26 / 108
レイラ
洗練された文明
しおりを挟む
『これは、思った以上に洗練された文明のようですね。地球で言えば古代ローマ帝国の流れを汲む感じでしょうか』
綺麗に整備された石畳の道路。きちんと車道と歩道が分けられていて、ゴミもほとんど落ちていない。
いわゆる<中世ヨーロッパ>に見られるような、汚物がうず高く積もり、その中を歩くために<ハイヒール>が作られたとか、上から降ってくる汚物を被らないように<ハット>が作られたとか、女性が使う<日傘>も実はそのためのものであるとか言われるような、
<汚物に塗れて一千年>
などと揶揄されるような、後にペストの大流行を招く原因ともなったと言われるような、不潔極まりないそれではなかった。
『地球のヨーロッパにおいて、古代ローマの上下水道が失われたことによる衛生環境の悪化が起こったのとは違い、ここでは技術がしっかりと継承されたようですね』
と推測する。
メインストリートと思しき通りの両側には多くの店が並び、実に活気に溢れている。対して、城壁の外のそれは、都市計画に則って作られたものではないのが一見して分かるくらいに雑然としつつ活気があったものの、こちらは実に整然とした上で活気がある。まるで違う国に来たかのような気さえするほど異なっていた。
「乗れ!」
そして、通りに面した、<駐車場>と思しきスペースにとめられていた馬車(繋がれているのはやはり馬というよりロバに近い印象のある生き物だったが)に乗るように、エギナが促した。それと同時に彼女は、
「お前らは仕事に戻れ!」
困り顔の髭面の小隊長らに向けて声を発する。そこに並んだ兵士達は、レイラとシェイナに憐れみがこもった視線を向けてくる。
それでも、シェイナを抱きかかえたレイラは敢えて素直に従い、馬車(便宜上、<馬車>と称する)へと乗り込むと、
「行け!」
エギナが御者に命じて発車させた。兵士達を残して。
走り出した馬車の作りも、実に丁寧なものだ。彼女用に設えられたものかもしれない。
その中で、やはり興奮した様子のエギナの話を聞きながら、レイラは街の情報を得つつ、言葉の補正をさらに続けた。
そうして馬車はやがて坂道を登り始め、十五分ほどで立派な城へと辿り着いた。
「エギナ様? 今日はまたどのようなご用件で?」
城の門番らしき兵士が訝し気に窓から中を覗き込みつつ、尋ねる。
「たった一人で瞬く間にデモニューマを退けた強者を連れてきたのだ! 陛下にお目通り願いたい!」
レイラに視線を送りつつ、弾んだ声で告げると、兵士がやはり呆れたような表情になったのが分かったのだった。
綺麗に整備された石畳の道路。きちんと車道と歩道が分けられていて、ゴミもほとんど落ちていない。
いわゆる<中世ヨーロッパ>に見られるような、汚物がうず高く積もり、その中を歩くために<ハイヒール>が作られたとか、上から降ってくる汚物を被らないように<ハット>が作られたとか、女性が使う<日傘>も実はそのためのものであるとか言われるような、
<汚物に塗れて一千年>
などと揶揄されるような、後にペストの大流行を招く原因ともなったと言われるような、不潔極まりないそれではなかった。
『地球のヨーロッパにおいて、古代ローマの上下水道が失われたことによる衛生環境の悪化が起こったのとは違い、ここでは技術がしっかりと継承されたようですね』
と推測する。
メインストリートと思しき通りの両側には多くの店が並び、実に活気に溢れている。対して、城壁の外のそれは、都市計画に則って作られたものではないのが一見して分かるくらいに雑然としつつ活気があったものの、こちらは実に整然とした上で活気がある。まるで違う国に来たかのような気さえするほど異なっていた。
「乗れ!」
そして、通りに面した、<駐車場>と思しきスペースにとめられていた馬車(繋がれているのはやはり馬というよりロバに近い印象のある生き物だったが)に乗るように、エギナが促した。それと同時に彼女は、
「お前らは仕事に戻れ!」
困り顔の髭面の小隊長らに向けて声を発する。そこに並んだ兵士達は、レイラとシェイナに憐れみがこもった視線を向けてくる。
それでも、シェイナを抱きかかえたレイラは敢えて素直に従い、馬車(便宜上、<馬車>と称する)へと乗り込むと、
「行け!」
エギナが御者に命じて発車させた。兵士達を残して。
走り出した馬車の作りも、実に丁寧なものだ。彼女用に設えられたものかもしれない。
その中で、やはり興奮した様子のエギナの話を聞きながら、レイラは街の情報を得つつ、言葉の補正をさらに続けた。
そうして馬車はやがて坂道を登り始め、十五分ほどで立派な城へと辿り着いた。
「エギナ様? 今日はまたどのようなご用件で?」
城の門番らしき兵士が訝し気に窓から中を覗き込みつつ、尋ねる。
「たった一人で瞬く間にデモニューマを退けた強者を連れてきたのだ! 陛下にお目通り願いたい!」
レイラに視線を送りつつ、弾んだ声で告げると、兵士がやはり呆れたような表情になったのが分かったのだった。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜
EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」
優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。
傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。
そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。
次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。
最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。
しかし、運命がそれを許さない。
一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか?
※他サイトにも掲載中
異世界起動兵器ゴーレム
ヒカリ
ファンタジー
高校生鬼島良太郎はある日トラックに
撥ねられてしまった。そして良太郎
が目覚めると、そこは異世界だった。
さらに良太郎の肉体は鋼の兵器、
ゴーレムと化していたのだ。良太郎が
目覚めた時、彼の目の前にいたのは
魔術師で2級冒険者のマリーネ。彼女は
未知の世界で右も左も分からない状態
の良太郎と共に冒険者生活を営んで
いく事を決めた。だがこの世界の裏
では凶悪な影が……良太郎の異世界
でのゴーレムライフが始まる……。
ファンタジーバトル作品、開幕!

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる