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レイラ
コーチビルダーの手によるアンティーク風の製品
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見ていたシェイナにはそれこそ何をしているのかさっぱり分からなかったものの、見る者が見れば、レイラが折れた車軸に<継手>の加工を施し、たちまち繋ぎ合せてしまったのが分かっただろう。
さらには、歪な車輪の縁の部分をカットして人間の目には完全な真円に見えるほどに加工。さらにさらに、車軸が短くなった分、車体の幅や寸も詰めてたちまち一回り小さな荷車を作ってしまったのだった。
それだけじゃない。荷台に使われていた材木の表面も僅かに削ぎ落とし真新しい板にしてみせたのだ。
あの、<ただのゴミ>だった粗末な手作りの荷車が、<コーチビルダーの手によるアンティーク風の製品>にも見えるものへと大変身を遂げたのである。しかも、僅か一時間ほどで。
それをレイラは、自身の髪以外の道具をまったく使わず、釘などそれこそ指で摘んでそのまま押し込んで、作ってみせた。
それどころか、幅や寸を詰めたことで余った板を加工して<板バネ>のようにし、素になった荷車にはなかった<サスペンション>まで。
「抱かれた状態での長時間の移動は、シェイナにとっても負担が大きいですからね。これなら少しは楽かもしれません」
「わあ…♡」
自分のために専用の<車>を用意してくれたことに、目を輝かせる。
そんなシェイナを抱え上げ、やはり余った板で荷台にしつらえた椅子に彼女を座らせて、再び街に向かって歩き出した。
しばらく行ったところで川を見付けるとレイラはその水を口に含み、毒味。問題がないのを確認すると、川原に落ちていた流木を裂いてこすり合わせ若干湿っていたことなどものともせず火を熾し焚火にし、同じく川原に落ちていた石を割って内側に石を打ちつけて削って<椀>にして水を汲んで焚火で沸騰させた上で冷ましてシェイナに飲ませ、荷車を修理した時に余った材木で作った<杖>を<銛>代わりにして魚を突き、獲った魚を切り身にして焚火で焼いて、まず自分が毒味をしてやはり問題ないことを確認してシェイナに与えた。要人警護仕様のロボットである彼女には、<毒味の機能>も備わっていたのだ。
それら一連の作業は、シェイナにしてみればまさに<魔法>のようだっただろう。
とても人間にはできることではなかったのだから。
「レイラは魔法使いなの?」
完全に<崇拝の眼差し>となった視線を向けつつ問い掛けるシェイナに、
「そうですね。あなたから見れば<魔法使い>のようなものかもしれません」
シェイナの問い掛けに、レイラは察した。
『彼女には、<ロボット>という概念がないのですね』
彼女を乗せた荷車を引きながら、とにかくこの世界の状況把握が必要だと考えたのだった。
さらには、歪な車輪の縁の部分をカットして人間の目には完全な真円に見えるほどに加工。さらにさらに、車軸が短くなった分、車体の幅や寸も詰めてたちまち一回り小さな荷車を作ってしまったのだった。
それだけじゃない。荷台に使われていた材木の表面も僅かに削ぎ落とし真新しい板にしてみせたのだ。
あの、<ただのゴミ>だった粗末な手作りの荷車が、<コーチビルダーの手によるアンティーク風の製品>にも見えるものへと大変身を遂げたのである。しかも、僅か一時間ほどで。
それをレイラは、自身の髪以外の道具をまったく使わず、釘などそれこそ指で摘んでそのまま押し込んで、作ってみせた。
それどころか、幅や寸を詰めたことで余った板を加工して<板バネ>のようにし、素になった荷車にはなかった<サスペンション>まで。
「抱かれた状態での長時間の移動は、シェイナにとっても負担が大きいですからね。これなら少しは楽かもしれません」
「わあ…♡」
自分のために専用の<車>を用意してくれたことに、目を輝かせる。
そんなシェイナを抱え上げ、やはり余った板で荷台にしつらえた椅子に彼女を座らせて、再び街に向かって歩き出した。
しばらく行ったところで川を見付けるとレイラはその水を口に含み、毒味。問題がないのを確認すると、川原に落ちていた流木を裂いてこすり合わせ若干湿っていたことなどものともせず火を熾し焚火にし、同じく川原に落ちていた石を割って内側に石を打ちつけて削って<椀>にして水を汲んで焚火で沸騰させた上で冷ましてシェイナに飲ませ、荷車を修理した時に余った材木で作った<杖>を<銛>代わりにして魚を突き、獲った魚を切り身にして焚火で焼いて、まず自分が毒味をしてやはり問題ないことを確認してシェイナに与えた。要人警護仕様のロボットである彼女には、<毒味の機能>も備わっていたのだ。
それら一連の作業は、シェイナにしてみればまさに<魔法>のようだっただろう。
とても人間にはできることではなかったのだから。
「レイラは魔法使いなの?」
完全に<崇拝の眼差し>となった視線を向けつつ問い掛けるシェイナに、
「そうですね。あなたから見れば<魔法使い>のようなものかもしれません」
シェイナの問い掛けに、レイラは察した。
『彼女には、<ロボット>という概念がないのですね』
彼女を乗せた荷車を引きながら、とにかくこの世界の状況把握が必要だと考えたのだった。
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