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レイラ
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<魔王>に関する情報を得るためにレイラが直々に威力偵察に出ることが決まり、屋敷に戻ったところで、
「明後日より七日間、私はこの屋敷を留守にしますので、その間、シェイナは家事の習熟にいそしんでいただくようにお願います」
皆の前で告げた。
「え?」
「そんな…!」
事情を知っているエギナと、あくまで使用人の立場でしかない上に来たばかりのニューティはともかく、シェイナとパティリエカは戸惑いを隠せなかった。
特に、レイラから、
『あなたを彼女に預けてしまったりはしません』
と言ってもらえていたシェイナにとってはショックだっただろう。もちろんレイラもそれは察していて、隣に座っていた彼女の体をそっと抱き締め、
「心配ありません。七日間だけです。私は必ず戻ってきます」
穏やかに微笑みながらそう告げた。
「本当ですね…? 本当に戻ってきてくれますね……?」
縋るように問い掛ける彼女にも、
「はい。もちろんです。私は嘘を吐くことができませんから」
柔らかく語り掛ける。その上で、
「それでは、改めて、私のための外套を、シェイナ自身の手でしつらえていただけますか? 私が帰ってくるまでの間に、ニューティから教わって」
とも。するとシェイナは、
「はい! 分かりました……!」
『レイラのために』ということであれば、シェイナのモチベーションは高まる。
その一方で、パティリエカは、
「レイラ様! 私は納得できません…! 七日間もレイラ様と離れ離れだなんて……!」
シェイナとは反対側に座ったパティリエカが、レイラに縋りつきながら抗議した。しかも彼女は、さすがに王族であるがゆえに、レイラが七日間も屋敷を留守にするというのは魔王討伐がらみのことに違いないと察したのもある。
それどころか、
『魔王討伐が決まったのでは……!?』
とも思ってしまった。さらに、
『さすがのレイラ様でも、魔王が相手では無事に帰ってこられないかもしれない……』
とも咄嗟に思ってしまったのである。
だが、それに対しても、レイラは、
「パティリエカ様、そこまで私を想ってくださることについては大変に光栄に存じます。ですが、パティリエカ様も王族のお一人であれば、国の大事に関わることの重要性も理解していただけるのではないでしょうか?」
パティリエカの方に向き直って言った。手は、シェイナの手を包み込むように握ったままで。
「でも……でも……」
シェイナの手を握ったままとはいえしっかりと自分を見詰めてくれるレイラに、パティリエカは、王族としてではなく、一人の<子供>として、甘える目を向けていたのだった。
「明後日より七日間、私はこの屋敷を留守にしますので、その間、シェイナは家事の習熟にいそしんでいただくようにお願います」
皆の前で告げた。
「え?」
「そんな…!」
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特に、レイラから、
『あなたを彼女に預けてしまったりはしません』
と言ってもらえていたシェイナにとってはショックだっただろう。もちろんレイラもそれは察していて、隣に座っていた彼女の体をそっと抱き締め、
「心配ありません。七日間だけです。私は必ず戻ってきます」
穏やかに微笑みながらそう告げた。
「本当ですね…? 本当に戻ってきてくれますね……?」
縋るように問い掛ける彼女にも、
「はい。もちろんです。私は嘘を吐くことができませんから」
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とも。するとシェイナは、
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『レイラのために』ということであれば、シェイナのモチベーションは高まる。
その一方で、パティリエカは、
「レイラ様! 私は納得できません…! 七日間もレイラ様と離れ離れだなんて……!」
シェイナとは反対側に座ったパティリエカが、レイラに縋りつきながら抗議した。しかも彼女は、さすがに王族であるがゆえに、レイラが七日間も屋敷を留守にするというのは魔王討伐がらみのことに違いないと察したのもある。
それどころか、
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とも思ってしまった。さらに、
『さすがのレイラ様でも、魔王が相手では無事に帰ってこられないかもしれない……』
とも咄嗟に思ってしまったのである。
だが、それに対しても、レイラは、
「パティリエカ様、そこまで私を想ってくださることについては大変に光栄に存じます。ですが、パティリエカ様も王族のお一人であれば、国の大事に関わることの重要性も理解していただけるのではないでしょうか?」
パティリエカの方に向き直って言った。手は、シェイナの手を包み込むように握ったままで。
「でも……でも……」
シェイナの手を握ったままとはいえしっかりと自分を見詰めてくれるレイラに、パティリエカは、王族としてではなく、一人の<子供>として、甘える目を向けていたのだった。
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