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レイラ
ニューティ
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デモニューマの襲撃による犠牲が日常の一コマに過ぎない現実を改めて実感しながらも、レイラは、
「よろしくお願いします」
と頭を下げた。
それに対してパティリエカは嬉しそうに屋敷の外で待機していた従者に、
「私達を王宮に送り届けた後、ニューティを連れてきなさい。いいですね?」
と命じた。
「仰せのままに」
従者は恭しくそう応え、レイラ達を王宮に送り届けたその足で、パティリエカの屋敷へと向かい、
「私を、ですか……?」
パティリエカ直々のお達しにより王宮へと向かうようにと告げられて戸惑う、いかにもおとなしそうな、それでいて清潔感のあるメイド姿の女性、<ニューティ>を連れて王宮へと戻った。
そして、軍議の間の休憩の時間に、控室で、レイラに引き合わせる。
「初めまして。ニューティと申します」
明らかに困惑した様子ではありつつ丁寧に挨拶をするその女性に、レイラはすっと近付き、
「初めまして。急にお呼びだてして申し訳ございません」
深々と頭を下げる。そのあまりに優美な物腰と、煌めきつつさらりと流れるように揺れるプラチナブロンドの髪に、ニューティは目を奪われていた。
「私の名は、レイラ・タリア。実は貴女にこちらのシェイナの乳母を引き受けていただきたく、ご足労願った次第です」
そこまで言われてようやく、ニューティはレイラの背後に十二歳くらいの少女が一人、立っているのに気付いた。
シェイナだった。
しかし、ニューティはシェイナの顔を見た途端、
「ミーニャ……っ!?」
声を上げて両手で口を覆い、強張ってしまう。
「ミーニャ、とは? 彼女の名前はシェイナですが」
ニューティの反応から誰かと見間違えたことは察しつつも、レイラは敢えてそう声を掛けた。するとニューティもハッとなって、
「も…申し訳ございません! あまりに似ていたもので……!」
慌てて頭を下げつつ口にした。そんな彼女に、レイラは、
「亡くなられたお子さんに似ていたのでしょうか?」
と問い掛ける。瞬間、ニューティの体がビクンっと反応する。
「……はい…ミーニャは、私の娘です……去年、デモニューマに襲われて……」
ニューティは頭を下げたまま、絞り出すように言った。その体は、今にも崩れ落ちそうなほど震えていた。
レイラには、ニューティの<悲しみ><苦しみ><悔恨>が、バイタルサインという形で明確に察知できてしまう。だからレイラは、彼女の肩にそっと手を触れ、
「どうぞ、顔を上げてください。それはお辛かったですね。無念はいかばかりかとお察しします」
「……っ!?」
思いがけない言葉に、ニューティは思わず頭を上げ、レイラを見詰めてしまったのだった。
「よろしくお願いします」
と頭を下げた。
それに対してパティリエカは嬉しそうに屋敷の外で待機していた従者に、
「私達を王宮に送り届けた後、ニューティを連れてきなさい。いいですね?」
と命じた。
「仰せのままに」
従者は恭しくそう応え、レイラ達を王宮に送り届けたその足で、パティリエカの屋敷へと向かい、
「私を、ですか……?」
パティリエカ直々のお達しにより王宮へと向かうようにと告げられて戸惑う、いかにもおとなしそうな、それでいて清潔感のあるメイド姿の女性、<ニューティ>を連れて王宮へと戻った。
そして、軍議の間の休憩の時間に、控室で、レイラに引き合わせる。
「初めまして。ニューティと申します」
明らかに困惑した様子ではありつつ丁寧に挨拶をするその女性に、レイラはすっと近付き、
「初めまして。急にお呼びだてして申し訳ございません」
深々と頭を下げる。そのあまりに優美な物腰と、煌めきつつさらりと流れるように揺れるプラチナブロンドの髪に、ニューティは目を奪われていた。
「私の名は、レイラ・タリア。実は貴女にこちらのシェイナの乳母を引き受けていただきたく、ご足労願った次第です」
そこまで言われてようやく、ニューティはレイラの背後に十二歳くらいの少女が一人、立っているのに気付いた。
シェイナだった。
しかし、ニューティはシェイナの顔を見た途端、
「ミーニャ……っ!?」
声を上げて両手で口を覆い、強張ってしまう。
「ミーニャ、とは? 彼女の名前はシェイナですが」
ニューティの反応から誰かと見間違えたことは察しつつも、レイラは敢えてそう声を掛けた。するとニューティもハッとなって、
「も…申し訳ございません! あまりに似ていたもので……!」
慌てて頭を下げつつ口にした。そんな彼女に、レイラは、
「亡くなられたお子さんに似ていたのでしょうか?」
と問い掛ける。瞬間、ニューティの体がビクンっと反応する。
「……はい…ミーニャは、私の娘です……去年、デモニューマに襲われて……」
ニューティは頭を下げたまま、絞り出すように言った。その体は、今にも崩れ落ちそうなほど震えていた。
レイラには、ニューティの<悲しみ><苦しみ><悔恨>が、バイタルサインという形で明確に察知できてしまう。だからレイラは、彼女の肩にそっと手を触れ、
「どうぞ、顔を上げてください。それはお辛かったですね。無念はいかばかりかとお察しします」
「……っ!?」
思いがけない言葉に、ニューティは思わず頭を上げ、レイラを見詰めてしまったのだった。
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