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レイラ

悪い癖

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レイラの対応は、圧倒的な力の差を見せ付けて戦意を奪うためのものだった。

力に頼るタイプほど効果があるものだ。同時に、感情を一気に吐き出させることによって逆に沈静化も図るという狙いもある。

なのに、崩れ落ちるように地面に座り込んだエギナの様子を注意深く見守っていたレイラは、彼女のパニック状態が収まったことは察知しつつ、一般的なそれとは違う反応を検出した。

『これは?』

少し驚いたような表情をしたレイラの視線の先で、エギナが顔を上げ、見詰めてくる。

顔を紅潮させ、「はあはあ」と荒い息で、かつ、瞳を潤ませて。

『性的な興奮状態、ですか?』

レイラが思ったとおり、それは明らかに性的に興奮している人間の表情だった。

「お前……いい……! いいぞ…! 今までで一番いい……っ!」

それだけでは何を言っているのか判別できないような声を上げて、這い寄ってくる。

異様と言えばあまりにも異様な姿だったが、遠巻きに様子を見ていた髭面の小隊長が頭を抱え、

「中隊長の悪い病気クセが……」

と呟くのがレイラの聴覚センサーに捉えられる。しかも、他の兵士達も同様に困惑しつつ呆れた表情。

『なるほど、これがエギナ様の<性癖>なのですね』

レイラはそう察した。

「なあお前! まだ本気じゃないだろう? どうすればお前の本気を見られる…? どうすればお前の本気を引き出すことができる……っ?」

やがてレイラの体に縋りついて陶然とした表情でエギナは見上げてくる。

仮にも<モデルのような美女の姿>をしているだけあって、性的に興奮した状態の人間に迫られることも何度か経験したレイラだったが、彼女は人間のそういう欲求に応えられるような仕様にはなっていない。彼女の本来の用途は、あくまで<要人警護>なのだから。

ゆえに、

「エギナ様。私は、要人を警護するためにこの力を授けられた者です。よって、警護対象に危険が迫った場合にこそ、その真価を発揮します。ですので、あの<デモニューマ>と呼ばれる獣から人々を守る役目をいただければ、私は、自身が発揮しうる最大限のパフォーマンスをお見せすることができるでしょう。

そのためにも、陛下にお目通り願いたいのです」

端的に、用件だけをエギナに告げた。するとエギナも、

「そうか! お前はデモニューマ共と戦いたいのだな!? 分かった! 私の方からも父上に進言してみよう!!」

ぱあっと顔を輝かせて嬉しそうに言った。

「中隊長! そんな勝手は許されませんよ! お考え直しください!!」

髭面の小隊長が声を上げるものの、

「うるさい! お前は黙ってろ! 私はこいつの本気を見たいのだ! そのためならなんだってするぞ! 裸でデモニューマの前にだって立ってやる!」

エギナはますます突拍子もないことを言い出したのだった。

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