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レイラ

次の段階

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『分かりました!』

笑顔で返事をして、パティリエカは踵を返し、控室へと戻っていった。もちろん、パティリエカの警護が役目のブルーディスも続く。それを見届け、レイラは軍議へと向かう。

『いよいよ次の段階に進むべきでしょうね』

そう考えながら。

<次の段階>

それは―――――



「魔王に対して威力偵察を行うですと!?」

「あまりに無茶だ!」

「危険では!?」

軍議を再開した冒頭に、

『魔王なる者の正確な情報を得るために、威力偵察を行おうと思います』

と告げたレイラに、軍の幹部達が口々に声を上げる。

しかしそんな彼らに、レイラは、

「危険は承知の上です。ですが、魔王なる者の情報が皆無の状態で挑むのは更に危険というものでしょう。加えて、勝算も下がります。ゆえに私は、多少の危険を冒してでも情報を得るべきと考えます」

やはり冷静に告げる。

「それは、確かにそうですが……」

「しかし、これまで偵察に出した者達は誰一人戻ってはおりません」

「みすみすレイラ様を危険に曝すようなことは……」

渋る幹部達に、こんどはエギナが、

「心配要らん! 偵察は私が行う! そうすればレイラを温存できる!」

どん!と自身の胸を叩きながら宣言した。が、当のレイラは、

「いえ、威力偵察は私自身が行います」

と。これにはエギナも、

「え…っ!?」

唖然とするが、

「魔王なる者がいるとされる<エジェレネイカ山>までは、人の足では一ヶ月ひとつきかかるとお聞きしました。しかしそれでは、往復するだけでも二ヶ月ふたつきかかってしまいます。ですが、私であれば、偵察を含めても七日で戻ってくることができるでしょう」

レイラはあくまで淡々と語る。

「しかし……!」

食い下がるエギナに対しても、

「エギナ様もご覧になられた<縮地の魔法>が私にはあります。それを用いれば、デモニューマに捉えられることなく威力偵察が行えます」

穏やかに説明した。

「あ……!」

そこまで言われてようやく、エギナにもピンと来たようだ。

<縮地の魔法>とは、翼竜型のデモニューマの襲撃の際に見せた、

<危機対応モードによる高速移動>

のことである。この世界の人間にとっては、それこそ<瞬間移動>にも等しいものだっただろう。レイラはそれを、自身のデータベースの中にあったフィクションで用いられていた名称を当てはめて称したのである。

「なるほど、それなら……」

「七日で行って帰るというのも頷ける……」

軍の幹部達も納得いったように呟いた。さらにレイラは、改めてエギナに、

「ご理解いただけましたでしょうか?」

問い掛けた。するとエギナは、渋々、

「そう…だな……レイラの言うとおりだ……」

応えてくれた。そこでレイラは、

「では、これからすぐに準備を始め、明後日には出発したいと思います」

そう告げたのだった。

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