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レイラ
ルデニオン
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そんな子供達の服も、シェイナが着ているものよりはまだマシとは言え、継ぎ接ぎだらけの質素なものだった。おそらく、兄姉の<お下がり>を繕いながら着続けているものなのだろう。
ただ、質素ではあるもののそれほど薄汚れた印象でも荒んだ印象でもないので、これがここの<普通>なのだと思われた。
『地球でも、繕ってまで長く服を使い続けるということが行われなくなったのは、二十世紀も終盤に差し掛かってのことだと記録にはありますね』
レイラはこうしてさらに情報を集めていく。
同時に、人々の会話から言語を解析。どうやら基本的には<英語>のようでありつつ、やはり強い<訛り>のような変化が見られた。シェイナが特別なのではなく、言語そのものが変質してしまっているのだろう。
ただ、同時に、古いラテン語を思わせる語彙が多数含まれていることが不思議だった。英語が変質したのだとすれば、なぜ、わざわざ古いラテン語を取り入れる必要があったのか。かと思うと、比較的新しいラテン語らしきものも。
『これでは、『英語が変質した』のではなく、『地球の<英語>が成り立っていったのとは別の経緯を辿って成立した』かのような』
そんな風にも考えてしまう。
ただ、それもやはり、裏付けがなければ推測の域を出ない。
『ですが、現状、意思の疎通が可能であるならば、大きな問題にはなりません。この惑星がいかなるものであっても、私が最も尊重すべきは<人々の幸福>であることも変わりません』
改めてそれを確認する。
けれど、その時、
「デモニューマだ!!」
誰かが叫んだ。
『<デモニューマ>? <daemonium>ですか?』
発音やイントネーションが違っていたために瞬間的には察せられなかったものの、すぐに候補として<魔>を意味するラテン語<daemonium>が上がってくる。
それと同時に、
「きゃーっ!!」
と悲鳴がいくつも上がり、人々が向けた視線の先を見たレイラの目が、丸太の柵を飛び越えてくる<影>を捉えていた。
『ライオン?』
その<影>を捉えた瞬間にはそう思ってしまったが、彼女が知るどの<ライオン>の特徴にも、完全には合致しなかった。
金色に輝く立派な鬣を持ちつつ、他は濃いグレーの体色。頭胴長は約四メートル。推定体重四百キロ前後と思しきその体は、ライオンにしては大きすぎる。また、その体型から推測される骨格も、ライオンとは異なっているように見えた。
それが三頭。
高さ二メートルの柵を楽々と越えて、街へと侵入してきたのだ。
<デモニューマ>の名を聞いた途端、シェイナも青褪める。あの、<T-REXに似た獣>に襲われた時と同じ表情なのだった。
ただ、質素ではあるもののそれほど薄汚れた印象でも荒んだ印象でもないので、これがここの<普通>なのだと思われた。
『地球でも、繕ってまで長く服を使い続けるということが行われなくなったのは、二十世紀も終盤に差し掛かってのことだと記録にはありますね』
レイラはこうしてさらに情報を集めていく。
同時に、人々の会話から言語を解析。どうやら基本的には<英語>のようでありつつ、やはり強い<訛り>のような変化が見られた。シェイナが特別なのではなく、言語そのものが変質してしまっているのだろう。
ただ、同時に、古いラテン語を思わせる語彙が多数含まれていることが不思議だった。英語が変質したのだとすれば、なぜ、わざわざ古いラテン語を取り入れる必要があったのか。かと思うと、比較的新しいラテン語らしきものも。
『これでは、『英語が変質した』のではなく、『地球の<英語>が成り立っていったのとは別の経緯を辿って成立した』かのような』
そんな風にも考えてしまう。
ただ、それもやはり、裏付けがなければ推測の域を出ない。
『ですが、現状、意思の疎通が可能であるならば、大きな問題にはなりません。この惑星がいかなるものであっても、私が最も尊重すべきは<人々の幸福>であることも変わりません』
改めてそれを確認する。
けれど、その時、
「デモニューマだ!!」
誰かが叫んだ。
『<デモニューマ>? <daemonium>ですか?』
発音やイントネーションが違っていたために瞬間的には察せられなかったものの、すぐに候補として<魔>を意味するラテン語<daemonium>が上がってくる。
それと同時に、
「きゃーっ!!」
と悲鳴がいくつも上がり、人々が向けた視線の先を見たレイラの目が、丸太の柵を飛び越えてくる<影>を捉えていた。
『ライオン?』
その<影>を捉えた瞬間にはそう思ってしまったが、彼女が知るどの<ライオン>の特徴にも、完全には合致しなかった。
金色に輝く立派な鬣を持ちつつ、他は濃いグレーの体色。頭胴長は約四メートル。推定体重四百キロ前後と思しきその体は、ライオンにしては大きすぎる。また、その体型から推測される骨格も、ライオンとは異なっているように見えた。
それが三頭。
高さ二メートルの柵を楽々と越えて、街へと侵入してきたのだ。
<デモニューマ>の名を聞いた途端、シェイナも青褪める。あの、<T-REXに似た獣>に襲われた時と同じ表情なのだった。
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