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レイラ
別の理
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夜。シェイナはニューティと共に、パティリエカは自分のために改めて運び込んでもらったベッドで、それぞれ眠りについたのを確認すると、レイラはやはり兵器用の工房へと向かうため、屋敷を出た。エギナは自身の屋敷に帰っている。
間際、パティリエカが滞在することが決まったことによりその警護のために同じく滞在を余儀なくされたブルーディスが、
「本当に大丈夫なのですか?」
レイラの身を案じて問い掛けてくる。昼は軍議。宵の内はシェイナとパティリエカの相手。深夜から朝にかけては工房と、まったく休むことのない彼女を見ていれば、普通の人間なら心配にもなってくるだろう。けれどレイラは、やはり美しい笑顔で、
「はい、以前にも申しましたが、私には、魔王を討ち倒すまでは休む必要がない<魔法>が掛けられているのです」
そう返した。けれどブルーディスは、
「それは、<魔法>と言うよりは、<呪い>の類では……?」
と、正直な印象を口にする。するとレイラも、
「そうですね。捉えようによっては<呪い>と言えなくもないのかもしれません。ですが私は、皆さまとは別の<理>の下にいるため、本当に休息は必要ないのです。しかしながら、ブルーディス様のお心遣いには深く感謝を申し上げます」
恭しく頭を下げる彼女に、ブルーディスも、
「ああ、いえ! 頭をお上げください、レイラ様! 出過ぎた真似でした。こちらこそ、お詫び申し上げます……!」
恐縮する。
そんな彼に見送られ、レイラは工房へと向かったのだった。
ロボットであるレイラには、本当に人間のような休息は必要ない。できれば一週間に一度程度のメンテナンスが推奨されているものの、それもあくまでメーカー側が推奨しているだけであり、実際には一ヶ月に一度程度でも問題なかった。
加えて、彼女にはメーカーオプションである、
<ナノマシンコーティング>
が施されていて、外装の細かい傷なども自動で修復されるのだ。こちらも、効果は約一年とされていて、ディーラーに持ち込めば無償で再度コーティングしてもらえることになっていた。
ただ、それについては、彼女のオーナーが最新機種に買い替えてそちらにデータのすべてを正常に移行できたため、<こちらのレイラ>のコーティングの効果は半年も残っていないが。
いずれにせよ、今日と明日の二日間で、可能な限り、新型弩砲を作り上げなければいけない。自分が威力偵察に出ている七日間の間、確実にデモニューマに対処してもらうために。
間際、パティリエカが滞在することが決まったことによりその警護のために同じく滞在を余儀なくされたブルーディスが、
「本当に大丈夫なのですか?」
レイラの身を案じて問い掛けてくる。昼は軍議。宵の内はシェイナとパティリエカの相手。深夜から朝にかけては工房と、まったく休むことのない彼女を見ていれば、普通の人間なら心配にもなってくるだろう。けれどレイラは、やはり美しい笑顔で、
「はい、以前にも申しましたが、私には、魔王を討ち倒すまでは休む必要がない<魔法>が掛けられているのです」
そう返した。けれどブルーディスは、
「それは、<魔法>と言うよりは、<呪い>の類では……?」
と、正直な印象を口にする。するとレイラも、
「そうですね。捉えようによっては<呪い>と言えなくもないのかもしれません。ですが私は、皆さまとは別の<理>の下にいるため、本当に休息は必要ないのです。しかしながら、ブルーディス様のお心遣いには深く感謝を申し上げます」
恭しく頭を下げる彼女に、ブルーディスも、
「ああ、いえ! 頭をお上げください、レイラ様! 出過ぎた真似でした。こちらこそ、お詫び申し上げます……!」
恐縮する。
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加えて、彼女にはメーカーオプションである、
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ただ、それについては、彼女のオーナーが最新機種に買い替えてそちらにデータのすべてを正常に移行できたため、<こちらのレイラ>のコーティングの効果は半年も残っていないが。
いずれにせよ、今日と明日の二日間で、可能な限り、新型弩砲を作り上げなければいけない。自分が威力偵察に出ている七日間の間、確実にデモニューマに対処してもらうために。
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