも、何かがいくつも突き刺さる。

大型弩砲の投擲体だった。城壁からの砲撃が始まったのだ。金属製の投擲体が雨のように降り注ぎ、

「ゴエエエァァッッ!!」

「グヒィィィィッッ!!」

この世のものとは思えない<悲鳴>が上がる。そして闇の中で、真っ赤な光が激しく動き、明滅を繰り返した。月明かりに浮かび上がる岩のごときシルエットが苦し気に身もだえるのも分かる。

城壁からの大型弩砲による砲撃が、<犀に似たデモニューマ>を打ちのめしているのだった。

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