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レイラ

中隊長

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「お前が、デモニューマ共を退けたのか……」

詰所から現れた女性は、腰に下げた剣に手をやりつつ、不敵な笑みを浮かべた。明らかに高揚し、高い戦意の発露がレイラには察知できてしまう。

『この流れは』

彼女がそう思った時には、

「お前! 私と手合わせしろ!」

<中隊長の女性>が、そう声を上げて気迫を叩きつけてきた。

「中隊長!?」

髭面の小隊長が声を上げるその後ろで、兵士達が、

「また出たよ、中隊長の悪い癖が……」

「なんであの人はああなんだか……」

「あれがなきゃ、普通にいい女なんだがなあ……」

「まったく。これだから出世もできないんだろうに……」

「そりゃ<お姫様>として社交界には出せないよな……」

呆れたように呟くのがレイラの聴覚センサーには捉えられてしまう。

「中隊長! おやめください! こいつらは今から取調べを!」

慌てる髭面の小隊長に、中隊長は、

「心配するな! 私が直々に取り調べるだけだ! こいつの体に訊いてな!! おい! 木剣を持ってこい!!」

自身の背後に控えていた兵士に命じた。

「どうやら、辞退はできないようですね」

レイラには、中隊長の本気ぶりが察せられてしまうので、ここは素直に応じた方が早いと判断、申し出を受けることにした。その上で、

「こちらのシェイナの安全を保障していただけるのであれば、お受けいたします」

と。

「ああ! もちろんだ! 私は子供には用はない! お前だ! デモニューマ共を一瞬で退けたお前と勝負がしたい!!」

ついさっき、『取り調べる』と言っておいて『勝負がしたい』だから、本当に困ったものである。もう止められないと悟った兵士達が下がる中、

「私の名は、エギナ・バルシア! 魔王を倒し英雄になる女だ!」

「私は、レイラ・タリア。遭難者です」

「遭難者!? はっ! 面白いことを言う!!」

<エギナ・バルシア>と名乗ったその中隊長は、木剣を振りかざし、打ち込んできた。

それをレイラは、手にした木剣で受け止める。が、その瞬間、エギナの左脚が跳ね上がり、剣を持ち上げたことで空いたレイラの右脇腹に叩き込まれる。

普通の人間であれば一撃で悶絶しその場に蹲るであろう、凄まじい蹴りだった。

『勝った……!』

エギナがそう思ってしまうくらいには、十分な手応えがあった。

しかし次の瞬間には、勝ち誇った表情が、驚愕のそれに変わる。何しろ、自分の蹴りが確実に捉えたはずの相手が、平然と立っていたのだから。しかも、脚に伝わった感触の違和感。

まるで、なめらかな皮で包まれた巨大な岩でも蹴ったかのような。

『こいつっ……!』

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