異世界転移したロボ娘が、バッテリーが尽きるまでの一ヶ月で世界を救っちゃう物語

京衛武百十

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レイラ

ここまで強いと逆に

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「うおおお!」

「すげえ!!」

空から襲撃してきた翼竜型のデモニューマさえ、人々の避難や、兵士らによる迎撃態勢が完全に整う前に撃破してみせたレイラに歓声が上がる。

傍から見ればあまりにも呆気ないものだったが、ロボットであるレイラには『相手を侮る』ということができない。油断するということができない。人間の指示があればもう少し<演出>を加えるということもできなくはないものの、それすら、<権限>を持つ人間から指示が与えられなければ行えない。

自身が発揮できる最大のパフォーマンスで最大の効果を得ることをただ目指すだけである。

「ありがとう!」

「ありがとうございます!」

口々に感謝の意を示す人々の中に、あの、

<道端に捨てられていた荷車をレイラがリビルドした小型の荷車>

を引いている者の姿も見えた。初めて<四脚獣型のデモニューマ>を撃破した時にそのまま残していったものをちゃっかり拾得、自分のものにしてしまった者がいたようだ。

とは言え、シェイナを乗せるために応急で作ったものである上、<明らかに権利放棄された廃棄物>であったとはいえ拾得物をそのまま利用したのはレイラも同じなので、彼女も放棄した以上はどのように利用されようとも口出しするつもりもなかったこともあり、敢えてスルーした。

むしろ、役立ててもらえているならそれでよかった。

「いえ、これが私の役目ですので」

感謝する人々に囲まれても、レイラは、穏やかな微笑みを浮かべながらも淡々とそう応え、王宮へと戻るべく、ようやく駆け付けた警備の兵士達と共に城壁に向かって歩き出した。

出迎えの兵士達の中には、あの、<髭面の小隊長>の姿もあった。そして彼は、

「先日は大変失礼いたしました」

深々と頭を下げる。初めて顔を合わせた時の態度についての謝罪だった。けれどレイラはそれに対しても、

「貴方様はご自身の役目に忠実であっただけです。謝罪の必要はないと私は考えます」

柔らかく声を掛けるだけだ。

「ありがたきお言葉……!」

髭面の小隊長はその場に平伏せんばかりの勢いで恐縮する。

しかし、それにかまっている時間も今は惜しいので、レイラは先を急いだ。

そうして城壁内に戻ると、今度は、

「もう終わったのか!?」

ようやくここまで辿り着いたエギナが息を切らしながら叫ぶように言った。

「やれやれ、ここまで強いと逆に呆れるな」

正直な気持ちを口にする。とは言え、それは彼女なりの最大の賛辞だったのだろう。

「ありがとうございます」

レイラも笑みを返してから、王宮に向けて手を振った。先ほど軍議を行っていた部屋の窓からシェイナとパティリエカが顔を覗かせていたことに気付いたからであった。

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