異世界転移したロボ娘が、バッテリーが尽きるまでの一ヶ月で世界を救っちゃう物語

京衛武百十

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レイラ

情報収集

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さらに進むと、それまでまったく舗装されていなかった道が、石畳という形で舗装された道へと合流した。そしてそこには、複数の馬車の姿。

いや、<馬>と言うよりは、ロバに近いだろうか。多くの人間が<馬>と聞いて思い浮かべるであろういわゆる<サラブレッド種>に比べて明らかに小さく、それでいてがっちりとした印象のある、足の太い、

<ロバのようにも見える動物>

が牽いている車だった。

『明らかに、観光用の馬車などではないですね。日常的な交通手段として用いられていると思しき、使い込まれた車両です。しかも、<自動車>は見たらない。道も、自動車の運用を想定した造りではありませんし』

口には出さずそんなことを考えつつ、レイラは情報収集を続けた。

印象としては、産業革命以前のヨーロッパを思わせる光景だろうか。

テーマパークにはこの種の演出を施したものもあるものの、テーマパークならそれこそロボットが必ず運用されているにも拘らず、やはり一切、<データが含まれた電波>が受信できない。レーザー通信の類もない。

もしテーマパークだとしても、これほどまでに徹底したものなど、彼女は聞いたこともなかった。

ここまで来るとさすがに、

『よくある<異世界転移>だ!』

と人間なら確信に変わるところかもしれないとしても、ロボットであるレイラにはどこまで行ってもそう判断することができない。なにしろ、

『そのようなことが物理的に起こりえるという大前提をロボットは持たない』

がゆえに。なので彼女は、結論を出さないままに、現状に沿った対応を行うことになる。その上で、『人間の幸福に資する』という自身に与えられた至上命題のために可能な限りの手段を取る。

それだけだ。人間が暮らすありとあらゆる場所で運用される可能性を持つロボットである彼女にとってはここがどこであろうとそんなことはさほど重要ではないのだ。

「街だ!」

レイラが引く荷車の荷台に乗ったシェイナが声を上げた。その視線の先には、高さ二メートルほどの、丸太らしきものを地面に突き立てて並べた<柵>が連なり、その奥に石造りと思しき低い建物が雑多に並んでいるのが見えた。

そしてさらにその向こうには、こちらは加工した石を積み上げたと見えるいかにも堅牢な<城壁>と、その上に覗く高台に築かれた<城>。

「なるほど。<街>ですね」

呟くようにレイラも応える。

こうして二人は、塀の一角に設けられた<門>をくぐり、<ルデニオン>と呼ばれる、活気は感じられつつ同時にいささか雑然とした印象のある街へと到着した。

すると、到着早々、

「わあ、なにこれなにこれ!」

「私も乗りたい乗りたい!」

レイラが引きシェイナが乗る荷車に、子供達が群がってきた。

普通に使われているものよりも小さく、しかも荷台には椅子が一つだけで、そこには女の子が一人で座っているというのが、子供達の目にはとても贅沢なものに見えたようであった。

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